流体力学の講義8回目,概要は以下のとおり.
偉人 レイノルズ
層流 1 pp.120 - 128
粘性
粘性応力
粘性係数
ニュートン流体,非ニュートン流体
動粘性係数 粘性流体の壁面流速
レイノルズ数
レイノルズ数による流れの変化
偉人 レイノルズ
オズボーン・レイノルズ (Osborne Reynolds 1842~1912 )
イギリスの物理学者・技術者.
1967年にケンブリッジ大学卒業.(数学専攻)
1868年, 26歳でマンチェスター大オーエンカレッジの工学部教授に就任.
(英国で2人目の”Professor of Enginnerig" )
流体力学に関連する業績:
層流から乱流への遷移の研究
レイノルズ数(慣性力と粘性との比で定義される無次元数)の発見 1883年
レイノルズ応力
レイノルズの相似則
キャビテーションの研究
潤滑の研究
その他の業績:
蒸発器や凝縮器の伝熱の問題の研究
タービンポンプの開発
熱量拡散計の発明
1988年,英国王立協会(the Royal Society)のRoyal Medal受賞.
参考文献
http://en.wikipedia.org/wiki/Osborne_Reynolds
http://158.110.32.35/download/CERN07/R_ARFM_90.pdf
http://misclab.umeoce.maine.edu/boss/classes/SMS_491_2003/Week_5.htm
http://oceanworld.tamu.edu/resources/ocng_textbook/chapter08/chapter08_02.htm
[層流 1]
教科書のpp.120 - 128部分について,教科書にそって,説明した.
粘性 (viscosity)
流体において,速度の差が発生したところで,流れ方向に
対して損失となる力を発生させる性質.
※最も典型的な速度の差がある流れとして,逆方向の速度を持つ
流れが接している場合を想定してみよう.
→→→→→→→→→→
←←←←←←←←←←
流体を構成する物質の,「分子間力」が,粘性のおおもとの力である.
さらに,分子同士の衝突による力もある.
※込み合った横断歩道の人の流れを斜めに人の流れよりも早く横切ろうとしたときを想定してみよう.
「粘性」の特徴は,空気や水のような比較的粘性の低い物質だけを観察していると,直感的に理解しずらい.
直感的には,サラダ油や,機械オイルの「べたつき」が,まさに「粘性」である.
流体を構成している物質の分子の大きさも粘性に影響を与える.
※分子の大きな物質の方が粘性が高い場合が多い.
粘性応力
流体運動において粘性は,物体の運動おける摩擦力と同様に,流体の運動を妨げる力を生じさせる.その,粘性によって流体の運動エネルギーの一部は熱となって失われる.
粘性によって生じる応力を,粘性応力(viscous stress) という.
流体の粘性応力は,速度勾配に比例する.
※ 速度勾配とは,場所による,速度の変化の傾きである.
粘性係数
粘性のある流体の液面上に平板をおいて,平板をx方向に動かすと平板の動きと粘性に応じて,流体はx方向に速度をもつ.また,速度はy方向に勾配を持つ.
このとき,x方向の速度 u,粘性応力 τ, とすると,
τ = μ ə u / ə y
この関係をニュートンの粘性の法則(Newton's viscosity low)という.
ここで,速度勾配と剪断応力の係数を,μ 粘性係数(viscosity coefficent) または,粘度という.
粘性係数は,流体の粘性の度合いを表す係数で,流体毎に固有の値を取る.
粘性係数の単位は, Pa ・ s である.
ある物質の粘性係数は,気体か液体か,温度の変化で変わる.
液体は,温度が上がると粘性係数が下がる.
--> 分子間力が下がる
気体は,温度が上がると粘性係数が上がる.
--> 分子の衝突が増える
ニュートン流体,非ニュートン流体
ニュートンの粘性の法則に従う流体を,ニュートン流体という.
ニュートンの粘性の法則に従わない(粘性)流体を,非ニュートン流体という.
