てんぱっていきまっしょい。

国内旅行をこよなく愛する人間の日記です。でも最近は出かけてないよねぇ。(現在コメントは事前承認制にしています。)

准教授・高槻彰良の推察 4話

2021年09月15日 | 准教授・高槻彰良の推察(ドラマ)

女優:藤谷更紗(女優) - 市川由衣 が洋館の階段セットの前で撮影スタッフと、これからの演技の打ち合わせをしている。すぐ近くには、宮原晴子(更紗のマネージャー) - 馬渕英里何 も一緒だ。
「本番行こう!」の声がかかり、それぞれの持ち場についた皆に緊張感が漂う。
階段を上がり始める藤谷。しかし、何故か途中でその足取りは止まってしまう。動かしたくても動けない、そんな感じだ。

藤谷:離して、やめて。

その声に、撮影画面を見つめていた監督:佐竹達也(映画スタッフ・監督) - 時任勇気 が驚く。
左手を上に掴まれ後ろに引き倒されるように、藤谷が階段を仰け反って落ちていく。慌てて駆け寄ったスタッフに受け止められた藤谷。なんとか大けがを待逃れる。

大丈夫なの?駆け寄る宮原。誰?私のこと引っ張ったの。身体を起しながら藤谷が尋ねるが、もちろんそんな人物の姿を、誰も見てはいない。

藤谷:うそ、白い服を着た女の人の腕が見えた。

それを聞いたスタッフ一同は、だれかいないか階段あたりを見回すが心当たりのある人間はいなかった。

304 文学部 史学科 民俗学考古学専攻 高槻彰良 の研究室

生方瑠衣子(高槻の研究室に所属する大学院生) - 岡田結実 が、高槻のスーツに合わせてネクタイをコーディネイトをしている。
どうやら女優と対談するテレビ撮影があり、生方が気合を入れて高槻の私服を確認しているのだ。
講義中に藤谷の話をしてみたが、知らない学生がいたと生方に伝えると、最近主役とかやっていないからですかねと答える生方。
高槻が、講義に尚哉が出席していないことを心配して生方に伝えても、大学在学中にデビューして女優になった。オーディションを勝ち抜いて「森で眠る」に主役デビューと、藤谷のことで頭がいっぱいで、反応がない。

尚哉のアパート

尚哉は熱を出して、寝込んでいた。第3話で気を失って梯子から落ちた高槻を助けたときに頭を打ち、自室でそのまま倒れたために熱が出てしまったようだ。
どうやら解熱剤は処方薬を持ち合わせていたようだが、空きっ腹ではいけないと冷蔵庫を開けても、入っていたのは調味料くらい。きれいに空っぽだ。
そんなとき、スマホに心配した高槻から連絡が入る。

高槻:今日は授業に来なかったみたいだけど、どうしたの。その声風邪?一人暮らしの病気は辛いよね。家に食べるものとかある?

いや、まるで田舎のお母ちゃんじゃねーか!
尚哉はしんどいので、大丈夫です。来週は授業に出ますんで失礼します。と、通話を終了する。あぁ、辛い とばかりにまた布団に入るのであった。

オープニング

熱にうかされ、尚哉が子供の頃体験したあの奇妙な祭りの夢をみている。青い提灯の光りの中、皆が面をつけて踊るあの情景だ。亡くなったはずの祖父も面をつけて、お面をつけた尚哉に話しかける 尚哉、お前はこんなところに来ちゃだめだ。代償は払わなけりゃいけない。(3つある飴のうち、2つは「死」「歩けなくなる」だったかな。)べっこう飴を選べば孤独になる。 子供の尚哉(10歳時:嶺岸煌桜)は、べっこう飴を選ぶしかなかったが、独りは嫌だ、置いてかないで と祖父に言う。お面を外すと 今の尚哉になり独りは嫌だ と叫んでいる。あのときの祭り太鼓の音が、尚哉の部屋のドアをノックする音に変わり、尚哉は目を開ける。
居留守を使おうとしたのだけれど、ノックと一緒にあの人の声がする

深町君、深町君。ふ~か~ま~ち~く~ん。

ドアを開けると、高槻が食料を買い込んで立っていた。

高槻:熱があるなら、アイスクリームがいいかも。あれ、融けちゃってる。ごめん、ちょっと途中で道に迷っちゃったからさ。

尚哉:何時間迷ったんですか?

