青年海外協力隊の名称は知っていたが、その活動等を知らなかった人は多いと思う。本
書では選考試験から、現地活動、帰国後の進路までOB、OGたちが体験談を余すところ
なく語っている。「はじめに」で本書の編集者が前任者から「それぞれが使命感に燃え
ていることと思うが、大事なことは生きて日本に帰ること」という言葉を受け、その時
にはピンとこなかったが、後から実感するところに簡単な経験ではないと実感した。
それでも本書に登場する参加者たちは強い気持ちで海外に飛び、現地に溶け込み、環境
の違いに戸惑い、自ら行動し、時に泣き、そして大いに笑い、特別な体験をしてきたの
だと知ることが出来る。
特に印象に残ったのは女性たちの腹の座った行動で、国内の訓練でネイティブから言語
を学びながら現場で通用しなかったり、着任しながら全く仕事がなかったり、一緒に仕
事をするはずの上司が居ないという困難に陥りながらも何とか切り抜け、現場に赴き、
人脈を築き、活動の幅を広げていく姿に感動した。
最後にOB、OG座談会で協力隊事業も50年間活動してきてズイブン様変わりしたという
話は本当に興味深かった。以前では、いざ行くとなれば両親に大反対され、何とか説得
を重ねて出発したとか、帰国してから就職口がなく苦労した経験談があるが、今では大
手企業でも協力隊経験者の採用に積極的だということも面白い。
日本はまだ閉鎖的だと思う。私が住んでいる都心からそれ程離れていない地域でさえ、
周囲に沢山住んでいる外国人との交流があまりないのが現実で、私が積極的に話しかけ
ると彼らはとても嬉しそうだ。私も彼らに喜んでもらえれば嬉しいし、もっともっと親
しくなるつもりだ。
青年海外協力隊がつくる日本 清水正[編著] 創成社