&1正常な老化現象の代表格である「物忘れ」の症状が起きてくるメカニズム
(1) 二階の部屋に用事があって階段を上っていく途中、雑誌が階段に置き忘れられているのを見つけて、階段下の書籍戸棚に片付ける。そして、階段を上っていこうとした時、自分が何をしに二階の部屋に行こうとしていたのかが分からないのです。とっさには、思い出せない(想起できない)のです。
(2) 今日の主役、私Kinuko は、Tadが大好きな、フランスは「ブルゴーニュの郷土料理」、“ブッフ・ブルギニオン”をつくって、一緒に赤ワインを楽しもうと、夕御飯の支度をしていて、冷蔵庫を開けた時のことなのです。何を取ろうとしていたのかが分からないのです。思い出せないのです。
(3) コミュニティーセンターで、別荘地の清掃管理についての会合があったのです。会議の重要な議題となるテーマや問題点とか提案内容とかが詳細に書かれたメモが送られてきていたので、忘れないようにと、わざわざ玄関の下駄箱の上に昨晩置いておいたのです。コミ・センに着いたら、持ってくるのを忘れていたことに気づいたのです。
(4)「物忘れは、ボケの始まり」と、格言として昔から言われてきたことや、米国精神医学会が定める「アルツハイマー型認知症」の診断基準であった「DSM-Ⅳ」(現在は、改定されて「DSM-Ⅴ」となり診断基準が変更されている)の「第一の要件」として、『記憶の障害』の確認が規定上要求されていること、或いは、「MCI(軽度認知障害)」という因果関係の確認がないままの憶測を根拠とする学説等の主張とも相まって、「物忘れ」の症状が日常的に増えてきたり、症状が次第に重いものになってきたりすると、「アルツハイマー型認知症」が始まったのではないかと、皆さんは不安を覚えてしまうようなのです。
(5) そうした「物忘れの症状」の発現に対して皆さんが不安を覚えるのは、認知症の専門家とされる人達(学者や研究者や精神科医達)の誰一人として、「アルツハイマー型認知症」の発病原因と発病のメカニズムを突き止めることができていないこと及び「アルツハイマー型認知症」及び「軽度認知障害」等の診断基準自体が「外観的な症状」を基本的なベースにしていて、「脳の機能面」、就中、『前頭葉を含む脳全体の機能レベル』に厳密にリンクした症状という心に欠けていて、或る意味で、「群盲象を撫でる」のに似た状況があるからだと言っても過言ではないでしょう。
(6) ところで、「忘れる」という症状は、脳の機能レベルのアウトプット、もう少し正確に言うと、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」(前頭前野の穹窿部に局在する「複合機能体」のことを言うものとする。以下、同じ)の三本柱の機能である、「意欲、注意の集中力及び注意の分配力」(二段階方式が命名)の機能の『加齢による正常な衰え』を含む、脳の機能レベルのアウトプットなのです。
(7) アルツハイマーガタ認知症の発病者でない人達に起きてくる、所謂、加齢に起因しての「老化の物忘れ」は、「軽度認知症」(小ボケ)のレベルであれ、「中等度認知症」(中ボケ)のレベルであれ、或いは「重度認知症」(大ボケ)のレベルであれ、「アルツハイマー型認知症」を発病している人達の『物忘れの症状』(権威が憶測だけで主張している「記憶の障害」ではなくて、『前頭葉の三本柱の機能』の廃用性の加速度的で異常な機能低下の進行に起因したものであることに留意する)と比較したとき、「脳の機能レベル」という視点/基準からの『根本的な相違がある』のです。
(8) 認知症の専門家とされる人達は、「脳の機能レベル」という視点、特に、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」の機能とその機能レベルという視点/或いは判定のための手技が欠けているが為に、単なる「加齢現象」(正常な老化現象)としての「物忘れの症状」と「アルツハイマー型認知症」の発病者に確認される「異常な物忘れの症状」とを、「症状の程度と態様の差」くらいにしか考えていないのです。症状を発現させている根源である『前頭葉の機能レベル』の精緻な判定に関わる『脳の働きという物差し』を使わないのです(使うとしても、左脳と右脳の機能レベルの判定用のMMSE又は、長谷川式程度なのです)。
