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日記 … Kametarou Blog
大学生の数学力
一昨日に続いて「大学生の数学力が低下」したことについて。主として読売新聞記事に関連してである。
「大学生 数学力危機」と大見出し。たしか1990年代末ころにも「分数もできない大学生」と騒ぎがあったと記憶している。今回は「日本数学会」という団体が全国48大学の入学直後の学生6,000人弱の協力によって調査した。問題は小中学校で学ぶ内容だそうである。
この調査はアンケートに続いて次の5問から成っている。少々煩わしいかも知れないが、全問記してみたい。
第1ステージ(2題・5分)
1-1 ある中学校の三年生の生徒100 人の身長を測り、その平均を計算すると163.5cm になりました。この結果から確実に正しいと言えることには○を、そうでないものには×を、左側の空欄に記入してください。
(1) 身長が163.5 cm よりも高い生徒と低い生徒は、それぞれ50 人ずついる。
(2) 100 人の生徒全員の身長をたすと、163.5 cm × 100 = 16350 cm になる。
(3) 身長を10 cm ごとに「130 cm 以上で140 cm 未満の生徒」「140 cm 以上で150 cm 未満の生徒」・・・というように区分けすると、「160 cm 以上で170 cm 未満の生徒」が最も多い。
1-2 次の報告から確実に正しいと言えることには○を、そうでないものには×を、左側の空欄に記入してください。
¶ ³
公園に子供たちが集まっています。男の子も女の子もいます。よく観察すると、帽子をかぶっていない子供は、みんな女の子です。そして、スニーカーを履いている男の子は一人もいません。
(1) 男の子はみんな帽子をかぶっている。
(2) 帽子をかぶっている女の子はいない。
(3) 帽子をかぶっていて、しかもスニーカーを履いている子供は、一人もい
ない。
第2 ステージ(2 題・10 分)
2-1 偶数と奇数をたすと、答えはどうなるでしょうか。次の選択肢のうち正しいものに○を記入し、そうなる理由を下の空欄で説明してください。
(a) いつも必ず偶数になる。
(b) いつも必ず奇数になる。
(c) 奇数になることも偶数になることもある。
(理由)
2-2 2 次関数y = -x2 +6x-8 のグラフは、どのような放物線でしょうか。重要な特徴を、文章で3 つ答えてください。
1.2.3.
第3 ステージ(1 題・10 分)
3 右の図の線分を、定規とコンパスを使って正確に3 等分したいと思います。どのような作図をすればよいでしょうか。作図の手順を、箇条書きにして分かり
やすく説明してください。 ───────────
なお、説明に図を使う場合は、定規やコンパスを使わずに描いてもかまいません。
マスコミはこの最初の問題で24%の学生が「平均」概念を理解していないことを大きく報道した。そして5問すべてに正解をした学生は1.2%だったと嘆く。最後の問題の正答率が最低で4%だったという。
そして学会の見解として、このような低レベルの数学力は「ゆとり教育」に問題があるという。
疑問はいくつかある。
第一に、大学生の数学力低下は過去とどの程度の比較なのか。これは「初の調査」というのだからこれまでこの種の調査はしていなかった。だから「低下」したのか「あまり変わらないのか」「それとも向上したのか」はっきりいえないではないか。例えば、私たちが学生のころ、もしこれらの問題でテストがなされたらどうだったろうか。私など、初めの2つくらいはできたろうが、その他は疑問だ。
第二に、初めの問題で約4分の3の学生ができている。だから4分の1ができないからといって大騒ぎする問題なのか。
第三、要するに計算問題はできるのだろうが、証明問題につながる論理的応用的な学力がダメだというのだろう。これを説明するような5題なのか。
第四。一番心配なことは大学生の学力が低いのだから、その前の小中高の子どもの学力が危機的状態になっているのではないか、という指摘がなされて、これからますます「学力アップ」の大合唱が進むことである。
第五。「ゆとり教育」が問題と日本数学会が声明している。学力低下が90年代からのいわゆる「ゆとり教育」が原因なのか。この関連性は少々乱暴だとおもうのだが。
そもそも「学力」をあの程度の問題ができるかどうかでいえるのだろうか。もっと厳密な説明が必要なのではないか。特に、必要な「学力」とは? また「ゆとり教育」についても、「日本の教育は知識記憶偏重に陥っている。考える力をつけたい」という趣旨だったと記憶している。責任はどうなのか。
また次の機会に、この学力問題を考える小テーマを整理したい。
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