ギリシャ神話への入門編図解版。表紙でおわかりのように、人物イラスト(神・英雄・人間)は軽妙なタッチで描かれている。<1章 天地創造> <2章 英雄たちの活躍> <3章 戦いの時代>という大項目分類のもとに、見開き2ページ、あるいは1ページで一項目がまとめられているので読みやすい。索引が付いているので、名称・単語による逆引きもできる図鑑になっている。
本書は2023年12月に単行本が刊行された。
手元には、高津春繁著『ギリシア・ローマ神話辞典』(岩波書店)、呉茂一著『ギリシア神話』(新潮社)をはじめ、数種のギリシャ神話文庫本がある。しかし、今まで残念ながら専ら必要に応じて関連個所を参照するくらいで、通読することがなかった。そこで、初心に帰って本書を手に取ってみた。通読した最大の収穫はギリシャ神話の基礎的全体像に触れられたことである。おかげで全体のイメージを少し描くことができるようになった。勿論、日本神話と同様に、神々や英雄たちが多すぎて、おぼえられたわけではない。あくまで通覧したことで、全体の神々のつながりがわかったにとどまる。
本書の利点は、神々の系譜図が数多く掲載されているので、神々の関係を理解しやすいこと。主要な神々については、その神名で関連ページの注記を入れて、リンクが張られている。それが図鑑としての使い勝手を便利にしている。ギリシャの神々が個別の都市と関係しているので、部分地図が結構多く掲載されている。
「はじめに」では、ギリシャ神話の基礎知識が、<成り立ちと発展> <人間の5つの時代> <ギリシャ神話の舞台> <ギリシャ神話を伝えた人々>という見出し項目で簡潔にまとめられている。
「はじめに」の冒頭の見開きページの見出しは、<ギリシャ神話だからすごい!>である。その最初に有名なボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』のイラストが載る。女神アプロディテの誕生シーンである。ギリシャ神話は数々の芸術作品の題材になっているというわかりやすい事例の提示。この女神については、p.41参照の付記がある。リンクが張られている。該当ページを見ると、p.40-41は「アプロディテ」の説明ページ。
『ヴィーナスの誕生』のヴィーナス、つまりアプロディテには、「身体をS字形にくねらせた姿は、古代ギリシャ時代のアプロディテ像にならったもの」と説明が付いている。また、この見開きページの本文には、「愛と美と豊穣の女神で、ローマのウェヌスと同一視される。クロノスが父ウラノスの男性器を切り取って海原へ投げ捨てたとき、そこに湧き出た白い泡から誕生した」と説明されている。
『ヴィーナスの誕生』の絵を見たとき、あなたはなぜヴィーナスがS字形の姿で描かれ、なぜ海から誕生してきたのかを考えたことがあるだろうか? 私は考えていなかった! 本書を読んで頭にガツン! ここの説明文中にも、クロノスのページへの補足が記されている。
<1章 天地創造>
副題は、「神々の世界と人間の誕生」。この章の小見出しに出てくる神々の名を列挙しておこう。
ウラノス、ゼウス、ティタノマキア、ポセイドン、ヘラ、アテナ、アプロディテ、アポロン、アルテミス、ヘルメス、ヘパイストス、アレス、デメテル、ヘスティア、ディオニュソス、ハデス、プロメテウス
これらの神々のうち少しは知っているなと思うものはわずか半数ていどだった・・・・。お粗末!
<2章 英雄たちの活躍>
副題は「大冒険ファンタジー」。英雄物語には「型」があるという解説から始まる、本書では、物語の「型」として、1.人間離れした誕生、2.怪物退治、3.試練や冥界訪問、という類型を指摘している。このパターン、今の漫画やゲームや映画にも引き継がれていることがわかる。
この章では、ペルセウス、ヘラクレス、ペレロポン、メレアグロス、イアソン、テセウス、オイディプス、が取り上げられている。
知らない英雄が多いなぁ・・・・手元の本が持ち腐れになっている、という思い。
<3章 戦いの時代>
ギリシャ神話は、神々の間も、人間同士でも、大戦争が勃発している側面を取り上げている。ここで取り上げられているのは、ゼウスへの反逆者、トロイア戦争、オデュッセウス苦難の旅、である。トロイア戦争は英雄の時代でもある。
トロイア戦争でトロイアが陥落する。敗れて生き残った王族アンキセスの息子アイネイアスは、落ち延びてイタリアを目指し、イタリアに新都市を築き、ローマ建国の祖となったという。このことは知らなかった! トロイアとイタリアが繋がっていたとは・・・。
「アイネイアスとラウィニアとの子孫として、ロムルスとレムスの双子の兄弟が生まれた。ロムルスによってローマが建てられたとされる」(p137)
このことが、ウェルギリウスの叙事詩『アエネイス』に描かれているという。
文化を理解するには、その地域の基盤にある「神話」を理解することが不可欠と言われる。ギリシャ神話を断片的に参照するだけでなく、改めて少なくとも通読する必要があると感じた。神々は複雑に相互連関している。
これを契機に、手元の本を生かさねば・・・・・。
ご一読ありがとうございます。
補遺
ヴィーナスの誕生 :ウィキペディア
ギリシャ神話 :ウィキペディア
ギリシア神話の固有名詞一覧 :ウィキペディア
ギリシャ神話「オリュンポス十二神」一覧|文化に影響を与えた神々を知る:「NewSphere」
ヘーシオドス :ウィキペディア
神統記 :ウィキペディア
オデュッセイア :ウィキペディア
ホメーロス :ウィキペディア
ウェルギリウス :ウィキペディア
ネットに情報を掲載された皆様に感謝!
