マリヤ・イェヴティッチ
原題不明。
セルビアのイラストレーターらしい。
現代にはこういう目も動作も凍り付いたような人物を描く画家が多い。
擬人化された情景の中で、消された人間の記憶がうずいている。記憶の向こうから、常に誰かが見ているという絵である。
これは、過去世において、肉同様に扱われた女性の心の姿だ。下半身が魚になっているのはそのせいだ。人魚というものは、腰から下が食べ物になってしまった女の姿なのだ。男のセックスを拒否する姿でもある。
阿保な男の目的のために、魂を踏み潰され、肉体のみを獣的な欲望の充足のために使われた女性の姿なのである。
その魂の記憶が、暗い海の底から泡のようによみがえってきている。
そしてこれを見る者の心を、遠い過去世にある、何らかの記憶に導くのである。