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熊本地震、北海道地震、能登半島地震・・・なぜ発生確率の低い地域ばかりで大地震が起こるのか? 202410

2024-10-13 01:40:00 | 気になる モノ・コト

熊本地震、北海道地震、能登半島地震・・・なぜ発生確率の低い地域ばかりで大地震が起こるのか? 【科学ジャーナリスト賞・菊池寛賞・新潮ドキュメント賞 トリプル受賞で注目の新聞記者が語る】
 よみタイ より 241013


 熊本地震、北海道地震、能登半島地震・・・なぜ発生確率の低い地域ばかりで大地震が起こるのか? 【科学ジャーナリスト賞・菊池寛賞・新潮ドキュメント賞 トリプル受賞で注目の新聞記者が語る】
「30年以内に70〜80%」とされる南海トラフ地震の地震発生確率が、実は20%かもしれない ――。そんな衝撃の事実を明らかにした『南海トラフ地震の真実』。
 本書は、科学ジャーナリスト賞、菊池寛賞、新潮ドキュメント賞のトリプル受賞で瞬く間に話題の書となった。執念の調査報道でその事実を突き止めた東京新聞の小沢慧一記者に話を聞いた。


⚫︎「南海トラフ地震臨時情報」の科学的根拠は薄弱
――2024年8月8日、宮崎県の日向灘で最大震度6弱の地震が起き、その日のうちに気象庁は「南海トラフ地震臨時情報」を出しました。2019年の運用開始から初めてのことでしたが、この臨時情報の問題点について、すでに『南海トラフ地震の真実』でも書かれていましたね。
 はい。臨時情報については、以前より地震学者らから科学的に疑義が呈されていました。名古屋大学の鷺谷威教授(地殻変動学)によれば、臨時情報の根拠となっている統計自体に問題があると。「内閣府が検討のために寄せ集めたデータで、学術的意義はほぼない」と言っています。もともと私も疑問視していたので、8月8日に臨時情報が発令されたときから、その問題点を指摘する記事を準備していました。

 しかし、もし本当に巨大地震が起きたらどうするのか。多くの人々に油断を与えることになるかもしれないと、東京新聞の社内でも掲載するかどうか議論になりました。
 そのため、発令から1週間後の呼びかけが終了したタイミングで記事を出しました(東京新聞8月15日付「南海トラフ臨時情報の疑わしさ…地震学者が語る「科学的にあまり意味はない」とデータごちゃまぜの内実」)。

小沢慧一氏
――特に問題だと思われる点は?
 科学的根拠がほとんどないにも関わらず、政府は危機感を煽る情報を出しただけで、その対策やコストを自治体や企業、個人に丸投げしたことです。だから過剰な対応が生まれた。夏休みシーズンということもあり、ビーチを閉鎖した和歌山県の白浜町では5億円の損害となり、JRでも一部運休や減速運転をしました。ホテルや旅館もキャンセルが相次ぎ、花火大会も中止に。さらに水や米の買い占めも起きた。
 この件で政府は被害総額を調査しないと言っていますが、野村総研によれば、旅行関連支出への影響は約2000億円に及ぶと試算しています。(※)

 ただし、科学的には問題があったとしても、地震に備えることは必要です。だからこれは、あくまで防災の問題として捉えるべきで、科学的な正当性があって出されたものではないと認識することが重要です。

 加えて言えば、臨時情報が発令された1週間という期間も、科学的に安全性が確保されたから終了したわけではありません。これは、制度をつくった当時、社会的に許容できる期間を住民にアンケートしたところ、1週間という結果が出たのでそうなっただけです。いわば政策的な判断です。1週間が過ぎても注意しなくていいというわけではありません。

⚫︎科学と防災を混同してはいけない
 なぜ科学と防災を切り分けて考えることが大事なのか。それは低い確率だったとしても、一たび巨大地震が起きれば、命に関わるからです。科学的にはあまり起こらないだろうと言われていても、防災の観点からは対策が必須です。低確率地域のほうが、高確率地域よりも先に地震が起きるかもしれない。
 野球で言えば、選手の打率だけ見ても、高打率のバッターと低打率のバッターで、ある試合でどちらが先にヒットを打つかわからないのと同じです。事実、能登半島地震の震源地となった石川県は大部分が地震発生確率0.1~3%でした。

 他にも問題はあります。臨時情報で「空振り」が続けば、次第に信用されなくなるでしょう。あるいは、大きな地震が起きるときには、臨時情報のように何らかの事前情報が出されるはず、という誤解が生まれる可能性がある。
 逆に言えば、警戒する情報がなければ、準備しないという行動につながってしまう。

