歩道橋をなんとかやり過ごす
4時間で、3km程か・・・。
不動産業者:乙雅三(きのとまさぞう)の姿をした何か - 市川猿之助 は 杜王町に住む人気漫画家:岸辺露伴 - 高橋一生の疲れた様子に嬉しそうだが、この裏ぶれ具合、どこかで見たことのある場所だ。
アーケード状で薄暗く、人通りのないアソコ・・・その壁に背中を預け、露伴は地面にしゃがみ込む。
無理ですね、六壁坂行くなんて絶対無理だ。
そうだな。
もう諦めて背中見せちゃいましょうよ。
ねぇ、見せましょうよ。楽になれるから。
先生、どうしたんですか。
そんなトコ座り込んで、具合悪いんですか?
露伴の担当編集者:泉京香 - 飯豊まりえ が、壁を背に地べたへしゃがみ込む露伴を見つけて近寄ってくる。
来るな、泉君っ!大丈夫だ。
露伴は彼女を制止するが、彼の顔色が良くないと心配する泉。
何でもないからそれ以上近づかないでくれと言って、露伴は立ち上がる。
先生、背中どうかしましたか?
いや、
でも後ろに何か・・・
いや、いいから来るなっ!
露伴と泉のやり取りを、ニヤついて眺める乙。
露伴先生、見せちゃいましょうよ。どうせもう限界でしょ~。
黙れっ!
(えぇっ)先生、やっぱり変ですってぇ~。
ほぅら、見たがってる。見せましょうよぉ~。
露伴は、最初苦悶していたのだが・・・笑い始めた。(ぇ
笑い出した彼を見て、ちょっと不気味がる泉。
声を掛けると、
いや、泉君。
見るなのタブーの話、覚えてるか?
勿論ですよぉ~。
【覗くな】【開けるな】・・・あと【振り返るな】。
最初ボツにしちゃったネタで、似たカンジのがあったのを思い出してぇ。
で、資料の新バージョン作ったんですけどぉ、ここの。
平坂のっ。
んあぁ~、良くできたっ!
そうですかぁ、いやぁ~。(テヘ)
その資料を、乙に見せるようにしながら露伴は読み上げる。
平坂で「かごめかごめ」が聞こえる時、振り返ってはいけない。
振り返った者は「神隠し」にあう。
非常に面白い。
露伴が資料に目を通していたことを喜ぶ泉。急に取材したいとメールが来たときは驚いたという。
いったい何時?
実は、露伴がタクシーを呼ぶと言って電話ボックスにもたれてスマホを取り出していた時、乙が車道を見ているスキに泉へメールを送信したのだ。
この【振り返ってはいけない話】は、聖書にもあるしギリシャ神話にもある。
日本の神話にも似た話があってね、その中で坂道が出てくる。
名前は、黄泉比良坂(よもつひらさか)。
あっ、それも調べました。
黄泉の国に繋がってる坂道でぇ・・・。
露伴が視線で指し示したその先にあるのは・・・あの「平坂」のプレートだ。
黄泉(よみ)、黄泉(よもつ)、平坂(ひらさか)、黄泉平坂(よもつひらさか)。字が違うけど・・・そっかぁ。
もちろん、ここだけが平坂じゃぁないんだろうが、ここもあの世に通じているっ!
そう思わせる何かがあるに違いないっ!
歩行者信号のメロディー「とおりゃんせ」が聞こえてくる。
あぁ、なるほどぉ~。
フンっ、それが何だ!
すると、「とおりゃんせ」のメロディが終わり
「かごめかごめ」のメロディが流れ始め、泉と露伴はそれに気づく。
泉君、僕の背中がどうかしたか?と言っていたな。(露伴、乙を背負って立ち上がる。)
確かめてみてくれっ。(後ろを指さす)
なぁんだ、結局押し付けちゃうんだ。(泉の様子を見ようとする。)
・・・。
お前、振り返ったな。
泉がゆっくりとその場で倒れる。辺りが暗くなり、強い風が吹く中でかごめかごめのメロディががはっきりと聞こえる。
露伴が後ろを指さしたのは、彼の背中ではない。後ろにいる泉へ、ヘブンズドアを発動したのだ。
(自分だいちゅきの泉の本は、さまざまなポーズを決めた泉自身のページで埋まっています。)
平坂でかごめかごめが聞こえるとき、振り返ってはいけない。
振り返った者は、神隠しに遭う。
やめろ、やめろっ。
岸辺露伴。
何か見えるかぁ~。
無数の黒い人影が、露伴の後ろをうごめいている。
腕を上げ、何かを引きずり込もうとする意志を感じる。
お前、最初からぁ~
いゃ~、別の手を考えてはいたよ。ヘブンズドアで僕自身に「お前を忘れる」と書き込む・・・とか。
お前たちみたいな存在は伝説と同じで、忘れられたら消えるんじゃぁないかぁ~。
まぁ~やったことはないがぁ~その前にこっちの伝説を試す価値はあるっ。
お前だって、どうなるかぁ~。
背中に貼り付くというよりは、恐怖にしがみつく乙。
どんどん、どんどん、黒い影たちが近づいてくる。
そうかもしれないなぁ。
だが、余裕たっぷりの奴が慌てる姿は、オモシロイっ。全くぅ~。
顔を見れないのが残念だよぉ~。
影たちのおぼろげな姿は、やがてはっきりとした意志でその手を伸ばして【乙】の姿をした【奴】を捉える。
頭、身体にその影たちの腕が、【奴】に絡みつく。
そして、露伴の背中から嫌がる【奴】を引きはがして消えてしまった。
泉が目を覚ますと、平坂はもう明るくなっていた。
どうして自分がここに横たわっていたのか、理解できない泉。
平気な顔で露伴が近づき、どうかしたのかと彼女に尋ねた。
や、今、かごめかごめが・・・。
あれはとおりゃんせだっ!
え、そうでしたか?
でもやっぱりここは境い目かも、と腕を伸ばし露伴に起こしてもらう泉。
ここは昔から不思議なことがあったらしくて・・・そう言葉を続ける彼女を遮って
露伴が肩を叩き耳元で囁く。
泉君、境い目はむやみに踏み込むものじゃぁない。
取材は終わったと、満足して帰る露伴。
もちろん泉は消化不良で、満足できていない。
それにしても君は勘がいいというより、当たりやすいタイプだなっ。
当たりやすいって、何ですか?
或る意味、感心するよっ。
テヘッ(∀`*ゞ)
或る意味!褒めてないよ。
六壁坂村
苔むした不揃いな石段が、うねるようにある屋敷に向かっている。
みるからに立派な造りのその屋敷。二階の窓ガラスでレースカーテンが揺れる。
水音?なにかドス黒い液体が一滴、容器に落ちる音が聞こえる。
エンディング