白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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AlphaGo Lee対Zero 第11局

2017年12月25日 23時59分59秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
実は書いているのは翌日の朝ですが・・・。
普段は宵っ張りなのですが、昨日はかなり早い時間に猛烈な睡魔が襲ってきました。
寝不足だったのでしょう、睡眠は大事ですね。

さて、本日はAlphaGo Lee対Zero、第11局です。
第10局までは全てLeeの黒番でしたが、本局から手番が変わっています。



1図(テーマ図)
Zeroが黒△と覗いた場面に注目しました。
白Aと空き三角の愚形につながせようというもので、そうなれば利かし(黒の打ち得)となります。
白としては反発を考えたいところですが・・・。





2図(変化図1)
黒がA方面に打ち込みにくくなるように受けることが考えられます。
そこで、普通の棋士なら白1が最初に浮かぶ手ではないでしょうか?
何故かと言えば・・・。





3図(変化図2)
後に黒1と切った時、白2を利かせば先手でAの傷を守れるからです(黒Aには白B、黒C、白Dで大丈夫)。
白4などと、先に黒に攻めかかることができます。





4図(実戦)
ところが、Leeは白1と離して受けました。
私は指導の際、よく布石の1路の差は気にしなくても良いと言っています。
ですが、石がぶつかった場面では話が別で、1路の違いで状況が大きく変わることがあります。

この白1は、地味ながら私にとっては驚きの一手でした。
何故なら、黒Aと切られた時、次に黒Bの分断が厳しいので白は左辺を1手かけて受けなければいけません。
すると、黒Cなどと打って先制攻撃するのは黒の側となります。
左下方面に関しては、明らかにマイナスの手なのです。

ではなぜ白1と打ったかと言えば、白△との間合いなどを意識したと考えられます。
そちらの方面でのプラス面を重視したということですね。
しかし、左下でのマイナスは目に見えますが、左上方面でどれだけプラスになるのかは人間にははっきりとは見えません。
李世ドル九段と対局したバージョンは、総合力においては人間トップとそれほど大きな差は無いのかもしれませんが、やはり感覚的にはかなり違っているように思えます。