ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

音遊び 2002.9.1

2002-09-01 08:46:11 | 嫩葉
音遊び
音楽が人に与える影響力については昔から注目されてきた。宗教における音楽効果、軍隊における音楽の効用など、音楽が集団を統率したり、団結心を高めるのに大きな影響力があることはよく知られている。また、集団だけでなく個人の心にも大きな力を発揮する。悲しいときに悲しい音楽が聴きたくなる、と同時に、悲しい音楽を聴くと悲しくなるということも事実である。
そのような音楽のもつ特性を医療や老人福祉に利用して行われているのがいわゆる「音楽療法」である。もっとも、音楽と言ってもここで用いられる音楽は、単に「音」であったり、「リズム」であったり、言葉から自然発生的に生まれてくる「調子」であったり、要するに完成された音楽だけでなく、音楽をつくる基礎、要素そのものも含まれる。
音楽療法で開発・蓄積されたさまざまな技術や経験を保育の現場で生かすことができないか、という発想のもとに、今年の4月から音楽療法の畑で活躍されている後藤浩子先生をお招きして、さまざまな試みがなされた。幸いなことに、後藤先生ご自身の出発点は保育者であり、そこからカウンセリングや音楽療法の方へ発展されたかたなので、幼稚園側の希望に積極的に応えていただけた。
実際にやってみて、教師も後藤先生もその反応に驚かされた。言葉で表現することが苦手なタイプの子どもがタンブリンや太鼓を用いることによって心の動きをはっきりと表現するようになった。また、その子どもの表現にクラス全体が反応する。自分の音に教師があわしてくれる。友だちがあわしてくれる。自分のしたことが認められている。これでいいのだと感じることができる。これは子どもたちに、あなたはかけがえのない存在なのだという自尊感情を感じさせることにつながり、このことの大切さを痛感する機会となった。
1学期の成果をまとめて、8月27日には近畿地区私立幼稚園教員研修滋賀大会において実践報告をすることができた。報告するに際して、園内でも問題になった点は「療法」という言葉であった。「療法」という言葉は治療方法という意味であり、それをそのまま保育という現場で用いることには多くの誤解を招くのではないか、ということであった。そこでわたしたちは音楽療法という言葉に代えて「音遊び」という言葉を用いることとした。演奏するという場合、その「演奏」という言葉は「遊ぶ(プレイ)」という言葉が用いられる。案外、ここに音楽の本質があるのではなかろうか。(園長・牧師 文屋善明)

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