(9) 最初に私のケースとして取り上げた3つの例に見られるような症状は、所謂、加齢現象としての「正常な物忘れ」の症状であって、高齢者の仲間入りをされている皆さんであれば、誰でも日常茶飯事のことなのです。「アルツハイマー型認知症」を患っていなくても、言い換えると、「前頭葉」を含む脳全体の機能が「正常なレベル」にあっても、誰にでもよく起きてくる現象なのです。
(10)「アルツハイマー型認知症」を発病した人にみられる重度の物忘れの症状(「アルツハイマー型認知症」の症状としての『前頭葉』の機能障害に起因した「記憶の障害」の症状)と単なる「老化現象としての物忘れの症状」とを区別する(客観的に見極める)第一の要件は、「前頭葉」の機能が異常なレベルにあるか(この場合は、アルツハイマー型認知症としての症状)、それとも正常なレベルにあるか(この場合は、加齢に起因した正常な老化現象としての症状)なのです。「前頭葉」の機能が正常なレベルにあって、高度の物忘れの症状(この場合は、「新しい記憶」だけが入っていかない、極めて重度の記銘力障害が原因で、起きて来るタイプ)が認められるのは、「側頭葉性健忘症」という症例自体が極めて稀な病気の場合だけなのです(但し、「側頭葉性健忘症」のことをよく知らない医師が、「アルツハイマー型認知症」と誤診するケースが、世界的にもよくあります。「二段階方式」のような神経心理機能テストで、その人の「前頭葉」の機能レベルを精緻に判定出来れば、容易に両者を鑑別することが出来るのですが。)。
(11) こうした「加齢に起因した正常な物忘れの症状」は、実は、30歳代後半に入ると、誰にでも起きてくる、脳全体の司令塔の役割を担う「前頭葉」機能の正常な老化現象に直接起因する症状なのです。「前頭葉の機能」の基礎的な機能である、「意欲、注意の集中力及び注意の分配力」という「三本柱の機能」のうちの「注意の分配力」の機能の機能レベルが、30歳代に入ると機能低下が始まってきて、加齢とともに機能低下を更に進行させていき、高齢者の入り口の65歳くらいになると機能レベルが最高時の20歳代の頃に比べて半分以下のレベルになってきていることが主たる原因なのです(私たち二段階方式が世界に誇る脳機能データ。、それでも、「正常な機能レベル」と言えるのですが)。
&2 認知症の専門家達には、「前頭葉」の機能という視点が欠けている
(1) そもそも「記憶」という機能には、対象となる情報内容を「記銘」して、「保持」して、「想起」するという三段階の経路があります。思い出せない、つまり、「想起」できないということは、「保持」に原因があるか、「記銘」に原因があるということになります。
脳血管に問題があるような特殊な場合を除いて、一般的には、言い換えると加齢による老化現象としての「物忘れの症状」の場合には、最初の段階である(認知した情報を覚え込む為の「記銘」の機能レベル=記銘度の深さ/浅さ)が「想起」出来るレベルを直接左右する構造になっているとTadは考えるのです。そこのところを、私達が開発した「二段階方式」の手技の活用により蓄積してきた「脳機能データ」に基づいて、概説しておきたいと思います。
(2) その前に、「意識的な世界」を支配している脳の司令塔としての「前頭葉」の働きについて、その概要を説明しておきましょう。
頭のてっぺんの所には、身体を動かす指令を出す「運動の脳」があり、「運動の脳」の左の部分が右半身を動かし、右の部分が左半身を動かしているのです。
脳の後ろの左側部分には、勉強や仕事などをする為の「左脳」があり、左脳は、言葉や計算や論理や場合分けなど「デジタルな情報」を処理しているのです。
脳の後ろの右側部分には、趣味や遊びや人付きあいなどを楽しむ為の「右脳」があり、右脳は、色や形や空間や感情など「アナログな情報」を処理しているのです。
額のところには、脳全体の司令塔の役割を担う「前頭葉」(但し、単体ではなくて、複合機能体であることに留意する)があります。その『前頭葉』には、分析、理解、判断、発想、企画、計画、創意工夫、推理、憶測、忖度やら洞察をしたりする為の様々な働きが詰まっています。更には、自分の置かれている状況を判断し、種々ケースワークした上で、実行テーマの内容や実行の仕方を比較し、選択して、最終的に決定し、実行の決断をする為に必要不可欠な「評価の物差し(意識の首座=自我)」という私たち人間だけに特有な大事な働きがあります。
