不動産業者:乙雅三(きのとまさぞう) - 市川猿之助 の背中を見てしまったことで、彼の姿をした六壁坂の何者かを背負うことになった杜王町に住む人気漫画家:岸辺露伴 - 高橋一生。
配達員 - 渡辺翔 の訪問でピンチに襲われたが、玄関でブリッジの姿勢を取ることでなんとか乗り切った。
荷物と一緒に手渡されたのは、露伴の担当編集者:泉京香 - 飯豊まりえ が追加で作成したペラ1枚の資料だった。
締切りの邪魔をしてきた乙に、頑張ったと言われてブチ切れた露伴は乙を・・・いや、正確には乙の姿をした何かを背負ったまま玄関の外へ出た。
お前を六壁坂に返す、いや、捨てる。
えぇっ。無理無理無理無理無理無理無理無理ぃ。
ニヤニヤ笑う乙を尻目に、近所の小学生や親子連れたちからの視線を浴びながら、露伴は坂道を乙がやってきた逆の方法で下って行く。
彼らからは、露伴の背中に居る乙の姿は見えないので、通行人からはさも怪しげに見える。
乙も、こっちがヒヤヒヤしちゃうよぉ。と言う声だけが背中の方向から聞こえる。シッ、シッ!通行人を追い払う仕草をして、なんとか坂道を降りる。
半分木でできた電話ボックスに背中を預けて、スマホを操作する露伴。
誰か助けでも呼ぶ?
あぁ、人じゃなくタクシーだがな。座席に座っていれば、背中を見られずに移動ができる。
ふぅ~ん、でも乗るの難しいと思うよぉ、車道まで行けるかなぁ~。もっと狭い道だったらよかったんですけどね、惜しい。
その言葉に、露伴はタクシーを諦めて歩いて目的の場所まで行くつもりのようだ。
普段なら何でもない歩道橋も、背中を見られないように蟹歩きの状態で登って行く。
幹線道路を渡す大きな歩道橋の上まで来た、露伴と乙。
あぁ、無理だね、詰んじゃったよ、詰みだ詰みだぁ。こんなとこ歩いたら、絶対背中を見られちゃうなぁ~。
フンっ、乙雅三は僕の家まで来た。
ここを通って来たんだろっ!方法はある。
露伴は、自分の行動に都合のいい歩行者を見つけたようだ。
レザーコートを着た、ちょっとやんちゃそうな大柄の男性 - 栄信。
彼と背中合わせになるように、露伴は歩き出す。他の歩行者は露伴の怪しい様子を見て、ザワついている。
大柄の男性は歩きスマホなので、そのことには気づいていないらしい。
こんなことします?恥ずかしいなぁ。でもねぇ、露伴先生。ひとつ忘れてますよ。
乙雅三のときは、俺が邪魔しなかったってコト。
乙は、大柄な男性を挑発し始めた。
オイ、そこのバカ!それともオメェ間抜けかぁ?
んあぁ、なんだぁぁぁっ。
怒った男性は声のした方向を見ようとするが、露伴が背中を合わせて一緒に動くので、歩道橋の上でグルグルと回る。
その様子を、周りの人間は気になるのだが男性に絡まれると困るため、目を合わせようとしない。
乙が露伴の肩を強く掴み邪魔をされても、男性の腕を取り元のように背中合わせになりながらヘブンズドアを発動する。
・・・。
後ろに倒れそうになる男性を、うまく背中で支えることができた露伴。
状況から彼の本を読むことはできないだろうが、ハートマークがいっぱいついててナカナカ乙女チックだよんっ!
なになに、ピアノを習い始めた。幼稚園の頃からの夢だったんだけどお父様が許してくれなかった。無理やり柔道を習わされたのだ。やっと願いが叶った。「乙女の祈り」が弾けるようになるまで頑張るゾ!
天気予報は雨、でも心配は御無用。
ランドは雨でも全然楽しいのだ!むしろ雨のほうが楽しい。ニワカにはわからないだろうな。この領域に達するには少なくとも10年。少なくとも200回は通わないと。
そこへペンを取り出した露伴が上から書きなぐる。
振り返らない、歩きスマホをしない。
意識を取り戻した男性は、
オイッ、今俺のことを言ったのか、アァッ!
(ゴメン、あのハートマーク見ちゃうとカワイイゾ!)
歩道橋に居合わせた人間たちはさらに目を背けるようになり、男性はそのまま歩き出した。
どうやら歩きスマホをしようとすると、もう片方の手がそれを押さえるようにして邪魔をしているみたいだ。
残念だったな、僕には乙雅三が持っていないギフトがある。
どうやらピンチを脱した露伴。こんな様子で、本当に六壁坂へ行くつもりなのだろうか。