よしーの世界

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クアトロ・ラガッツィ㊤   若桑みどり

2023-09-20 06:30:18 | 

本書の副題は「天正少年使節と世界帝国」で、タイトルの「クアトロ・ラガッツィ」とは四少年というこ

とです。しかし上巻だけで575ページにも及ぶ長編の第四章に至るまで、少年たちは日本を旅立ってい

ません。上巻の殆どは十六世紀にキリスト教布教に伴い日本にやってきた宣教師ヴァリニャーノを中心と

した日本での彼らの活動記録が主体です。

 

大航海時代の当時世界を相手に強大な権力を握っていたのはスペインでした。彼らは他の大陸で力を背景

にキリスト教の布教を図ろうとします。事実南米でも、東南アジアでも、アフリカでも成功を収めたので

す。そんな中、日本を訪れたイエズス会士ヴァリニャーノは、西洋とは異なる高度な文明を持ち、聡明で、

自尊心の強い日本人に感銘し、違う方法での布教を考えます。彼にはキリスト教を深く学び、感化された

うえで信者にならなければ意味がないという信念があったのです。(日本の大名たちは貿易の利益が目的

でした)

 

戦国時代の日本には仏教が強大な力を持ち、朝廷とも深いつながりを持っていました。そして質素な装い

の宣教師たちとは対照的に、立派な装束に身を包んだ僧侶たちは庶民の尊敬の対象でした。ヴァリニャー

ノは直ぐに日本の慣習を見抜き、宣教師たちに清潔で、清いながらも質の良い服を着て、贈り物も携えて、

有力大名を訪ね布教をするよう指導します。彼らは朝廷に影響力を持つ仏教団体を快く思わない、織田信

長の登場によって日本国内での布教の道が開かれていきます。

 

日本でのキリスト教布教に希望を見出したヴァリニャーノは、資金を調達するために九州の有力大名の血

縁関係にある優秀な子弟を選び、自ら率いてスペインを目指すのです。江戸時代を通して質素な日本のイ

メージを私たちは持ってしまいますが、戦国時代の海外貿易により非常に煌びやかな日本の大名たちは全

く想像とかけ離れています。

 

下巻ではスペインに渡り大歓迎を受け、ローマにたどり着くまであちこちで好奇の目と賛辞を受ける一行

が、日本に戻り体験することが描かれています。読み終えてから、またアップします。

 

   クアトロ・ラガッツィ㊤   若桑みどり             集英社文庫

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