&3 意識的な思考や行為の世界と「前頭葉」の機能レベルとの関係
(1) 今日のテーマは、無意識ではなくて「意識的(目的的)」な世界のことです。
私達が意識的に何かの「テーマ」を実行しようとするとき、どのような「テーマ」をどのように実行するか、「運動の脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか」(身体を動かす「テーマ」)、「左脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか」(言葉や計算や論理や場合分けなどデジタル情報を処理する「テーマ」)、「右脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか」(色や形や空間認知や感情などアナログ情報を処理する「テーマ」)、全ては司令塔の「前頭葉」が周りの状況を判断して決定し、「左脳、右脳及び運動の脳」に対し必要な指令を出して実行しているのです。
(2) これが、意識的(目的的)な思考や施策や行為や行動、或いは、言動の実行の際に見られる『脳の働き方の全体像』なのです。言い換えれば、運動の脳、左脳、右脳という三頭建ての馬車をあやつる「御者の役割」をしているのが、複合機能体としての『前頭葉』の機能なのです。三頭の馬を十分に働かせられるのも、不十分にしか働かせられないのも、「前頭葉」の働き次第ということなのです。
今日のテーマである、何かを思い出そうとする場合にも、脳の機能或いは機能レベルという視点から言えば、同じメカニズムが働いているのです。
&4 加齢とともに誰でも脳の機能が衰えてくる「正常老化」の性質
(1) 脳全体の司令塔で、置かれている状況を判断したり、何かを思いついたり、計画を立てたり、工夫したり、洞察や推理をしたり、機転を利かせたり、感動したり、抑制を働かせたり、各種の高度な働きを担当している『前頭葉』の機能、中でも、その認知機能を正常な機能レベルの下で発揮する上で、とりわけ重要な「認知度」を左右しているのが、「前頭葉の三本柱」の機能である「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」の働きなのです。ところが、それらの働きには、「加齢と共に老化し衰えていく」という重要なしかし専門家達からは見過ごされている性質があるのです。
(2)「前頭葉」の各種認知機能の発揮度を左右しているこの「三本柱の機能]には、18歳から20歳代半ばまでがピークで、20歳代半ばを過ぎるころから100歳に向かって緩やかではあるが、一直線に衰えていく性質があるのです。
「アルツハイマー型認知症」を発病する人の割合が急に多くなってくる年齢、第二の人生の入り口である「高齢者」の仲間入りをしたばかりの60歳代半ば、ともなると、脳の使い方としての「生活習慣」の如何に関わらず、「前頭葉の三本柱」の機能の働き具合は、ピーク時の18歳から20歳代半ばの頃に比べて、半分以下のレベルにまで衰えてきているのです。70歳代、80歳代、90歳代、100歳代と、年をとればとるほど、「前頭葉の三本柱」の機能の働きが更に衰えていって、正常なレベルを保ちつつもどんどん「低空飛行」になっていくのが特徴なのです。
&5「記銘度」と「想起」の機能(思い出す働き)との関係
(1) 上述したように、 『記憶とは、「記銘」したものを「保持」して、それを「想起」してくる』と言う経路をたどります。「はっきりと記憶している」とか「すっかり忘れてしまった」とかいうことは、どの程度に記銘された情報内容が、どの程度保持されていて、どの程度想起されたのかという、個々の要素の機能レベルが相剰的に影響している(個々の要素が絡み合った複合的な相剰効果による)とTadは考えています。
(2) その中でも、記銘の対象となる対象情報を「記銘」するときの記銘の度合い(「記銘度」)が最も重要だと考えています。海馬に集められた認知の対象となる情報の内容を『記銘』するとき、(記銘度が高いもの)であったなら、その記銘度に応じて「長期」に保存されるし、(記銘度が低いもの)であったなら、その記銘度に応じて「短期」にしか保存されないとTadは考えるのです。