非ニュートン流体には,
ビンガム流体
擬塑性流体
ダイラタント流体
等がある.
流体の分類(おさらい)
完全流体
渦なしの流れ(ポテンシャル流れ)
渦あり流れ
実在流体
粘性流体
ニュートン流体
渦なし
渦あり
層流
乱流
非ニュートン流体
圧縮性流体
密度流・成層流
回転流れ
電磁流体
動粘性係数 (kinetic viscosity coefficient)
動粘性係数 ν とは,粘性係数をその流体の密度でわったものである.
ν = μ / ρ
μ 粘性係数, ρ 密度
流体の密度は,概ね質点系の質量と同じ意味がある.つまり,粘度と質量の比率である.動粘性係数の単位は,m2/s
動粘性係数の直感的な例は,
水のような流体が物体に与える抵抗
粘性の影響に比較すると,マス(密度)の影響が大きい
空気のような流体が物体に与える抵抗
マス(密度)に比較すると,粘性の影響は少なくない.
粘性流体の壁面流速
理想流体では,壁面上の流体の速度の壁面接線成分はゼロにはならない.
これを,「滑り壁条件(slip condition) 」という.
粘性流体では,壁面上の流体の速度の壁面接線成分は,壁面の速度と同じになる.壁面が静止している場合には,壁面上の速度の壁面接線成分は,ゼロとなる.
これを,「滑りなし条件(non-slip condition)」という.
レイノルズ数
粘性流れにおいて,流れを代表する速度,流れを代表する長さ,動粘性係数の間には,以下の関係がある.
Re = U ℓ / ν
U 代表速度,ℓ 代表長さ, ν動粘性係数
※例 代表長さ = 管の内径
代表速度 = 管の平均流速
この Re を,レイノルズ数(Reynolds number)という.
レイノルズ数は,慣性力と粘性力の比である.
レイノルズの実験による,元々のレイノルズ数の式には密度ρもあった.
※ こちらの方が,イメージとして,わかりやすいと思う.
Re = ρ U ℓ / μ
ρ 密度
U 管の平均流速,ℓ 管の内径,
μ 粘性係数
レイノルズ数による相似則
同じ代表長さなら,流速が上がるとレイノルズ数も上がる.代表長さを流速に応じて下げ,レイノルズ数を一定に保てば,流れの慣性力と粘性力のバランスを保ったまま,流れの場は,相似形で縮小される.
風洞実験,水槽実験は,この法則を応用している.
談:ミニチュアでの海上シーン等の特撮では,流れを模型のスケールに落として撮影されるが,低予算の場合普通の水を使うので,粘性係数は実物の海水と大差ない.そうすると,上の式からわかるように,レイノルズ数は保たれないので,粘性の影響が大きくでて,水滴,水柱などのリアリティが下がってしまう.工学的に考えると,模型のスケールに正しくあわせるためには,模型の縮尺にあわせて,粘性係数をさげた液体を用意する必要がある.
レイノルズ数による流れの変化
レイノルズ数が,100ぐらいになると,物体の下流に上下非対称の渦列が発生する.これを,カルマン渦列(Karman's voltex street ) という.
以下に,カルマン渦列の写真等があります.
http://stream.nagaokaut.ac.jp/docs/introduction/wind.html
談:カルマン渦列は,周期性を持つ渦なので流れ中の物体へ色々な影響を与える.実際に,米国では吊り橋が風によるカルマン渦列で共振して崩壊するという事故があった.
※ 以下で落橋の様子の動画がみられます.
タコマナローズ橋の落橋の様子の動画
流れの中に物体(円柱等)があるとき,レイノルズ数が上がると,渦が剥離する.
[おまけ]
流体力学に関係する図書をもっと推薦してほしいという声があった.
今回は,飛行機関連の面白い本.
偉人 レイノルズ
層流 1 pp.120 - 128
粘性
粘性応力
粘性係数
ニュートン流体,非ニュートン流体
動粘性係数 粘性流体の壁面流速
レイノルズ数
レイノルズ数による流れの変化
偉人 レイノルズ
オズボーン・レイノルズ (Osborne Reynolds 1842~1912 )
イギリスの物理学者・技術者.
