日本ではマイナカード問題が噴出しているが、個人情報漏洩問題よりも、使い勝手の悪さや保険証を無くす
問題の方がクローズアップされて、テクニカルなモノは解決可能という政府の説明に納得できずとも強引な
手法に引きずられていきそうだ。マスコミもマイナカード導入の背後に政治家、各省庁、大企業の都合があ
ることを積極的に報道しない。(最近は大手マスコミの国民よりも政府寄りの報道が目立つ)
本書では、世界中で巻き起こるデジタル化の波に警鐘を鳴らしているが、通常の情報に接しているだけでは
分からない事ばかりだ。個人情報は、すでにGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)
がフル活用し、自社に巨額の利益をもたらしている。しかし日本の行政(特に政府中枢で)は危機意識が欠
如しており、何か問題が発生すれば個人が被害を受けるだけだ。
冒頭で英国のSF作家アーサー・C・クラークの「技術(テクノロジー)はある地点から、専門家以外には
魔法と区別がつかなくなる」という言葉を紹介している。すでに現在のデジタル・テクノロジーを私たちは
理解することもなく、完全に取り込まれている。海外でも自国政府を信じることが出来ない国民が多いが、
日本ほど政府の進めることに殆ど声を上げることもなく、巻き込まれていく国も先進国では数少ないだろう。
デジタル化は私たちの生活に密着し、人生設計に大きな影響を与える。スマホやネットの情報だけではなく、
普段接することが少ない情報にもアンテナを張る必要がある。
デジタル・ファシズム 堤未果 NHK出版新書