「記銘」する(覚える)ときの「記銘度」が高い(よく記銘される)情報は、よく「保持」され、よく「想起」される(思い出される)ことになると考えるのです。
このことは、「記銘」した5分後に「想起」できる程度をチェックしてみれば、直ぐに分かります。「記銘度」が高い情報ほど、想起することが容易なのです。
更に、よく「記銘」された(「記銘度」が高い)情報は、長期に記憶される(長期に保存され、長期にわたり、よく想起される)のです。
専門家が言うような、(海馬が「選択」して、短期記憶と長期記憶とに区別して記憶している)からなどとは、考えられないのです。
&6 何かに気を取られている(注意が分配されている)ときの「記銘度」
(1) 保持/想起されやすいか否かを左右している「記銘度」は、「記銘」するときの状況(三本柱の働きの度合い)に直接左右されるのです。
記憶の対象となる認知の対象となる情報を記銘する時、「意欲」が強く作用する内容であり、「注意の集中力」が深く/長続きしつつ作用する内容であり、「注意の分配力」(異なる複数のテーマを同時並行して処理する機能のこと/咄嗟の判断と処理にも不可欠の機能)が大きく作用する内容であれば、「記銘度」が高くなるので、長期に保存され、長期にわたって想起しやすく、結果的に、「長期記憶」となるのです。逆の場合は、記銘度が低くなるので、短期にしか保存されず、想起しにくく、結果的に「短期記憶」となるのです。もちろん、繰り返し海馬に送り込まれた同じような内容は、繰り返された回数が多いほど「記銘度」が高くなるので、其の分、より長期に記憶されることになるということなのです。
(2) 更に付け加えると、私たちのデータによれば、14689例の発病患者のMMSEの下位項目中、「想起」の機能が、最も早くに衰えていく項目なのです。
そもそも、「記銘」自体が「意欲」、「注意の集中力」、「注意の分配力」という「前頭葉の三本柱」の機能の働き具合に、直接的に大きな影響を受けるからです。そして、この「三本柱の機能」の各々の機能もまた、上述したように「加齢と共に衰えていく」と言う性質を持っているのです。そのため、年をとるにつれて、「覚える」こと(記銘)自体が難しくなっていき、「思い出す」こと(想起)も難しくなっていくことは、皆さん経験済みのことでしょう。加齢により衰えていくという「三本柱の機能」の性質が、高齢者である皆さんが日常的に体験している「物忘れ」と密接な関係があるということなのです。
&7 高齢者の仲間入りをしてくれば、「物忘れ」なんて日常茶飯事
(1) 私達の日常生活では、特に「高齢者」の仲間入りをした年齢である場合には、尚更のことなのですが、何か「特定のテーマに集中」、「一点に集中」する時間は、きわめて稀というべきでしょう。8月の下旬に、「二段階方式」の実務研修会を開催するので、その準備に追われていたのです。「マニュアル使用の手引き」を印刷して製本する作業を、Kinukoが一人でやっていたのです。
(2) 見かねた友人が、Kinukoと私の二人を昨晩の夕食に招待してくれたのです。メイン・ディッシュはなんと、北海道産の「毛ガニ」ということでした。製本作業に追われているはずのKinukoの脳裏には、「肝心の仕事とは関係のない様々なテーマ」が浮かんでは消えていった筈なのです。
「どんな洋服を着ていこうかしら?」、「メインが毛ガニだから、先週、山形県のK町に講演に行った際買ってきた、こだわりの原酒樽平をおもちしようかしら?」といった具合でした。
(3) このように、「何かのテーマ」を記銘しようとする時、その時の状況の中で、心に浮かんでくる「他のテーマ」(心配事や関心事や恐怖感を覚える事など、その時気になっていること)に注意がそれていたりする(脳の機能面から説明すると、注意の分配力の機能の分配量が、他のテーマに偏って配分されている時)と(この状態は、異なる二つ以上のテーマに対して「注意の分配機能」が働いている状態なのです)、注意の分配力の機能の分配量が少なくなってしまっていた肝心のテーマの「記銘度」が低くなってしまうのです。
