現役、引退を表明

私は1960年に大学を出て札幌市内の私立の女子高に勤めた。それから30年間、主として社会科の授業とともに毎年担任をするという幸運な教師人生を過ごすことができた。この間、いつも思い出すのは私学への公的助成を制度化することを求める運動に取り組んだことだ。当時、私学助成は憲法違反だ、という声もあり、またカネの高い私学を選んでいるのだから問題ないだろう、という声もあったが、「国民のための私学をつくろう」という基本線で頑張った。その成果がまだ不十分ではあるが、私立高校への大きな公的助成が制度化されていることだ。

そして80年代から「自由な教育を!」という教師たちと民間教育運動の盛り上がりが、例えば埼玉県の「自由の森学園」や和歌山県での「きのくに子どもの村小学校」の創設という形で展開された。私たちも「北の大地に自由と共同の学校をつくろう」という活動を始めた。これが1986年からだったが、90年にこの活動に専念するために上記私立高校を退職した。そしてそれから30年間が経った。

札幌自由が丘学園というフリースクールを立ちあげたのが1993年、そしてこの卒業生たちをサポートする自前の高校を、という父母たちと教師たちの声を力に「構造改革」方針による特区制を活用した通信制高校を開いたのが2009年だった。

まだこのフリースクールと高校も発展途上ではあるが、私の責任はほぼ果たせたのではないか、そして傘寿を超えると体力的にも精神的にも負担を大きく感じることになった。そんなことから、現役引退を、今日のスタッフ会で表明した。もちろん残務は少なからずある。しかし上の事情をスタッフの皆さんは理解されて円満に引き継ぎなどできるだろう。

「教育一筋半世紀」と自己表現することがあったが、半世紀を大きく超えた。時間が長ければいいというものでもないことは百も承知だが、身の丈にあった課題と責任を果たすことができたと自己評価をしている。

しかし、この30年間、たくさんの『同志』たちがすでに鬼籍にある。「お前もボチボチこちらに来ないか」と招かれているような気持ちもする。しかし「もうちょっと時間をくれ。人生の後始末が残っている」と「先輩」たちに心の中で言っているのだが…。
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