1967年にケンブリッジ大学卒業.(数学専攻)
1868年, 26歳でマンチェスター大オーエンカレッジの工学部教授に就任.
(英国で2人目の”Professor of Enginnerig" )
流体力学に関連する業績:
層流から乱流への遷移の研究
レイノルズ数(慣性力と粘性との比で定義される無次元数)の発見 1883年
レイノルズ応力
レイノルズの相似則
キャビテーションの研究
潤滑の研究
その他の業績:
蒸発器や凝縮器の伝熱の問題の研究
タービンポンプの開発
熱量拡散計の発明
1988年,英国王立協会(the Royal Society)のRoyal Medal受賞.
参考文献
http://en.wikipedia.org/wiki/Osborne_Reynolds
http://158.110.32.35/download/CERN07/R_ARFM_90.pdf
http://misclab.umeoce.maine.edu/boss/classes/SMS_491_2003/Week_5.htm
http://oceanworld.tamu.edu/resources/ocng_textbook/chapter08/chapter08_02.htm
[層流 1]
教科書のpp.120 - 128部分について,教科書にそって,説明した.
粘性 (viscosity)
流体において,速度の差が発生したところで,流れ方向に
対して損失となる力を発生させる性質.
※最も典型的な速度の差がある流れとして,逆方向の速度を持つ
流れが接している場合を想定してみよう.
→→→→→→→→→→
←←←←←←←←←←
流体を構成する物質の,「分子間力」が,粘性のおおもとの力である.
さらに,分子同士の衝突による力もある.
※込み合った横断歩道の人の流れを斜めに人の流れよりも早く横切ろうとしたときを想定してみよう.
「粘性」の特徴は,空気や水のような比較的粘性の低い物質だけを観察していると,直感的に理解しずらい.
直感的には,サラダ油や,機械オイルの「べたつき」が,まさに「粘性」である.
流体を構成している物質の分子の大きさも粘性に影響を与える.
※分子の大きな物質の方が粘性が高い場合が多い.
粘性応力
流体運動において粘性は,物体の運動おける摩擦力と同様に,流体の運動を妨げる力を生じさせる.その,粘性によって流体の運動エネルギーの一部は熱となって失われる.
粘性によって生じる応力を,粘性応力(viscous stress) という.
流体の粘性応力は,速度勾配に比例する.
※ 速度勾配とは,場所による,速度の変化の傾きである.
粘性係数
粘性のある流体の液面上に平板をおいて,平板をx方向に動かすと平板の動きと粘性に応じて,流体はx方向に速度をもつ.また,速度はy方向に勾配を持つ.
このとき,x方向の速度 u,粘性応力 τ, とすると,
τ = μ ə u / ə y
この関係をニュートンの粘性の法則(Newton's viscosity low)という.
ここで,速度勾配と剪断応力の係数を,μ 粘性係数(viscosity coefficent) または,粘度という.
粘性係数は,流体の粘性の度合いを表す係数で,流体毎に固有の値を取る.
粘性係数の単位は, Pa ・ s である.
ある物質の粘性係数は,気体か液体か,温度の変化で変わる.
液体は,温度が上がると粘性係数が下がる.
--> 分子間力が下がる
気体は,温度が上がると粘性係数が上がる.
--> 分子の衝突が増える
ニュートン流体,非ニュートン流体
ニュートンの粘性の法則に従う流体を,ニュートン流体という.
ニュートンの粘性の法則に従わない(粘性)流体を,非ニュートン流体という.
非ニュートン流体には,
ビンガム流体
擬塑性流体
ダイラタント流体
等がある.