高槻:にぃじかん。

尚哉:(顔を一瞬背けたあと)3時間以上ですね。散らかってますけど、よかったらどうぞ。

高槻を部屋へ招き入れた。
マイスリッパで部屋に上がり込み、いそいそとおかゆを作る高槻。
(あ、やっぱりエプロンしてる。してるんだ。)
買ってきてもらった冷えピタをおでこに貼り、高槻の後姿を見つめる尚哉。
第3話で高槻を助けたとき、染みたシャツ越しに透けて見えた、あの背中の傷のようなものを思い出していた。
できあがったおかゆをいただこうとする尚哉に、ふぅふぅしてから食べて と、もう吹く気満々の高槻。尚哉の気配に、慌てて見ないふりをする。

尚哉:うん、おいしい。先生にこんなことさせてしまってすみません。

高槻:ただ、ありがとうって言ってくれればいいんだよ。

尚哉:へっ?

高槻:深町君、きみはもう少し人を頼ることを覚えたほうがいいよ。ひとりっきりで生きていける人間なんていないんだから、ねっ。

驚いた尚哉は、おかゆにやけどをする。あきれた高槻。コップにペットボトルのお茶をそそぎながら話しを続ける。

高槻:まったく、今度研究室に深町君のカップを置いた方がいいと思うんだ。今使っているカップはお客様用のモノなんだ。深町君は僕の研究室に必要な人で、もうお客様じゃないからね。

翌週の大学キャンパスで

高槻の言葉に、傷つきたくはないがもう少し他人との距離感を縮めてみようと思う尚哉。
何気ない他人の会話にも、嘘があると歪んで聞こえてしまうためと、話しかけられたくないこともあり、イヤホンをずっとつけていた。
今日はイヤホンを外してみようとする。

そこへ 難波要一(尚哉の同級生) - 須賀健太 が尚哉をみつけて駆け寄ってくる。
どうやら先週生方が話していた、バラエティー番組の藤谷との対談相手が高槻と知り、自分をその現場に見学に連れて言って欲しいと、尚哉に頼みに来たのだ。

難波:まぁ、俺は別にファンじゃないんだけどさぁ。やっぱり対談相手が高槻先生となると、あっちに行っちゃうのか。って思うわけよ。

あっちというのは路線変更のことで、最近藤谷がバラエティ番組などで「幽霊が見える霊感女優」という触れ込みで、露出が増えてきたことによるらしい。

高槻の研究室

テレビなんか出ていいのか?と、佐々倉健司(警視庁捜査一課の刑事・高槻の幼なじみ) - 吉沢悠 が心配している。

高槻:怒るだろうね、父は。

どうやら高槻のメディア露出は、実家に好まれていないらしい。
健司は、そっちなんか勝手に怒らせておけばいい。俺が気に入らないのは、テレビなんかに出たら、昔のお前を知っている人間が昔のお前に気づくかもしれないって事だ。と危惧している。

高槻:あのとき僕は12歳だよ、さすがに判らないでしょ。健ちゃん、僕はずっと探している答えが見つかるなら、そろそろ危険を冒すべきなんじゃないかって思うんだ。

対談のセットが用意された大学の教室

藤谷はすでにセットに入っている。横にはマネージャー。
受講者席には、心配な健司とその後ろに難波と尚哉がいる。尚哉はどうやら耳の調子が悪いようで違和感があるらしい。
収録が始まる。藤谷が高槻に幽霊の存在について話をふると

高槻:僕個人においては、現代の多くの人たちが幽霊を見たと語る以上、実在していてもおかしくないと思います。むしろ僕は、いつか本物の幽霊に会ってみたくてしょうがないんです。

藤谷:会ってみたい、ですか。

高槻:僕は本物の怪異を探しているんです。

堪りかねて健司は咳払いをする。

藤谷が私は幽霊をみたことがあるんです。という。その言葉が歪んでいないことに、尚哉は驚く。藤谷の路線変更を信じている難波は、あんな出鱈目やめときゃいいのにというが、言葉が歪んでいない(嘘をついていない)のを知っている尚哉は、出鱈目・・・じゃないかも。というのだった。
収録が終わり、藤谷は高槻に相談がある様子だ。

高槻の研究室にて

やはり尚哉は、風邪の影響で耳を病んでいるらしい。
研究室には、高槻・生方・尚哉・藤谷・マネージャーの宮原がいる。

宮原:藤谷がバラエティー番組で幽霊を見たと言ってから、霊感女優なんて呼ばれてアレにはマネージャーとして困ってるんです。 

藤谷は今、映画の撮影中で「資産家に嫁いだ女性が家の中で幽霊に遭遇する」という話を撮っているという。監督の才能にも惚れ込んでいて、この映画に賭けているのだが、怪奇現象が起きて撮影が途中で何度も中断してしまうらしい。最初は女性のすすり泣き、白い服の女性をみかけるスタッフがいて、気味が悪いの盛り塩をしたのだが、その塩がどろどろに溶けているというだ。