(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)
本書は2023年12月に単行本が刊行された。
手元には、高津春繁著『ギリシア・ローマ神話辞典』(岩波書店)、呉茂一著『ギリシア神話』(新潮社)をはじめ、数種のギリシャ神話文庫本がある。しかし、今まで残念ながら専ら必要に応じて関連個所を参照するくらいで、通読することがなかった。そこで、初心に帰って本書を手に取ってみた。通読した最大の収穫はギリシャ神話の基礎的全体像に触れられたことである。おかげで全体のイメージを少し描くことができるようになった。勿論、日本神話と同様に、神々や英雄たちが多すぎて、おぼえられたわけではない。あくまで通覧したことで、全体の神々のつながりがわかったにとどまる。
本書の利点は、神々の系譜図が数多く掲載されているので、神々の関係を理解しやすいこと。主要な神々については、その神名で関連ページの注記を入れて、リンクが張られている。それが図鑑としての使い勝手を便利にしている。ギリシャの神々が個別の都市と関係しているので、部分地図が結構多く掲載されている。
「はじめに」では、ギリシャ神話の基礎知識が、<成り立ちと発展> <人間の5つの時代> <ギリシャ神話の舞台> <ギリシャ神話を伝えた人々>という見出し項目で簡潔にまとめられている。
「はじめに」の冒頭の見開きページの見出しは、<ギリシャ神話だからすごい!>である。その最初に有名なボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』のイラストが載る。女神アプロディテの誕生シーンである。ギリシャ神話は数々の芸術作品の題材になっているというわかりやすい事例の提示。この女神については、p.41参照の付記がある。リンクが張られている。該当ページを見ると、p.40-41は「アプロディテ」の説明ページ。
『ヴィーナスの誕生』のヴィーナス、つまりアプロディテには、「身体をS字形にくねらせた姿は、古代ギリシャ時代のアプロディテ像にならったもの」と説明が付いている。また、この見開きページの本文には、「愛と美と豊穣の女神で、ローマのウェヌスと同一視される。クロノスが父ウラノスの男性器を切り取って海原へ投げ捨てたとき、そこに湧き出た白い泡から誕生した」と説明されている。
『ヴィーナスの誕生』の絵を見たとき、あなたはなぜヴィーナスがS字形の姿で描かれ、なぜ海から誕生してきたのかを考えたことがあるだろうか? 私は考えていなかった! 本書を読んで頭にガツン! ここの説明文中にも、クロノスのページへの補足が記されている。
<1章 天地創造>
副題は、「神々の世界と人間の誕生」。この章の小見出しに出てくる神々の名を列挙しておこう。
ウラノス、ゼウス、ティタノマキア、ポセイドン、ヘラ、アテナ、アプロディテ、アポロン、アルテミス、ヘルメス、ヘパイストス、アレス、デメテル、ヘスティア、ディオニュソス、ハデス、プロメテウス
これらの神々のうち少しは知っているなと思うものはわずか半数ていどだった・・・・。お粗末!
<2章 英雄たちの活躍>
副題は「大冒険ファンタジー」。英雄物語には「型」があるという解説から始まる、本書では、物語の「型」として、1.人間離れした誕生、2.怪物退治、3.試練や冥界訪問、という類型を指摘している。このパターン、今の漫画やゲームや映画にも引き継がれていることがわかる。
この章では、ペルセウス、ヘラクレス、ペレロポン、メレアグロス、イアソン、テセウス、オイディプス、が取り上げられている。
知らない英雄が多いなぁ・・・・手元の本が持ち腐れになっている、という思い。
<3章 戦いの時代>
ギリシャ神話は、神々の間も、人間同士でも、大戦争が勃発している側面を取り上げている。ここで取り上げられているのは、ゼウスへの反逆者、トロイア戦争、オデュッセウス苦難の旅、である。トロイア戦争は英雄の時代でもある。
トロイア戦争でトロイアが陥落する。敗れて生き残った王族アンキセスの息子アイネイアスは、落ち延びてイタリアを目指し、イタリアに新都市を築き、ローマ建国の祖となったという。このことは知らなかった! トロイアとイタリアが繋がっていたとは・・・。
「アイネイアスとラウィニアとの子孫として、ロムルスとレムスの双子の兄弟が生まれた。ロムルスによってローマが建てられたとされる」(p137)
このことが、ウェルギリウスの叙事詩『アエネイス』に描かれているという。
文化を理解するには、その地域の基盤にある「神話」を理解することが不可欠と言われる。ギリシャ神話を断片的に参照するだけでなく、改めて少なくとも通読する必要があると感じた。神々は複雑に相互連関している。
これを契機に、手元の本を生かさねば・・・・・。
ご一読ありがとうございます。
補遺
ヴィーナスの誕生 :ウィキペディア
ギリシャ神話 :ウィキペディア
ギリシア神話の固有名詞一覧 :ウィキペディア
ギリシャ神話「オリュンポス十二神」一覧|文化に影響を与えた神々を知る:「NewSphere」
ヘーシオドス :ウィキペディア
神統記 :ウィキペディア
オデュッセイア :ウィキペディア
ホメーロス :ウィキペディア
ウェルギリウス :ウィキペディア
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