白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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棋譜取り

2017年12月22日 23時19分01秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
本日は棋譜取りについてのお話をしたいと思います。

皆さんは、ご自身の棋譜を取ることはありますか?
全くやらない、という方がかなり多いかと思います。
難しそう、面倒くさそう、というイメージが強いのでしょうか。
ですが、自分の打った碁というのは素晴らしい教材です。
本気で上達を目指すなら、ぜひとも棋譜取りの習慣を付けて頂きたいですね。

それはそうとして、実は今回お話ししたいことは「指導者の棋譜取り」です。
指導においても、棋譜を取ることは様々なメリットがあるのです。

私が意識して指導碁の棋譜を残すようになったのは昨年あたりからです。
五反田の教室など、その場でお客様に棋譜をお渡しする場合はもちろん、そうでないケースでも可能であれば棋譜を取るようにしています。
今年取った棋譜は654局に達します。

と言うと膨大な時間がかかっているように思われるかもしれませんが、そうでもありません。
最近はタブレットPCという便利なものがありますからね。
最後の半コウ争いまで記録するならともかく、ざっと記録するだけなら1局数分程度でしょう。
ただし、多面打ちで指導碁の質を落とさずに記録しようと思ったら、ある程度の棋力と慣れは必要でしょうが・・・。

さて、では棋譜を残したことでどんなメリットがあるか、列挙していきましょう。

〇お客さんに棋譜を渡すことも可能
前述したように、自分で棋譜を取っている方は少数派です。
お客さんの満足感アップにつながるでしょう。

〇局後検討に役立つ
お客さんは当然として、指導者自身が手順を思い出せなくなってしまうことがあります。
もちろん大体は覚えているでしょうが、序盤のちょっとした手を忘れただけでも、後が続かなくなってしまうのです。
特に初心者、初級者の指導でありがちですね。
ですが、棋譜を取っていれば全く問題ありません。

〇お客さんの変化を感じられる
継続して指導している方の場合、自分の指導が相手にどう影響を与えているか、棋譜を比べることで確認できます。
棋譜を取らなくても大体のイメージは残っているかもしれませんが、やはり具体的なものを見た方が間違い無いでしょう。

〇自分の打ち方を客観的に見られる
指導が目的とはいえ、やはり碁を打っている以上は自分の棋力にも何らかの影響を及ぼします。
指導碁を打つにあたって怖いのは、指導のためという免罪符で悪い打ち方をする習慣を付けてしまうことです。
いつの間にか「手が荒れている」ということにならないよう、チェックしておかなければいけません。
しっかりとした打ち方をしていれば、自分の棋力にプラスにすることも可能です。

〇ネタが生まれる
結果的には、私にとって一番プラスになっている要素かもしれません。
講座の題材になったり、問題を思い付いたりすることがよくあります。
棋譜を取っていなければ、著書の出版も無かったでしょう。

〇名前を覚えられる
恥ずかしいのであまり言いたくないのですが、私は人の名前を覚えることが苦手です。
昔からこうだったので、改善は難しそうです・・・。
ところが、その人との対局の棋譜を付ける事によって、格段に覚えやすくなることに気が付きました。
目立ちませんが大きな効能です。


他にも色々とありますが、長くなる一方なのでこのぐらいにしておきましょう。
棋譜取りはあらゆる人におすすめです!