最近のご相談に「お子さんを歯科に慣らしてから治療しましょう、と言われ、通い続けたのですが、いっこうに治療してもらえませんでした、診てもらえますか?」というものが多いので、思い切って言います。
歯科にはそれぞれの考え方があるとは思います。けれどもあまりにも多いのです、そういうご相談が・・・。
慣らす、のは治療ではありません。診療台に載ってるだけです。
ふーーー。
言っちゃった・・・。
小児歯科、というのはお子さんを泣かせないで治療するためにあるのではありません。小児特有の歯の成長、精神発達を考慮しながら治療ができる場所なのです。
私は学術畑を長く歩いてきた歯科医ではありません。そういうと何もできないみたいに思われますが、学術=研究は、未来の診療のためにあると思います。
私は臨床=現場で、「教科書ばかりでなくむしろ多くの患者さん、すなわちヒトと向き合ってきた」…と言うとわかって頂けるでしょうか。
ご家族そろって歯の面倒を診させて頂いているので、小児歯科のみでなく、表に掲げているのは歯科・小児歯科・矯正歯科の標榜です。
その小児歯科、というのは「小児もついでに診ますよ」というものではありません。
小児歯科と看板に書いているだけの重い責任を抱きやってきました。
”患児さん”ときちんと向き合ってきた、と言えます。
そして小児歯科的に言うならば、乳歯の虫歯、乳歯から永久歯への生え変わりのタイミング、永久歯が生えそろうまでの歯の健康を考えてきました。
自身も三人の子供の母親ですのでその経験も踏まえ、小児、つまり子供とはどういう言動をする時期なのか、来られている母と子の対話や関係性、お母さん方の苦悩・・・なども、人知れず考慮して参りました。
話を元に戻しますが・・・
小児歯科、というのは「子供さんが泣かずに楽しく通院できる場所」ではありません。
そうあっていたいという願いはあります。歯科、というだけでお子さんには(大人にも)コワイイメージですからね。
しかし、シンプルに考えて下さい、診療所なのです。
小児歯科は、子供さんの歯を治す病院、です。
泣かせたくない、という思いはわかります。でも、例えば骨折したお子さんを”慣らしてから”治療とかしませんよね、転んで頭を切ってしまい傷口が開いたお子さんを”慣らしてから”縫合(縫うこと)はしません・・・。
必要なことは、泣かせないことではなく、”処置”なのです。
もちろん当院でも、慢性の虫歯で今すぐ処置が必要でない場合は、お子さんが怖がることがないように、装置や環境、通院に慣れるよう努めています。
しかし、10回も20回も通院し、治療しないで慣らすだけ、などはあり得ません。
そういうことでは虫歯がひどく進行してしまいます。
処置すべき時には処置を早急に行うことが、歯の原型(かたち)を守ることなのです。
また、はじめから泣いているお子さんも多く見られますが、イヤで泣いて拒否していて、親御さんもなだめられないものを、私達スタッフがなだめられるものでは到底ありません。 むしろ思うのは、泣かせないでご機嫌をとり診療をしないことは、子供さんのためなのか? という疑問です。 私達は歯科医療をきちんと行うことが私達の責務です。 きちんと処置できてご飯がおいしく食べれるようになり、そしてすくすくと成長できることが子供さんのためではないでしょうか、本質を考える必要があります。