22日から27日まで、愛知県春日井市と岐阜県多治見市の県境にある旧国鉄中央線廃線跡「愛岐トンネル」の特別公開がありました。明治初期に造られたトンネル4基を含む散策路1,7キロを歩くことができます。
JR中央線定光寺駅を降りるや凄い人の波でびっくり。少し並んで待ちましたが、中々先に進まず見学は断念。代わりに、橋を渡った向こう側にある定光寺へ行くことにしました。
定光寺には40年以上前、両親と一緒に来て以来です。
長い階段を登った先の山頂から名古屋駅前のビル群が見えました。
定光寺駅のすぐ近くに、昔、千歳楼(ちとせろう)という大きな老舗旅館があったことを思い出しました。ところが辺りを見渡してもそれらしい建物がありません。もともとこの辺りは2,3件しか旅館が無かったはずなので、あればすぐわかるはずです。
確かめられず、すっきりしない気持ちのまま帰ろうとすると、川沿いに荒れ果てた大きなビルがあるのに気が付きました。まさかと思いながら見ると、わずかに「千歳楼」と書いた曲がりくねった小さな看板が垂れ下がっています。川沿いの部屋に面したガラスというガラスは全部壊れ、一部燃えたような跡もあります。
廃屋になり残骸を晒したままです。昔、隆盛を極めていたところがこんな風に荒廃してしまったのかと淋しい気持ちになりました。帰途、美しい紅葉よりもこの千歳楼のことが心に残りました。
家に帰り事情を調べてみると、経営者が出奔し行方しれずになり、2003年ごろからこの無残な姿のまま放置されているとのことでした。時代の変遷を思い知らされました。
そして、もうひとつ印象的だったのが定光寺駅です。普段は無人駅で駅員さんはいないようですが、このイベント期間中のみ、他の駅から駅員さんが大勢応援にきていました。
帰りの切符を買おうと駅員さんに尋ねると「降車した駅で“定光寺から乗った”と言って精算してください」とのこと。
乗車客はホームにあふれんばかりの数です。後でわかりましたが、この日のトンネル見学者は6119人だったそうです。
これらの人達が皆、降車駅で自動改札では無く、駅員さんと言葉のやり取りが必要な“アナログ”の切符の精算をするわけです。そう言えば、昔は皆そういうやり方でした。
千歳楼のこと、切符の精算のこと、淋しさと懐かしさの交錯する切ない時間を過ごしました。