日本人女性は地位が低いのに、なぜ世界一長生きなのか? 海外の研究者から見ても疑問
AERAdot より 231112 酒井理恵
日本は長寿大国として知られ、特に女性の平均寿命は世界1位をキープしている。
しかし、研究者によると「これほど女性の地位が低い国が長寿であることは世界の研究結果とは合わない」という。
なぜ、日本人女性は長生きなのか。そして、寿命に男女差が生じる理由とは。
* * *
WHO(世界保健機関)が発表した2023年版の世界保健統計によると、日本人の平均寿命は世界トップの84.3歳。
* * *
WHO(世界保健機関)が発表した2023年版の世界保健統計によると、日本人の平均寿命は世界トップの84.3歳。
男女別にみると,男性平均寿命は世界第2位の81.5歳,女性は世界第1位の86.9歳だった。
女性が男性と比べて長生きであることは、特に裕福な国にとっては世界的な傾向だ。
女性が男性と比べて長生きであることは、特に裕福な国にとっては世界的な傾向だ。
その理由として、ホルモンの影響をはじめとする生物学的な性差が指摘されることが多い。しかし、「それだけでは全てを説明できない」と大阪医科薬科大学の本庄かおり教授は語る。
なぜなら貧困国では男女の平均寿命が近づくことがわかっているからだ。出生率が高い一方、医療へのアクセスが不十分であることから妊産婦死亡率が高い。「男女の格差が大きいことから限られた資源は男性優位に振り分けられ、女性は多くの健康リスクにさらされる」と本庄教授は語る。
(大阪医科薬科大学の本庄かおり教授)
職業や所得、教育、政策、文化などの社会的・経済的な要因は、人々の健康に深く関連すると言われる。
なぜなら貧困国では男女の平均寿命が近づくことがわかっているからだ。出生率が高い一方、医療へのアクセスが不十分であることから妊産婦死亡率が高い。「男女の格差が大きいことから限られた資源は男性優位に振り分けられ、女性は多くの健康リスクにさらされる」と本庄教授は語る。
(大阪医科薬科大学の本庄かおり教授)
職業や所得、教育、政策、文化などの社会的・経済的な要因は、人々の健康に深く関連すると言われる。
WHOによれば、社会的地位・経済的水準の低い人ほど寿命が短く、病気の罹患率や死亡率が高い傾向にある。資産が少なく貧しい住環境に暮らし、教育程度の低さから不安定な仕事に就労せざるを得ないなど、社会的・経済的ストレスが多い状況下の生活が影響すると考えられる。
「社会と健康に関する数々の研究結果をもとに考えれば、社会的地位が決して高いとは言えない日本人女性が世界で最も長寿であることに矛盾があります。海外の研究者から見てもこの点は疑問で、いまだ解き明かされてはいません」(本庄教授)
男女格差を示す指標である日本のジェンダーギャップ指数(2023年)は,146カ国中125位。過去最低の結果であり,先進国では最下位だ。また、日本の男女間賃金差は世界各国に比べて大きい。背景には「男は働き,女は家庭」という根強い性別役割分業意識があることが指摘されている。
ジェンダーギャップ指数が同程度の国々を比較すると,日本人女性の平均寿命は突出して高い。ジェンダーギャップ指数は146、平均寿命は183の国と地域を対象としている
▶︎出典:WHO「World Health Statistics 2023」世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2023」
「社会と健康に関する数々の研究結果をもとに考えれば、社会的地位が決して高いとは言えない日本人女性が世界で最も長寿であることに矛盾があります。海外の研究者から見てもこの点は疑問で、いまだ解き明かされてはいません」(本庄教授)
男女格差を示す指標である日本のジェンダーギャップ指数(2023年)は,146カ国中125位。過去最低の結果であり,先進国では最下位だ。また、日本の男女間賃金差は世界各国に比べて大きい。背景には「男は働き,女は家庭」という根強い性別役割分業意識があることが指摘されている。
ジェンダーギャップ指数が同程度の国々を比較すると,日本人女性の平均寿命は突出して高い。ジェンダーギャップ指数は146、平均寿命は183の国と地域を対象としている
▶︎出典:WHO「World Health Statistics 2023」世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2023」
■「パートナーに先立たれて元気がなくなる」のは男性だけ?