話を聞いていた尚哉は、どんどん耳が痛くなりその場を離れる。

藤谷は、この映画に賭けているので高槻に原因を突き止めて欲しい。という。快諾した高槻を残して、宮原と一緒に退室する。尚哉は階段の踊り場で、耳の不調に苦しむ。心配してくる高槻に、幽霊を見たという話の声は歪んでいなかったことを伝えると、高槻は素晴らしい、一緒に撮影現場に行かなきゃね!とはしゃぐのだった。

その後、尚哉は耳鼻咽喉科医院に行き中耳炎であると診断・治療を受ける。
帰宅すると、母から電話がかかってくる。

以前の母からの電話を思い出していた

母:お母さん、尚哉がいないと寂しくて。

またあんな思いをするのだろうか、仕方なく電話をとる。
自分宛ての郵便が届いていることと、お母さん、尚哉がいないと寂しくて。とまた言われるが、その言葉が歪んで聞こえないことに気づくのだった。

翌日のキャンパス

母の電話以来、人の声が歪んで聞こえなくなった尚哉。構内をイヤホンなしで歩くが、もう飛び込んでくる他人の会話が歪んで聞こえないため、なんだか嬉しくなりもう僕は孤独じゃない。と感じていた。
スマホには高槻の通知が届いている。撮影の時間・地図を送るから道案内をよろしくと書かれている。

撮影現場

助手の助手という肩書で、難波がついてくる。尚哉は生方にも頼んできてもらう。(うそが判らなくなったのが不安)藤谷は、怪奇現象の度に撮影が中断するため、監督がナーバスになっている。今日は調査ではなく、撮影現場の見学という目的だということにしてくれという。
宮原にヒヤリングをしたかったのだが、宮原は田辺純(映画スタッフ・制作見習い) - 北澤響 を代わりに呼んで、現場を案内させることになった。
田辺には、最初に起きた女性のすすり泣きからヒヤリングを始めた。撮影の開始10秒ほどで、女性の鳴き声らしきものが聞こえたのだという。また、藤谷が階段から落ちた時も、姿見の鏡に白い服をきた髪の長い女性が映っているのをみた。しかし、スタッフにも出演者にもそんな人はいない。というのだった。尚哉はうそが判らないため、所在ない態度をする。高槻はそれを見ていた。

次は、和田俊樹(映画スタッフ・小道具担当) - 篠崎大悟 へのヒヤリング。
藤谷が階段から落ちた日の夜。帰ろうとしたら、白い影が近くを通ってヒヤッとした風を感じた。丁度人間くらいの背丈で、白い服を着た女性のような気がした。 白い洋服・・・ですか? 丁度5年位前、この撮影現場に向かう途中、一人の若い女優が交通事故で亡くなった。その女優がひょっとしたらって。

嘘が判らない尚哉は、いたたまれず「トイレに行く」とその場を離れるのだった。

現場になっている洋館の庭先

ベンチに座る尚哉に、難波が尚哉は)先生の助手ってこんな感じでいいの?もうちょっと(生方のように)メモを取るとか、先生に飲み物を渡すとか。と話しかける。嘘が判らないとは言えない尚哉は、いつもはもうちょっと役に立つんだけど、もう・・・。 と答えるのが精いっぱいだ。

二階ベランダで高槻は、その二人の様子をみていた。ヒヤリングの内容を、生方が高槻に報告する。生方は事故死したという女優が気になるらしい。
藤谷は高槻に様子を聴きながら、今なら録音部の浜村雅文(映画スタッフ・録音担当) - 阪田マサノブ と話ができそうだと声をかける。

浜村は背を向けたまま、なんか女のすすり泣きみたいなのが聞こえたんだよねといい音声を二人に聞かせる。

高槻:すばらしい。

浜村:あれだ、こういうのは、昔からあるんだよね。

高槻:例えば?

