ピアニストはなぜ両手をバラバラに動かせるのか?「両手でピアノを弾くコツ」を徹底解説
【榎政則の音楽のドアをノックしよう♪】 福井新聞 より 230108
ピアニストの演奏を見ていると、両手がそれぞれ意識を持って動いているかのように見えますよね。頭は一つしかないはずなのに、両手がバラバラに動くのはなぜなのでしょうか。右脳と左脳でそれぞれ考えているのでしょうか。実際にピアニストがどんなことを考えてピアノを弾いているかを紹介するとともに、これからピアノを始める方にとってのヒントにもなればと思っています。
🎹日常の中で両手を使う場面
ピアノは両手の10本の指をフル活用して演奏します。こんな動きはなかなか日常生活の中では行われないように思うかもしれません。しかし、よく考えてみると日常の動作で両手を使う動きはたくさんあります。これを観察するところから始めてみましょう。
たとえば、料理をするときに包丁で野菜を切るという動きは両手を使います。利き手で包丁を握り、反対側の手で野菜を固定させて、利き手だけを動かすように切っていますね。そしてその後は野菜をまた切りやすい位置に固定します。これを素早く行うことになります。
⇒ピアノを鳴らすのは、控えめに言ってもブラボー
他には紐を結ぶところを想像してみてください。蝶々結びをするときは、両手を複雑に動かしていますが、基本的には「片手で固定して、もう片方の手で結び目を作る」という手順と、「両手で反対方向に引っ張る」という二つの手順から成り立っています。
そして、受け渡しという動作があります。右手に持ったものを左手に渡す、という動作ですね。
「片手で固定して、もう片方の手で操作する」「同時に同じ事をする」「片方の手からもう片方の手へ受け渡す」という三つが、日常で両手を使う動作のほとんどなのではないかと思います。そして、この動作はそれぞれ両手を使っていますが、同時に二つのことを考えているという意識はしていませんよね。
ピアノも同じで、二つのことを同時に考えようとするのではなく、上記三つの動作を組み合わせて両手を動かしていきます。
🎹ピアニストはなぜ両手をバラバラに動かせるのか?
左手は支えで、右手に集中する
私はピアノ初心者に弾き方を教えるとき、左手から練習するように言うことが多いです。ピアノの基本は左手が伴奏、右手が旋律となります。言い換えると、左手で支えて、右手に細かい動きをする、という形です。
このときに、左手の支えがしっかりしていないと、右手が崩れやすくなってしまいます。伴奏は規則的であることが多く、強く意識しなくても弾けるようになってくると、右手に集中して自由に旋律を弾くことができるようになります。
「左手は支えで、右手に集中する」というのが、ピアノ奏法の基本です。
🎹同時に弾く音を確認する
右手と左手を別々に弾くのは難しいですが,あるタイミングで同時に弾くことがあります。そのときに,どの音とどの音が同時に鳴るのか、という意識をしておくことが大切です。
🎹同時に弾く音を確認する
右手と左手を別々に弾くのは難しいですが,あるタイミングで同時に弾くことがあります。そのときに,どの音とどの音が同時に鳴るのか、という意識をしておくことが大切です。
初心者のうちは右手のほうが左手よりも音が多いはずですので、右手のどの音と左手が揃うのか、と考えておくと、演奏が楽になります。
🎹右手から左手、左手から右手へと受け渡す
右手と左手が異なるリズムを弾くのはとても大変ですが、このようなときは、右手のこの音を弾いたら左手のこの音を弾く、というように、右手と左手の動きを一連の流れと捉えます。そうすることで、同時に二つの事を考えなくても両手で弾けるようになります。
三つの考え方を紹介してきましたが、実際に両手がバラバラに動くような難しい曲を弾いているとき、ピアニストはもっと他のことを考えています。会場の空気感や楽器の響き方に耳を集中させて、どのような弾き方をすれば最も美しい音が出るか、を考えながら微調整をしています。
🎹右手から左手、左手から右手へと受け渡す
右手と左手が異なるリズムを弾くのはとても大変ですが、このようなときは、右手のこの音を弾いたら左手のこの音を弾く、というように、右手と左手の動きを一連の流れと捉えます。そうすることで、同時に二つの事を考えなくても両手で弾けるようになります。
三つの考え方を紹介してきましたが、実際に両手がバラバラに動くような難しい曲を弾いているとき、ピアニストはもっと他のことを考えています。会場の空気感や楽器の響き方に耳を集中させて、どのような弾き方をすれば最も美しい音が出るか、を考えながら微調整をしています。
また、お客さんの息遣いや自分の気持ちの高ぶりを感じ取って、大胆な表現だったり遊び心のあるユーモアを演奏に取り入れてみることを考えています。どの鍵盤をどのタイミングで弾くか、ということは練習の段階ですでに身体に入っており、指は考えなくても勝手に動いてしまうのですね。
これは車の運転に近いかもしれません。慣れないうちは、どのようにアクセルを踏むか、どのようなハンドル操作をするか、というように考えることが多く操作だけで手一杯ですが、慣れてくれば交通状況や標識を確認し、どのような運転が安全でスムーズか、ということを考えるようになります。ハンドルの握り方や、足の動かし方は身体に入っているため、考える必要は無くなります。
ピアノは上達すればするほど、視野が広くなり、表現の幅が広がってきます。新たな表現方法を見つけて実践するときの楽しさを知るたびに、ピアノって本当に面白い楽器だな!と思います。
そして、その上達の第一歩、両手でピアノを弾くということが出来た時も、ピアノが自分の表現に応えてくれた、という感動を覚えることでしょう。
これは車の運転に近いかもしれません。慣れないうちは、どのようにアクセルを踏むか、どのようなハンドル操作をするか、というように考えることが多く操作だけで手一杯ですが、慣れてくれば交通状況や標識を確認し、どのような運転が安全でスムーズか、ということを考えるようになります。ハンドルの握り方や、足の動かし方は身体に入っているため、考える必要は無くなります。
ピアノは上達すればするほど、視野が広くなり、表現の幅が広がってきます。新たな表現方法を見つけて実践するときの楽しさを知るたびに、ピアノって本当に面白い楽器だな!と思います。
そして、その上達の第一歩、両手でピアノを弾くということが出来た時も、ピアノが自分の表現に応えてくれた、という感動を覚えることでしょう。
両手でピアノを弾くということはピアノ練習の最初の壁になると思いますが、始めに紹介した三つの考え方を使って、ぜひ挑戦してみてください。(作曲家、即興演奏家・榎政則)
⇒Zoomでピアノレッスン、D刊・JURACA会員は無料
榎政則(えのき・まさのり)作曲家、即興演奏家。
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榎政則(えのき・まさのり)作曲家、即興演奏家。
麻布高校を卒業後、東京藝大作曲科を経てフランスに留学。パリ国立高等音楽院音楽書法科修士課程を卒業後、鍵盤即興科修士課程を首席で卒業。2016年よりパリの主要文化施設であるシネマテーク・フランセーズなどで無声映画の伴奏員を務める。現在は日本でフォニム・ミュージックのピアノ講座の講師を務めるほか、作曲家・即興演奏家として幅広く活動。