地元の図書館の本紹介コーナーで本書が目に止まった。観天望気で言われることの一つ「朝焼けは雨、夕焼けは晴れ」ということわざが頭の隅にあったので、手に取ると、載っている。なんと、「はじめに」の次に、「本書の使い方」の説明事例としてまず載っていた。勿論、本文に載っている。これはタイムリー! そこで早速読んでみることに。
本書は2023年7月に単行本が刊行されている。
著者紹介をまず読むと、「1970年生まれ。全国330山の天気予報サイトを運営する、国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンの代表取締役。山岳気象予報士。テレビ番組の撮影協力、講演や講習会の講師としても活躍している。また、全国各地の山で、空を見ることの楽しさ、安全登山のための雲の見方などを伝える活動も精力的に行っている」とある。
本文は構成が統一されていて、まず読みやすい。まず<ことわざ>が見だしとなっている。著者の実体験と気象学の知識を背景に<解説>が続く。天気予報報道をテレビで観ているくらいで、天気図の正確な読み方も知らない私のような読者にわかりやすくて読みやすい。解説には、ことわざに関係する風景や山岳写真、わかりやすい絵解きのイラストなどが併載されている。そして、著者の経験とデータを踏まえ、このことわざがどのていどの<確率>で当たっているかを★マークで5段階評価している。最後に簡潔な<まとめ>と参考情報源が付記される。一つのことわざは、2~5ページで完結する。3,4ページの解説が主体。楽しみながら気軽にどこからでも読めるというところがよい。
本書全体の構成は、以下の章立てになっている。
1章 生きもののことわざ <カエルが鳴くと雨> から始まり、10項目
2章 空のことわざ <朝焼けは雨、夕焼けは晴れ> から始まり、10項目
3章 昔から伝えられてきたことわざ <暑さ寒さも彼岸まで> から始まり、5項目
4章 地域特有のことわざ <渡り鳥早き年は雪多し> から始まり、10項目
5章 山に関することわざ <硫黄の匂いがすると雨> から始まり、3項目
6章 海に関することわざ <朝の雷、船乗り警戒> から始まり、5項目
7章 著者オリジナルのことわざ
<からっ風が吹くと、山向こうは雪> を筆頭に5つのことわざを生成
各章の後に、コラムが併載されている。何となく知っているようで、説明せよと言われれば適切な説明に戸惑う基礎的な事項が絵入、写真入りで初心者にわかりやすく解説されていて、楽しめた。コラムの標題を列挙してご紹介しておこう。
<雲は何で落ちてこないの?> <気圧って何?> <風はどうして吹くの?>
<海陸風って何?> <山谷風って何?> <前線って何?>
<日本でもっとも雪が深いところは?>
びっくりするとともに楽しかったのを一つあげると、富士山にかかる笠雲が、河口湖測候所の年報資料をもとに、絵入りで20種類に識別されていることを取り上げている点である。
「れんず笠、にかい笠、われ笠、はなれ笠、えんとう笠、はふ笠、ひさし笠、まえかけ笠、なみ笠、ひとつ笠、うず笠、ふきだし笠、よこすじ笠、おひき笠、すえひろ笠、みだれ笠、かいまき笠、とさか笠、うねり笠、つみ笠」
実に、おもしろい! これも、地道な長年の観測データの集積から生まれている、天候を判断するための分類なのだろう。
本書を読んだ感想の一つは、天気のことわざが想像以上に沢山伝承されていることと、地域限定で伝承されていることわざも多いということである。科学的な気象学、天文学がなかった時代から、人々は、生活のため、サバイバルのために、幾世代にも渡る経験をことわざという経験則にして伝承し、生活行動の指針にしてきたのだな・・・という思いを深めた。
その一方、地球温暖化などの影響でことわざが当てはまらない気象状況が生み出されてきている側面について解説されている。なるほどと思い実感するところもある。
もう一つ、子供の頃と比べ、都市化の影響で、今では身近に経験すらできなくなったことわざもあるな・・・という感慨をいだくことにもなった。特に生き物たちにかかわることわざである。
本書には、ことわざを媒介にして、天気のこと、気象と山のことについて、その基本を楽しみながら学べる点がメリットである。