 こうした情報が出されれば、その時は一時的に防災意識が高まるかもしれませんが、大地震の前に予兆となる地震が起きないことのほうが圧倒的に多いのです。
 つまりほとんどの地震は突然起こる。臨時情報がなくても、いつ地震が起きてもいいように備えておくことが必要なのです。

 これと似たような状況として、地震発生確率が高い地域では、普段から警戒していることもあり、防災意識が高くなりやすいかもしれませんが、低確率地域では油断が生まれやすいということがあります。
 図1は政府の特別機関である地震調査研究推進本部が出した「全国地震動予測地図」の上に、1979年以降10人以上の死者を出した地震の震源地を落とし込んだものですが、熊本地震、北海道地震、能登半島地震など、確率が低い地域ばかりで大地震が起きていることがわかります。


図1 「全国地震動予測図」に1979年以降10人以上の死者を出した地震の震源地を落とし込んだ図(小沢氏提供)。

 地震保険の加入率を調べると、愛知県、徳島県、高知県など南海トラフ地域で高い加入率となっていますが、能登半島地震の震源地となった石川県の加入率は全国平均以下でした。
 また、低確率地域の自治体は、そのことを理由に安全性をアピールし、企業誘致活動を行っていました。発生確率を公表することで、低確率地域にとっては、それが「安心情報」になっているのです。

⚫︎「30年確率」は無理がある
――なぜこれほどまで予測が外れるのでしょう。
 それは、数十年から数百年ごとに起きるとされる海溝型地震と、数千年、数万年単位で起きる内陸の活断層型地震を30年という短い期間に当てはめて予測しているからです。

 数千年スパンで起こる地震を、30年というものすごく短い期間に圧縮して確率を出すことに無理がある。ではなぜ30年なのか。これも科学ではなく、防災の観点から決まったことです。
 どういうことかというと、30年というのは、人が人生設計をするときにちょうどいい長さだからです。地震学的な意味はありません。住宅ローンも約30年、一世代も約30年。防災に携わる人たちからの強い要請で、30年くらいにしておかないと危機意識を持ちにくいということで決まったのです。

――ここでも科学と防災の対立構造がありますね。
 そうです。南海トラフ地震だけ、他の地域では用いられていない予測モデルによって確率が導き出されています。南海トラフでも他の地域と同様のモデルで計算すれば――多くの地震学者が現在の科学ではそれが一番妥当だと考えているのですが――70~80%ではなく、20%まで下がってしまうのです。

 ではなぜ20%よりも70~80%という数字が出回っているのか。それは科学よりも防災が優先されたからです。
 確率を低くすると防災意識が低下する、さらには莫大な防災予算が削られるなどの懸念が、防災関係者の間に強くにありました。

⚫︎誰も「一次情報」に当たっていない
 南海トラフだけに適用されている予測モデルは、「時間予測モデル」と呼ばれるもので、これは1980年に島崎邦彦東京大学名誉教授(当時は助手)が論文で発表したものです。確かにこのモデルを適用すると、過去に起きた地震の発生時期をうまく説明することができた。
 しかし、この「時間予測モデル」は高知県の室津港の水深データなどを根拠につくられているのですが、室津港の水深データは1930年に旧東京帝国大学の今村明恒教授が発表した論文に掲載されたものを引用していて、その出典をさかのぼってみると、江戸時代に書かれた古文書に行き当たります。

 さらに取材を進めると、その古文書のデータは、また別の人物が記した「手鏡」と題された史料を引き写したもので、この手鏡に書かれたデータも、また別の文書の写しであることがわかりました。ただ、その元となった文書までは見つけることができませんでした。このあたりのことは、『南海トラフ地震の真実』に詳しく書いています。
 つまり、島崎教授が「時間予測モデル」の根拠としたデータには、原典(今村論文)の原典(江戸時代の古文書)の原典(手鏡)のさらにまた原典が存在し、大元の原典までは誰もたどれていないのです。
 転記に次ぐ転記で、写し間違いも散見され、これでは信頼に足るデータとは言えません。それに江戸時代のことですから、測量の精度にも限界があったことでしょう。これに加えて、海外でも「時間予測モデル」に否定的な論文が複数出されています。

 このように、非常にあやふやなデータをもとに「時間予測モデル」がつくられており、それが南海トラフ地震の地震発生確率70~80%の根拠となっているのです。

⚫︎確率信仰の罠
 問題は、やみくもな確率信仰にあると考えています。防災関係者は、高確率(70〜80%)でなくなると、国民の防災意識が低下したり、予算が削られると考え、低確率(20%)の公表を渋りました。