年齢が66歳であるあなたのその時の注意の集中力の機能レベルが例えば66だったとしましょう。心に気にかかっている「他のテーマ」に46が配分されていると、「肝心のテーマ」に配分できるのは、20しか残っていないのです。その20で「肝心のテーマ」の内容を記銘するので、その「記銘度」自体が低くなってしまっているのです。「記銘度」が低くなってしまった結果として、「想起」するのが難しくなる(思い出せない)、つまりは「忘れる」ことになるのです。
製本作業に追われていて、時間に間に合わなくなりそうな状況で家を飛び出したKinukoは、案の定こだわりの原酒「樽平」を持参するのを失念していたのでした。(4) これが、「正常な老化の物忘れ」のメカニズムなのです。「前頭葉の3本柱」の機能は、加齢とともに働きが衰えていく性質を持っているので(脳をそれなりに使って機能を活性化させている正常な日常生活を送っている過程でも、緩やかで、ぞじょにではあるが、機能が衰えていくのです)。
「記銘」する時によほどそのことに集中できていないと(他のテーマに、注意がそれていたりすると)、当該内容の「記銘度」自体が低くなってしまい、「想起」することが難しくなるのです(即ち、忘れる)。そのメカニズムのもとで、年をとればとるほど、「物忘れ」が増えてくるのです。それこそが、高齢者であれば誰にでも起きてくる、「正常な老化の物忘れ」の症状なのです。
&8 反省と工夫が効けば、年のせいなのです(「老化現象」としての物忘れ)
(1)「前頭葉」は、自分の置かれている状況を判断し、何(目的となる「テーマ」とその内容)をどのようにするか(実行計画)を組み立てて対応する働きを持った脳全体の司令塔です。「アルツハイマー型認知症」になるのではと不安に悩む時間があるなら、「前頭葉」を活用して、物忘れが頻繁に起きてくることへの対応策を考え出す工夫をすれば良いのです。「物忘れ」が増えてきて、心配になったり、日常に支障が出てきたら、「忘れたらいけない大事なことは、メモする」という生活習慣を身につければ良いだけのことなのです。「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、その「前頭葉の機能」が異常な機能レベルに衰えてきている(機能が、正常に働かないレベル)ことを知って、且つそのことを覚えておいてください。
(2) その「前頭葉」が、正常レベルにあれば、自分の置かれている状況(度々物忘れすることで、支障が起きる)を判断して、そのことを反省したうえで、適切な工夫をする(大事なことはメモをする)ことが出来るはずなのです。これさえ出来るのであれば、物忘れがあっても、「認知症の物忘れ」ではなくて、単なる「老化の物忘れ」にすぎないのです。
&9 脳機能データが語る「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズム
(1) 詳細については、後述しますが、「正常老化の性質」により脳の機能がそもそも老化してきている「高齢者」と呼ばれる年齢のお年寄りが、使われる機会が極端に少ない生活、「生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動もせず、目標もない」、ナイナイ尽くしの単調な生活が継続する日々の中で、「前頭葉」を含む脳の機能が、廃用性の機能低下を加速させていく結果として、異常なレベルに機能低下した「前頭葉」を含む脳の機能レベルのアウトプットそれ自体が、「アルツハイマー型認知症」の症状として発現してくるのに過ぎないのです。
(2) 言い換えると、「アルツハイマー型認知症」は、廃用症候群に属する単なる生活習慣病にすぎないのです。因果関係の立証データを追及することもなく単なる仮説にすぎないアミロイド・ベータやタウ・タンパクや脳の委縮等を追い続けている限り、認知症の専門家或いは権威者達の間では、いつまでたっても「アルツハイマー型認知症は、原因不明で治らないタイプの認知症」の汚名を着せられ続けることになるのです。
(3)「アルツハイマー型認知症」発病の原因は、一部の学者が推測しているようなアミロイド・ベータやタウ・タンパクや脳の委縮ではないのです。