流体の分類(おさらい)
完全流体
渦なしの流れ(ポテンシャル流れ)
渦あり流れ
実在流体
粘性流体
ニュートン流体
渦なし
渦あり
層流
乱流
非ニュートン流体
圧縮性流体
密度流・成層流
回転流れ
電磁流体
動粘性係数 (kinetic viscosity coefficient)
動粘性係数 ν とは,粘性係数をその流体の密度でわったものである.
ν = μ / ρ
μ 粘性係数, ρ 密度
流体の密度は,概ね質点系の質量と同じ意味がある.つまり,粘度と質量の比率である.動粘性係数の単位は,m2/s
動粘性係数の直感的な例は,
水のような流体が物体に与える抵抗
粘性の影響に比較すると,マス(密度)の影響が大きい
空気のような流体が物体に与える抵抗
マス(密度)に比較すると,粘性の影響は少なくない.
粘性流体の壁面流速
理想流体では,壁面上の流体の速度の壁面接線成分はゼロにはならない.
これを,「滑り壁条件(slip condition) 」という.
粘性流体では,壁面上の流体の速度の壁面接線成分は,壁面の速度と同じになる.壁面が静止している場合には,壁面上の速度の壁面接線成分は,ゼロとなる.
これを,「滑りなし条件(non-slip condition)」という.
レイノルズ数
粘性流れにおいて,流れを代表する速度,流れを代表する長さ,動粘性係数の間には,以下の関係がある.
Re = U ℓ / ν
U 代表速度,ℓ 代表長さ, ν動粘性係数
※例 代表長さ = 管の内径
代表速度 = 管の平均流速
この Re を,レイノルズ数(Reynolds number)という.
レイノルズ数は,慣性力と粘性力の比である.
レイノルズの実験による,元々のレイノルズ数の式には密度ρもあった.
※ こちらの方が,イメージとして,わかりやすいと思う.
Re = ρ U ℓ / μ
ρ 密度
U 管の平均流速,ℓ 管の内径,
μ 粘性係数
レイノルズ数による相似則
同じ代表長さなら,流速が上がるとレイノルズ数も上がる.代表長さを流速に応じて下げ,レイノルズ数を一定に保てば,流れの慣性力と粘性力のバランスを保ったまま,流れの場は,相似形で縮小される.
風洞実験,水槽実験は,この法則を応用している.
談:ミニチュアでの海上シーン等の特撮では,流れを模型のスケールに落として撮影されるが,低予算の場合普通の水を使うので,粘性係数は実物の海水と大差ない.そうすると,上の式からわかるように,レイノルズ数は保たれないので,粘性の影響が大きくでて,水滴,水柱などのリアリティが下がってしまう.工学的に考えると,模型のスケールに正しくあわせるためには,模型の縮尺にあわせて,粘性係数をさげた液体を用意する必要がある.
レイノルズ数による流れの変化
レイノルズ数が,100ぐらいになると,物体の下流に上下非対称の渦列が発生する.これを,カルマン渦列(Karman's voltex street ) という.
以下に,カルマン渦列の写真等があります.
http://stream.nagaokaut.ac.jp/docs/introduction/wind.html
談:カルマン渦列は,周期性を持つ渦なので流れ中の物体へ色々な影響を与える.実際に,米国では吊り橋が風によるカルマン渦列で共振して崩壊するという事故があった.
※ 以下で落橋の様子の動画がみられます.
タコマナローズ橋の落橋の様子の動画
流れの中に物体(円柱等)があるとき,レイノルズ数が上がると,渦が剥離する.
[おまけ]
流体力学に関係する図書をもっと推薦してほしいという声があった.
今回は,飛行機関連の面白い本.
紙ヒコーキで知る飛行の原理―身近に学ぶ航空力学 (ブルーバックス) 小林 昭夫 講談社このアイテムの詳細を見る |
飛行機のしくみ―なぜ空を自由に飛べるのかをわかりやすい絵で一発解説! (ぶんか社文庫 ひ 7-1 ズバリ図解) (ぶんか社文庫 ひ 7-1 ズバリ図解) 秀島一生 ぶんか社このアイテムの詳細を見る |