 図2を見てください。日本の面積は世界の面積の0.25%しかないにもかかわらず、世界で起きたM6以上の地震の20%は日本の周辺で起きています。マークされた部分を見ると日本は覆いつくされていますよね。
 だから日本地図だけを見て、その中で発生確率が高い、低いと論じることは、テストの点数が10点なのか20点なのかを争うようなものです。いずれも赤点です。意味がないどころか害ですらあります。日本のどこにいても大地震に遭う可能性があると思って行動したほうがいい。


 図2 世界で起きたM6以上の地震の震源地(出典/防災白書)

 現在の科学で30年発生確率を出すことは限界があり、社会的にも弊害が大きいと考える地震学者は多く存在します。確率を出すとしても、それはどのような科学的根拠に基づいて計算されたものなのか、前提となる仮説に誤りはないのかなど、政府や専門家の発表を鵜吞みにせず、きちんと検証することが欠かせないと考えています。

――「時間予測モデル」を南海トラフ地震の発生確率の算出根拠にすることは、以前から多くの地震学者が異議を唱えていたそうですね。
 はい。たとえば、先ほどご紹介した鷺谷教授は、さまざまなメディアの記者にたびたび訴えていたそうです。しかし報道されることはなかった。
 報道することにリスクがあると考えたからでしょう。東京・中日新聞でも、この事実を報道することについて、かなり議論が紛糾しました。確率が低かったとしても、もしも地震が起きれば、甚大な被害が想定されることから、この報道によって命を落とす人がいるのではないか、かえって悪影響を与えるのではないか、と。

 しかし、これまで報道されなかったことで実際に起きたことは、能登半島地震でもわかるように、低確率地域での深刻な被害です。南海トラフ地震の危険性だけをことさら大きく取り上げることで、他の地域に油断が生まれた。
 私が言いたいのは、南海トラフ地震が過大評価されているということではなく、それ以外の地域もきちんと対策をしないといけないということです。

――受賞された新潮ドキュメント賞の選評では、「地震の発生確率が、これほどまでに危ういデータに基づいていたことを告発する内容は圧倒的」(池上彰氏)、菊池寛賞の選評では、「一人でひたすら問題を追いかけた。専門家という言葉、政府の発表に、私たちが惑わされやすいことに大いなる警鐘を鳴らしている」(阿川佐和子氏)など、丹念な調査報道が評価されました。

 そのようにおっしゃって頂けるのはありがたいことですが、本来これは記者として基本的な仕事だと思います。むしろそうした当たり前のことが報道できなくなっているメディアの現状に危機感を覚えます。

 それに、これは私一人で真実を突き止めたというわけではなく、多くの地震学者が問題だと訴えてきたことです。私は追加で取材や調査をしたにせよ、その声を拾い上げたに過ぎません。今回の一連の報道で、たくさんの読者の方々から応援のメッセージを頂きました。
 やっぱり皆さんこうした報道を求めてくださっているんだなと嬉しくなりましたね。報道には自由度が必要で、その意味で東京新聞は、いろいろ議論しながらも自由に書かせてくれる風土があります。

⚫︎大規模災害に対応するには
――地震発生確率を公表することの問題点については『南海トラフ地震の真実』によって広まりつつあると思いますが、今後取り組みたいテーマはありますか?

 今後は防災の観点からの取材も強化したいと考えています。海外では、アメリカの連邦緊急事態管理局(FEMA)、イタリアの市民保護局など、防災を専門とした省庁があります。
 日本には、各省庁に防災を担う部署がありますが、縦割り行政の弊害があり連携が不十分です。国土交通省が担っている部分が大きいですが、取りまとめているのは内閣府です。
 しかし内閣府は南海トラフ地震関連の予算が国全体でどれだけあるのか、きちんと把握できていません。部署が細かく分かれているために、政策としても筋が通っていません。
 果たして、これで南海トラフ地震や首都直下地震に対応できるのか疑問です。防災担当を一元化した「防災省」の必要性を長年訴えている関西大学の河田恵昭特任教授(防災・減災学)も「今のままでは大規模災害には絶対対応できない」と言っています。

 9月の自民党総裁選で石破茂氏が選ばれましたが、9人も立候補した中で、唯一、「防災省」の創設を掲げていたのが石破さんでした。各省庁にまたがる防災関連の部署を一つに束ねるには強力なリーダーシップが必要です。
 静岡県で40年近く防災担当を務めた静岡大学の岩田孝仁特任教授は「総理クラスのパワーを持った人がトップダウンで改革しないと(防災省の)実現は難しい」と言います。

 防災は「命を守るため」という大義名分があるため、政策を批判しにくい側面があります。しかし、国民の命や生活に影響するからこそ、防災行政が一人歩きしないよう、メディアとしてしっかり監視していく必要があると思います。
 一筋縄ではいかないでしょうが、これからもこの動きを注視しつつ、私たちが知るべき情報を発信していきたいと思います。

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