浜村:タイトルは言えないんだけど、有名な映画で主人公がキメ台詞のときによぉく聞いたら声が二人分聞こえるって言うんだ。そしたら、その声はその主役を争ったオーディションで負けて自殺した男の声にそっくりだって言うんだよ。

庭で尚哉が座っていると、監督が近寄ってきてこの映画に出てみないか?と声をかけてくる。他のスタッフもやってきて、眼鏡をとってみろ・髪型をかえてみろ・とってもいい と言われても、嘘なのかどうかわからない。
今まで声の歪みだけで相手を判断していた尚哉は、誰か本当のことを言ってください と拒絶するのだった。そのとき尚哉の頭の中で僕は深町君がいいんだよと高槻に言われ、自分が嘘が判るからではないかという気がして、尚哉はその場から逃げ出すのだった。

難波が尚哉がいないと言い出す。そこに藤谷が通りがかったため、難波は藤谷のデビュー作「森で眠る」のパンフレットを取り出し、サインをせがむ。
若いのに随分古いのを持っているのね藤谷がサインを書きながら難波に話しかけるこれが一番好きなんですよ。と難波に言われ、一瞬手が止まる。浮かない表情の藤谷を高槻が見ていた。

アパートへ帰ろうとする尚哉。高槻からは体調を心配する通知が届く。ふと、ウィンドウに飾られたマグカップ(ゴールデンレトリバー柄)に目がとまる。高槻に研究室に自分用のカップを置いたらいい。深町君はもうお客様じゃないからね。と言われたことを思い出していた。嬉しかったのに、嘘がわからない今の自分は役に立てないからこのカップは買えない、ウィンドウの前から尚哉は離れていった。

佐々倉古書店

健司の母 佐々倉花江(健司の母) - 和泉ちぬ は、尚哉がくると思ってトンカツを揚げたのにぃとがっかりしている。高槻は尚哉と連絡が取れない。健司が俺だって食うよ、トンカツとなぐさめる。
店に仏頂面の男が入ってくるコイツは客じゃない 健司は言う。
この男は、黒木(高槻の父の秘書) - 夙川アトム だ。

黒木:彰良さん、お元気そうで。

高槻:要件だけ言ってくれないか。どうせ僕が父の気に障るようなことでもしたんだろう。

黒木:彰良さんがというより、映画のスタッフです。(SNSに、撮影現場で高槻と藤谷が映っている写真をアップしている。)お父上は、彰良さんが注目を集めるのを避けたいとお考えです。先日はテレビの撮影にも参加なさいましたよね。それもお父上の耳に入っています。

高槻:あなたが伝えたんだろ。

黒木:軽率な行動はお控えください。彰良さんの過去を掘り返す輩が出てくる可能性もありますので。

健司:こいつがそんなことも分からずにテレビに出たと思ってるのか。(黒木と高槻の間に割って入る。)

高槻:ありがとう健ちゃん、もういいよ。映画のスタッフには伝えておく。だからもうここへは来ないでもらえますか?

黒木:わかりました。(店を出ていく。)

健司:あぁ、腹立つ。トンカツ食うぞ、トンカツ。

街中(天神様の境内の外)

尚哉は人々を見つめている。あんなに関わりたくなかった他人、うそが判らなくなって嬉しかったはずなのに、最初に受け入れてくれた研究室には、行きづらくなってしまった。生方が通りかかる。尚哉は生方に、これからは生方に先生の助手をやってもらいたい、自分はもう役に立てそうもない と話す。生方は私なら喜んでやるけど、あなたはそれでいいの?彰良先生、明日もう一回撮影現場に行くみたいだよと言って去っていく。

撮影現場(庭)

尚哉は高槻と現場に来る。体調を心配する高槻に尚哉は昨日の態度を詫びる。
撮影が開始されたが、天候が晴れてきたため一旦中断する。高槻は「まわった」というスタッフの言葉が気になり、田辺を捕まえて聞こうとしたが、わからないらしく宮原が代わりにこたえる「撮影が始まった」という意味で、昔はフィルムで撮影していたためモーターを回す必要があった。そこからきているという。尚哉は、高槻が実はその話を知っているのに尋ねたことを不審に思う。若い田辺は知らなかったのに、幽霊はそれを知っていたのだと。

高槻:残念ながら、そう簡単に本物の怪異とは出会えないみたいだ。

次の「まわった」に注目するよう、尚哉に伝える。

撮影がスタートし「まわった」と掛け声が出る。
すると、藤谷がベランダを指さし、誰かの悲鳴が上がる。

白い服を着た長い髪の女性と思われる姿が、ベランダから建物の中へ入っていったのだ。
皆が確認のため、洋館入り口に駆け込む姿を高槻は眺めている。
二階に上がり、皆が点検する様子を高槻は観察している。

高槻:皆さん、僕はいつも怪異を見たがるので変わり者だと言われているんです。でも、この撮影現場には変わり者がたくさんいるみたいですね。幽霊がいると分かった途端、逃げずに駆けつける人がこんなにいるのですから。ただ、幽霊がいるといって駆け出した人と、ここにいる人の人数が合いません。一人増えている。和田さん、あなたです。

