ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

かぐや姫 2002.12.1

2002-12-01 09:20:51 | 嫩葉
かぐや姫
かぐや姫はもともと月の世界の乙女であったが、何らかの理由によりこの世へ送られてきた。この世での誕生と、成長、老夫婦の愛情等は周知の通り。5人の青年たちのかぐや姫争奪戦が繰り広げられる中、姫自身は月の世界への郷愁とこの世での老父母との別れとの葛藤を経験する。結末は、あっさりと月の世界から迎えの使者がやって来て、かぐや姫に羽衣を着せ掛けた瞬間、姫はこの世界での出来事や絆をすっかり忘れてしまって、別れを惜しみ悲嘆にくれる老夫婦を後に残し、振り向くこともなく、月の世界に帰ってしまう。
この物語のメッセージは、羽衣を着せられた瞬間、かぐや姫はこの世で経験したことをすべて忘れてしまい、月の世界の者になってしまうというところにあるらしい。いったい、このメッセージは何を語っているのだろうか。最もありそうな解釈はひとりの少女が大人の女へと成長する変身の秘密を語っている、ということかもしれない。これは何も女性にだけ限定されることではなく、子どもが大人へと成長するのは、なだらかな坂を昇るようにではなく、大きなあるいは小さな「飛躍」の連続である。確かに、子どもは一段階飛躍すると、それ以前のことは忘れる。逆説的なことを言うと、どれだけしっかりと忘れるかによって、成長の度合いが量れるほどである。子どもにとって、幼稚園時代に経験したことは、生涯にわたって「楽しかった思い出」としてを残るのではなく、むしろ意識の上では忘れてしまうほど深く、潜在意識のレベルで、その人の人格を形成する。だkら、恐ろしい。
連日、報道されている「拉致事件」とかぐや姫物語とが重なってしまう。ある日突然、今までとは全く異なる世界に置かれたとしたら、そして、やっと自分なりの生き方を見出し、馴染んできたところで、再び(これも突然)元の世界に連れ戻されたとしたら、その人の意識はどうなるのだろう。わたしたちの想像能力の限界をはるかに越えている。かぐや姫のように、羽衣を着せられた瞬間、この世での経験をすべて「昨夜の夢」として、完全に忘れることが出来たら、なんとか救われるだろうが。
わたし自身も10歳のとき、満州での生活を強制的に終わらされ、1年間、強制収容所で過ごし、そこから脱出し、北朝鮮の山野を彷徨い、日本に帰ってきた。わたしの場合は、母と2人の弟が共におり、日本で「父に会う」という希望があったし、かも、さまざまな人間的な絆も連続していた。だから、二つの全く異なる世界という意識は薄かった。しかし、彼らの場合は「洗脳」という手術を受け、「身分を隠す」という強制を受けている。わたしの経験と比較できるものではない。一日も早い、日常性の回復(親子が一つになって)を祈る。  (園長・牧師 文屋善明)
(園長・牧師 文屋善明)


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