最近あちこちでコメントを目にする著者ですが、本書で提唱している「分人主義」はとても興味
深い。分人主義とは、人間を「個人」という「分けられない」一つの単位としてではなく、複数
の人格ー「分人」ーの集合体として捉える考え方だそうで、私たちが普段接する相手によって言
動や行動、態度、感情の動きや思考が異なる=複数の顔を持つこと。生活していく中で複数の分
人を持つことで精神のバランスを保っている、勿論、そのどれもが「本当の自分」だ。とは正し
く目から鱗が落ちる思いだ。
最近では若いうちからお互いにキャラを設定し、そこから逸脱しないように行動したり、言動に
気を付けたりしていると聞く。しかし、私たちは常に複数の異なる性格を持ち、相手によって使
い分けるのは当然のことだろう。もし「ちょっとキャラ違うんじゃない」と言われれば息苦しく
感じる。
今「自由」が、これ程議論に上がる理由の一つは、自己責任論を説く新自由主義的な発想が世に
蔓延しているからだと著者は指摘する。「貧しいのは、努力が足りないからだ」という論理は社
会保障費を貧困層に分配せずに済ませるための理屈だと言う。この自己責任論を強調されるよう
になったのは安倍政権からだと認識している。
情報量があまりにも多すぎて取捨選択することさえ煩わしさを覚える昨今、個人で情報を捉え、
沈思黙考し、ある一定の結論を得ようとするだけで大変な努力がいる。考えなければ情報にただ
流され自身が納得することは難しい。本書のように現状をしっかり捉え、思考し、私たちに伝え
ようとする試みが一冊にまとめられていることは有難い。最先端の科学も登場する内容について
行くのが精いっぱいな部分もあるが、読んでいて大変ためになる本です。
自由のこれから 平野啓一郎 ベスト新書
深い。分人主義とは、人間を「個人」という「分けられない」一つの単位としてではなく、複数
の人格ー「分人」ーの集合体として捉える考え方だそうで、私たちが普段接する相手によって言
動や行動、態度、感情の動きや思考が異なる=複数の顔を持つこと。生活していく中で複数の分
人を持つことで精神のバランスを保っている、勿論、そのどれもが「本当の自分」だ。とは正し
く目から鱗が落ちる思いだ。
最近では若いうちからお互いにキャラを設定し、そこから逸脱しないように行動したり、言動に
気を付けたりしていると聞く。しかし、私たちは常に複数の異なる性格を持ち、相手によって使
い分けるのは当然のことだろう。もし「ちょっとキャラ違うんじゃない」と言われれば息苦しく
感じる。
今「自由」が、これ程議論に上がる理由の一つは、自己責任論を説く新自由主義的な発想が世に
蔓延しているからだと著者は指摘する。「貧しいのは、努力が足りないからだ」という論理は社
会保障費を貧困層に分配せずに済ませるための理屈だと言う。この自己責任論を強調されるよう
になったのは安倍政権からだと認識している。
情報量があまりにも多すぎて取捨選択することさえ煩わしさを覚える昨今、個人で情報を捉え、
沈思黙考し、ある一定の結論を得ようとするだけで大変な努力がいる。考えなければ情報にただ
流され自身が納得することは難しい。本書のように現状をしっかり捉え、思考し、私たちに伝え
ようとする試みが一冊にまとめられていることは有難い。最先端の科学も登場する内容について
行くのが精いっぱいな部分もあるが、読んでいて大変ためになる本です。
自由のこれから 平野啓一郎 ベスト新書