日本の解き方 日本の人口減は大問題なのか? マクロ経済への影響は限定的…「年金破綻論」もかなり怪しい
ZakZak より 211208
2020年国勢調査の確定値で、外国人を含む総人口が同年10月1日時点で1億2614万6000人となった。15年の前回調査から約94万9000人減少し、生産年齢人口(15~64歳)は3%減の7508万8000人、65歳以上人口は7%増の3602万7000人と少子高齢化の傾向が鮮明になっている。
こうした状況が先日の本コラムで書いた外国人労働者の拡大方針にもつながっていると思われる。さらには人口減少によって労働人口が減るから、経済が悪くなり、社会保障制度が破綻するというネガティブな未来予想もまかり通っているが、本当だろうか。
まず人口が経済に与える影響を考えてみよう。これまでの人類の歴史では、人口減少より人口増加のほうが大問題だった。有名なものは、マルサスの人口論である。これは1972年のローマクラブの「成長の限界」のベースにもなっている。
最近の経済成長理論でも、人口増加は1人当たりの資本を減少させるので、貧困の原因とされる。その一方、人口減少には資本増強などまだ対応策がある。
ちなみに、世界216国・地域の2000~19年の平均人口増加率を横軸、1人当たりの平均実質国内総生産(GDP)成長率を縦軸とすると、右下がりのグラフになる。人口減少している国・地域は日本を含め23あり、1人当たり実質GDP成長率は3・4%だ。これに対し、人口増加国・地域は2・0%だ。
このデータは、人口増加率が高いほど、貧しくなる傾向があることを示している。ただ、先進国では人口増加は1人当たり実質GDP成長率と無相関になる。いずれにしても、人口増加で経済が良くなるというデータはあまりない。
もちろん、GDPは人口に1人当たりGDP(給与に相当)を乗じたものであるので、1人当たりGDPが変化なしといっても、人口が減ればGDP自体は減少する。だが、当面最大0・7%程度であり、技術進歩などで対処可能な範囲だ。
人口減少がデフレや1人当たりGDP以外にも社会経済に悪影響を与える可能性は否定できない。しかし、人口減少は急にやってくるわけではなく、事前にかなり予測できる分野である。ちなみに、過去1980年代、90年代の人口推計は当たらなかったが、2000年以降の推計はかなり当たっている。
筆者が、人口減少を大きな問題ではないというのは、マクロ経済への影響が大したことがないのに加えて、人口減少を正しく予測できていれば大きな問題にならないからだ。
年金制度など予測可能な問題なら事前に対処できる。この点から見れば、年金破綻論はかなり怪しいと言わざるを得ない。
仮に人口減少に問題があるというなら、社会の治安を脅かす恐れがある外国人の労働受け入れより、機械化や人工知能(AI)活用によって、1人当たりの資本増加策を優先すべきだ。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)