本庄教授によると、日本人女性が長寿であると考えられる理由には、比較的教育水準が高く、健康行動が良く、肥満者の割合が極めて小さいことなどが挙げられる。特に男女差がみられる健康行動が喫煙と飲酒だ。
「日本は他国に比べて女性の喫煙率が比較的低く、男性の3分の1程度です。また、健康に害を及ぼすほどの飲酒をする人の割合も男性と比較して低い傾向がみられます」
また、高齢者のメンタルヘルスにも男女差が生じやすい特徴がある。
女性は若いときから友人や地域住民、子どもの親同士など多様な人間関係を形成する機会が多く、人との社会的つながりを持つことが比較的得意だ。
一方、男性は職場での時間が長いため地域参加の機会に恵まれず、地域の人との交流を難しく感じる人が多い傾向にある。そのため定年退職後の人間関係は妻だけになってしまい、妻に先立たれた夫は孤独・孤立に陥りやすい。
本庄教授によると、これは日本独自の傾向かもしれないという。
「海外の研究では、配偶者を失うことは男女ともに健康へのリスクとなります。しかし、日本では男女に顕著な違いがみられることがよくあります。たとえば、高齢者の一人暮らしは健康に良くないと言われていますが、その影響がみられるのは男性に限られるようです」
独居高齢者と家族と暮らす高齢者の幸福度を比較すると、独居になって男性は幸福度が下がるのに比べて女性は上がる傾向にあることが2021年の中央大学の研究でわかった。
本庄教授によると、これは日本独自の傾向かもしれないという。
「海外の研究では、配偶者を失うことは男女ともに健康へのリスクとなります。しかし、日本では男女に顕著な違いがみられることがよくあります。たとえば、高齢者の一人暮らしは健康に良くないと言われていますが、その影響がみられるのは男性に限られるようです」
独居高齢者と家族と暮らす高齢者の幸福度を比較すると、独居になって男性は幸福度が下がるのに比べて女性は上がる傾向にあることが2021年の中央大学の研究でわかった。
背景には、新たな人間関係の形成能力に加えて、家事負担からの解放があると推察される。
「これまでの研究によると、高齢男性の一人暮らしは精神健康を悪くする要因の一つである可能性がみられますが、女性ではその影響はみられません。
「これまでの研究によると、高齢男性の一人暮らしは精神健康を悪くする要因の一つである可能性がみられますが、女性ではその影響はみられません。
また、夫と死別した高齢者の死亡リスクは、死別しなかった人より低いという研究結果もみられます。海外の研究者からみると本当に不思議みたいですね」
■ “病院嫌い”が寿命に影響する?
WHOは2019年のリポートで、裕福な国で女性が男性よりも平均寿命が長い理由を「衛生・保健に対する観念が男女で違う」「同じ病気に罹患したとき、男性は女性より医師の診察を受けて薬を服用する割合が低い」などと指摘している。
本庄教授はこの点について「男性は性別役割分業規範の影響もあって仕事中心の生活を送る人が多く、どうしても時間的に職場に長く拘束されてしまい、病院に行くのを後回しにしてしまう傾向があるのではないかと考えられます」と話す。
一方、女性は育児や介護など人をケアする役割を求められてきた。「だからこそ自分自身の体調に注意を払い、不調に対応し、困ったら誰かに相談するという習慣を持つ人が男性に比べて多いのかもしれません」と本庄教授は言う。
以上、
・生物学的性差(ホルモンの影響など)
・教育歴が高い
・健康行動が良い
・肥満が少ない
■ “病院嫌い”が寿命に影響する?
WHOは2019年のリポートで、裕福な国で女性が男性よりも平均寿命が長い理由を「衛生・保健に対する観念が男女で違う」「同じ病気に罹患したとき、男性は女性より医師の診察を受けて薬を服用する割合が低い」などと指摘している。
本庄教授はこの点について「男性は性別役割分業規範の影響もあって仕事中心の生活を送る人が多く、どうしても時間的に職場に長く拘束されてしまい、病院に行くのを後回しにしてしまう傾向があるのではないかと考えられます」と話す。
一方、女性は育児や介護など人をケアする役割を求められてきた。「だからこそ自分自身の体調に注意を払い、不調に対応し、困ったら誰かに相談するという習慣を持つ人が男性に比べて多いのかもしれません」と本庄教授は言う。
以上、
・生物学的性差(ホルモンの影響など)
・教育歴が高い
・健康行動が良い
・肥満が少ない
⚫︎求められる性別役割分業規範の差
これらを踏まえても、日本人女性が世界一の長寿である理由や、男女で平均寿命に差がある理由を説明するには十分ではないようだ。
生活習慣や人間関係だけではなく、これまでの成育環境や所得、職業、社会関係など、さまざまな要因が健康格差を生んでいる。コロナ禍を経てかつてないほど人々の健康志向が高まる今、その背景に目を向けてみると新たな発見がありそうだ。
(文/酒井理恵)
💋衰え老いた夫を、しっかりした老妻が、看る光景をよく見かける!定年後の衰え男,かくしゃくと看る女! 寿命の差歴然!