地域限定のことわざなどには触れず、1~3章に限定して、著者が取り上げたことわざと、現在時点での著者の5段階評価を列挙してご紹介する。なぜ、そういう評価になるのかは、本書の解説をお読みいただきたい。
貴方の経験評価と著者の評価を比較してみるのも、本書への誘いになるかもしれない。(評価5が最大の確率。ここでは数字で記載する)
1章 1 カエルが鳴くと雨 2
2 ツバメが低く飛ぶと雨 3
3 猫が顔を洗うと雨 1
4 大根の根が長い年は寒い 1
5 カマキリが高いところに卵を産みつけるとその冬は大雪 1
6 クモが巣を張れば雨は降らない 1
7 アリの行列を見たら雨 1
8 ミミズが地上にでてきたら雨 1
9 モズの高鳴き75日 2(広島より西の地方は3)
10 桜の花が下向きに咲くときは春大雪あり 1
2章 1 朝焼けは雨、夕焼けは晴れ 3
2 風の弱い星夜は冷える 5
3 太陽や月が暈をかぶると雨 3
4 飛行機雲が消えないときは天気が下り坂 3
5 朝虹は雨、夕虹は晴れ 4
6 雷が鳴れば梅雨が明ける 3
7 朝霧は晴れ 3
8 星が瞬くと雨 3
9 鯖雲は雨 3
10 早朝から暖かい日は雨 4
3章 1 暑さ寒さも彼岸まで 3(関東から西の地方)~4(北日本、北陸地方、長野県)
2 雷三日 3
3 高山に早く雪ある年は大雪(寒冬)なし 1(30年前までは3)
4 櫛が通りにくいときは雨 3
5 梅雨明け十日 3(1980年代までは4)
ことわざを入口にして、天気のこと・気象について、楽しみながら学ぶというのも、おもしろいアプローチである。
ご一読ありがとうございます。
補遺
ヤマテン 山の天気予報 ホームページ
天気のことわざ - 天気俚諺・観天望気 :「暮らしの中の気象」
天気のことわざいちらん :「知識の泉」
富士山の雲と天候の関係 :「国土交通省中部地方整備局」
富士山に笠雲 天気下り坂のサイン :「テレ朝 news」
朝焼け・夕焼け :「au天気」
燃えるような朝焼けは天気下り坂のサイン :「ウェザーニュース」
昼頃には九州から雨降り出す
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)
本書は2023年7月に単行本が刊行されている。
著者紹介をまず読むと、「1970年生まれ。全国330山の天気予報サイトを運営する、国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンの代表取締役。山岳気象予報士。テレビ番組の撮影協力、講演や講習会の講師としても活躍している。また、全国各地の山で、空を見ることの楽しさ、安全登山のための雲の見方などを伝える活動も精力的に行っている」とある。
本文は構成が統一されていて、まず読みやすい。まず<ことわざ>が見だしとなっている。著者の実体験と気象学の知識を背景に<解説>が続く。天気予報報道をテレビで観ているくらいで、天気図の正確な読み方も知らない私のような読者にわかりやすくて読みやすい。解説には、ことわざに関係する風景や山岳写真、わかりやすい絵解きのイラストなどが併載されている。そして、著者の経験とデータを踏まえ、このことわざがどのていどの<確率>で当たっているかを★マークで5段階評価している。最後に簡潔な<まとめ>と参考情報源が付記される。一つのことわざは、2~5ページで完結する。3,4ページの解説が主体。楽しみながら気軽にどこからでも読めるというところがよい。
本書全体の構成は、以下の章立てになっている。
1章 生きもののことわざ <カエルが鳴くと雨> から始まり、10項目
2章 空のことわざ <朝焼けは雨、夕焼けは晴れ> から始まり、10項目
3章 昔から伝えられてきたことわざ <暑さ寒さも彼岸まで> から始まり、5項目
4章 地域特有のことわざ <渡り鳥早き年は雪多し> から始まり、10項目
5章 山に関することわざ <硫黄の匂いがすると雨> から始まり、3項目
6章 海に関することわざ <朝の雷、船乗り警戒> から始まり、5項目
7章 著者オリジナルのことわざ
<からっ風が吹くと、山向こうは雪> を筆頭に5つのことわざを生成