和田:思い違いだろ。

高槻:僕は見たものを全て記憶してしまうんです。だからごまかしは効かない。あなたがここにいたのは、幽霊役をやっていたからでしょう。(和田のうしろにある扉の陰のスツールの中から、幽霊の白い服と黒髪のかつらが一部出ている。)みなさんがここに来たのは、幽霊の和田さんを紛れ込ませるため。つまり皆さんが、幽霊の仕掛け人ですね。

和田:今の白い服の幽霊は俺だ、でも今までの怪異は本物だ。

高槻:そのことに関しては、下で話しましょう。

高槻は、幽霊は昔から文芸や芸術の世界で好まれた題材で、幽霊とは死んだ人の魂で、生前の名前や事情があったはず、今でもお岩さんは顔が腫れ、お菊さんは皿を数える姿描かれている。ところが幽霊話が増えるにつれて幽霊の生前の情報は無意味になった。近世紀幽霊を題材にした絵画作品が多く描かれたが、その殆どが誰々の幽霊ではなく、単に幽霊であると。その結果として見た目は類型化し、現代ではさらにすすみ(主にJホラーの影響で)大抵の幽霊は、白い服に長い髪となってしまった。そして、この現場で現れたという幽霊も白い服で長い髪の女性、幽霊映画にしては作りが甘い、と。和田が話した女優の交通事故も、警察関係者(健司)に調べてもらったところそんな事故はなかった。音声の浜村は、すすり泣きの話には歯切れが悪かったのに、他の話は饒舌で嘘が苦手な人だと。

監督は、皆が撮影の邪魔をしたのかと言うと、高槻はその逆で、皆は成功を願っているのだという。この幽霊騒動は、回ったという映像証拠がある状態でしか幽霊が出て来ず、都合が良すぎる。ホラー映画のキャンペーンに、本当の幽霊騒動の映像があれば宣伝効果があるし、宮原は「藤谷が霊感女優と言われて困っている」と言うが、あれは本心なのか?彼女は霊感女優と言われるようになってから仕事が増えているではないか。もう一人、この状況をチャンスだと思っている人間がおり、「森で眠る」以上の主演作を熱望していた、藤谷がそうだと。

藤谷:さすが高槻先生、映画の番宣に一役かってもらおうと思ってたのに見抜かれちゃった。

監督が、自分の映画がいいものだと信じてくれないのかと問いただすと、藤谷は「いいっていうだけじゃ売れないの。」と言う。女優も芝居のできる若手がどんどん出てきて、31歳の自分には今が勝負の分かれ目なのだ。自分には今だからできることも沢山あるのに、周りが勝手に限界を押し付けてきてもがいて苦しんでいると。自分は努力しているのに、バラエティで幽霊が見えることを話しただけで仕事が増えて、悩みや努力は何だったのか。しかし、このチャンスをものにし、世の中が自分を諦めても、自分は自分を諦めないという藤谷だった。

監督には、この映画は絶対に成功させるから、このまま騙されていて欲しいという藤谷。スタッフも藤谷の本気を感じるから、この騒動に協力したのだと監督に言う。監督は撮影を続けることにし、スタッフと庭に出ていく。

高槻:お見事でした。

藤谷:嘘はついてない。

高槻:わかってますよ。でも、涙は演技ですね。

藤谷:自分でも嘘か本当かわからないといい、泣こうと思えばいつだって泣けるから。

高槻:全身・・・女優さんなんですね。

藤谷:全身女優・・・いい言葉。ありがとうございます。もうしばらく頑張れそうです。お礼にひとつ教えます。テレビで話した幽霊話は本当、私こどもの時におばあちゃんの幽霊を見たんです。先生もいつか会えるといいですね。

マネージャに促されて、撮影に戻る藤谷。あとをついていくマネージャーも高槻に感謝を示すのだった。

帰り道

高槻:いい話が聞けたよ、どうしたら幽霊に会えるんだろうね。

尚哉:先生は、俺がいなくても嘘が見抜けるんじゃないですか?

高槻:だとしても、わからないこともあるよ。例えば、深町君は嘘が判らなくなっても、どうして僕に言ってくれないのか

尚哉:それも判ってたんですか。

高槻:深町君を見ればなんとなくね。

尚哉:そこまでわかるなら、俺は必要ない。道案内なら他の人にだってできます。暴走した先生を止めることだって。嘘が判らない俺には、役に立てることがない。

高槻:僕は深町君がいいって言ったよね。

尚哉:(嬉しい言葉だったはずなのに)今の俺には、その言葉が本当なのかどうかも分からないんです。孤独の呪いにかけられた俺は、きっと一人のままなんです。助手は、もうやめさせてください。

高槻:わかったよ。

尚哉は高槻を残して歩き去っていくのだった。

第4話終了。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする