みかきもり 衛士(ゑじ)のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ
皇宮警備の衛士の焚く火が、夜は燃えて昼は消えることをくり返すように、私の恋の炎も夜は燃えて昼は消えることをくり返しながら、物思いにふける日々が果てしなく続くのだ。
みかきもり 「御垣守」は、宮中を警護すること。
衛士のたく 「衛士」は、諸国から毎年交代で召集される宮中警護の兵士。「の」は、主格の格助詞。
火の 「の」は、比喩を表す格助詞。「火が…するように」の意。ここまでが序詞。
夜は燃え昼は消えつつ 「は」は、区別を表す係助詞。「夜は燃え」と「昼は消え」が対句になっている。「つつ」は、反復を表す接続助詞。かがり火が燃えては消えることをくり返す風景に、作者の恋心が燃えては消える心情を重ねて表現している。
物をこそ思へ 「こそ」と「思へ」は、係り結び。「物を思ふ」は、恋の物思いをする意。
※ 『古今六帖』に、「みかきもり 衛士のたく火の 昼は絶え 夜は燃えつつ 物をこそ思へ」が、読み人知らずの歌として載っているため、この歌は、大中臣能宣の作ではないとする説が有力。
おおなかとみのよしのぶあそん(921~991)
平安中期の歌人。三十六歌仙の一人。梨壺の五人の一人として『後撰集』を編纂。伊勢大輔の祖父。神官。
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