各章の後に、コラムが併載されている。何となく知っているようで、説明せよと言われれば適切な説明に戸惑う基礎的な事項が絵入、写真入りで初心者にわかりやすく解説されていて、楽しめた。コラムの標題を列挙してご紹介しておこう。
<雲は何で落ちてこないの?> <気圧って何?> <風はどうして吹くの?>
<海陸風って何?> <山谷風って何?> <前線って何?>
<日本でもっとも雪が深いところは?>
びっくりするとともに楽しかったのを一つあげると、富士山にかかる笠雲が、河口湖測候所の年報資料をもとに、絵入りで20種類に識別されていることを取り上げている点である。
「れんず笠、にかい笠、われ笠、はなれ笠、えんとう笠、はふ笠、ひさし笠、まえかけ笠、なみ笠、ひとつ笠、うず笠、ふきだし笠、よこすじ笠、おひき笠、すえひろ笠、みだれ笠、かいまき笠、とさか笠、うねり笠、つみ笠」
実に、おもしろい! これも、地道な長年の観測データの集積から生まれている、天候を判断するための分類なのだろう。
本書を読んだ感想の一つは、天気のことわざが想像以上に沢山伝承されていることと、地域限定で伝承されていることわざも多いということである。科学的な気象学、天文学がなかった時代から、人々は、生活のため、サバイバルのために、幾世代にも渡る経験をことわざという経験則にして伝承し、生活行動の指針にしてきたのだな・・・という思いを深めた。
その一方、地球温暖化などの影響でことわざが当てはまらない気象状況が生み出されてきている側面について解説されている。なるほどと思い実感するところもある。
もう一つ、子供の頃と比べ、都市化の影響で、今では身近に経験すらできなくなったことわざもあるな・・・という感慨をいだくことにもなった。特に生き物たちにかかわることわざである。
本書には、ことわざを媒介にして、天気のこと、気象と山のことについて、その基本を楽しみながら学べる点がメリットである。
地域限定のことわざなどには触れず、1~3章に限定して、著者が取り上げたことわざと、現在時点での著者の5段階評価を列挙してご紹介する。なぜ、そういう評価になるのかは、本書の解説をお読みいただきたい。
貴方の経験評価と著者の評価を比較してみるのも、本書への誘いになるかもしれない。(評価5が最大の確率。ここでは数字で記載する)
1章 1 カエルが鳴くと雨 2
2 ツバメが低く飛ぶと雨 3
3 猫が顔を洗うと雨 1
4 大根の根が長い年は寒い 1
5 カマキリが高いところに卵を産みつけるとその冬は大雪 1
6 クモが巣を張れば雨は降らない 1
7 アリの行列を見たら雨 1
8 ミミズが地上にでてきたら雨 1
9 モズの高鳴き75日 2(広島より西の地方は3)
10 桜の花が下向きに咲くときは春大雪あり 1
2章 1 朝焼けは雨、夕焼けは晴れ 3
2 風の弱い星夜は冷える 5
3 太陽や月が暈をかぶると雨 3
4 飛行機雲が消えないときは天気が下り坂 3
5 朝虹は雨、夕虹は晴れ 4
6 雷が鳴れば梅雨が明ける 3
7 朝霧は晴れ 3
8 星が瞬くと雨 3
9 鯖雲は雨 3
10 早朝から暖かい日は雨 4
3章 1 暑さ寒さも彼岸まで 3(関東から西の地方)~4(北日本、北陸地方、長野県)
2 雷三日 3
3 高山に早く雪ある年は大雪(寒冬)なし 1(30年前までは3)
4 櫛が通りにくいときは雨 3
5 梅雨明け十日 3(1980年代までは4)
ことわざを入口にして、天気のこと・気象について、楽しみながら学ぶというのも、おもしろいアプローチである。
ご一読ありがとうございます。
補遺
ヤマテン 山の天気予報 ホームページ
天気のことわざ - 天気俚諺・観天望気 :「暮らしの中の気象」
天気のことわざいちらん :「知識の泉」
富士山の雲と天候の関係 :「国土交通省中部地方整備局」
富士山に笠雲 天気下り坂のサイン :「テレ朝 news」
朝焼け・夕焼け :「au天気」
燃えるような朝焼けは天気下り坂のサイン :「ウェザーニュース」
昼頃には九州から雨降り出す
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
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