それらの説では、「アルツハイマー型認知症」の発病との間の因果関係についての、医学的なデータ面からの立証が全くなされていないのです。「殺人現場にいたというだけの理由で、その人が真犯人だと主張しているようなもの」なのです。「前頭葉」を含む脳の機能レベルとその直接のアウトプットとしての症状との関係について、私達が開発した「二段階方式」と呼称する神経心理機能テストのテスト結果に基づいた、3万例を超える脳機能データの解析に基づく私達の見解の概要を次に述べておきますので、参考にしてください。あと2~3年もすれば、東日本大震災の被災地の「高齢者」たちの間に起きてくる事象の「疫学的な証明」によって、この私達の見解が「アルツハイマー型認知症」についての世界標準となると確信しているのです。
&10「アルツハイマー型認知症」は、廃用症候群に属する「生活習慣病」
(1) 世間で認知症の専門家達から原因不明と言われている「アルツハイマー型認知症」は、上述したように、「加齢とともに脳の老化が進む」という(発病の「第一の要件」)と「ナイナイ尽くしの単調な生活の継続」という(発病の「第二の要件」)の二つの条件が同時に充足されることによる『相乗効果』によって、廃用性の加速度的な機能低下を起こしてくることにより発病するのです。
(2) 正常な老化の過程とはいえ、加齢による老化により「前頭葉」の機能が低空飛行状態に入ってきている60歳を超えた高齢者と呼ばれる年代の「お年寄り」(年齢が「第一の要件」)が、脳を積極的には使わない生活、生き甲斐や目標もなく、趣味や遊びや人付きあいもなく、運動もしない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を日々続けていると(単調な生活の継続が「第二の要件」)、出番が少ないために使われることが極端に減った「前頭葉」が廃用性の機能低下を起こしてきて、第一の要件と第二の要件とが重なり合うことの相乗効果により、「前頭葉」を含む脳の老化が加速されていくことになるのです。
(3) 廃用性の機能低下により「前頭葉」の働きが加速度的に衰えていくその先に、「アルツハイマー型認知症」(晩発型アルツハイマー病とも言います)の発病が待っているのです。その場合、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」が最初に異常なレベルに衰えていき、次いで、左脳、右脳、運動の脳の順番に異常なレベルに衰えていくのが、「アルツハイマー型認知症」の特徴なのです。
更には、「アルツハイマー型認知症」の場合は、MMSEテストで判定される「11の下位項目」(「左脳及び右脳」の機能に関する項目)の衰え方にも、厳密な規則性があることが重要な特徴なのです(衰えていく脳機能について、明確な順番とそのパターンとが確認されることが、「アルツハイマー型認知症」の特徴)。
(4) 脳全体の司令塔で、置かれている状況を判断したり、何かを思いついたり、計画を立てたり、工夫したり、洞察や推理をしたり、機転を利かせたり、各種の高度な働きを担当しているのが「前頭葉」なのです。中でも、意識的に何かの「テーマ」を実行をする場面で、「前頭葉」の各種の機能を発揮する上で不可欠で基礎的な働きをする「認知機能」を正常に発揮するには、一定レベル以上の「認知度」が確保されていることが必要となります。
(5) 脳の機能についての専門家と世間で言われている人達でさえ未だ気づいていないのですが、その「認知度」を左右する機能の三本柱が、「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」の働きなのです(「前頭葉」の各種機能の発揮度に関わる「機能発揮上の二重構造」の問題)。
認知症の大多数90%以上を占めていて、専門家達からは原因も分からないし治らないし、予防することもできないと言われている「アルツハイマー型認知症」の正体は、加齢による脳の老化という性質(正常老化の性質)が基本に存在するのです。「加齢による脳の老化」という問題が基本にあるからこそ、「アルツハイマー型認知症」は、若者には関係なくて(若年性アルツハイマー型認知症は、側頭葉性健忘症の誤診に因る架空の病気なのであり)、仕事とは無縁の日々の暮らし方となる、『第二の人生』を生きる「60歳代以降のお年寄りだけが発病の対象になる(老年発症が特徴)」のです。
&11 「前頭葉」の諸機能の発揮度と「二重構造」との関係
(1)意識的に何かの「テーマ」を実行する場面では(例えば、外国に単身赴任している夫が、1週間の帰国で、帰省してくる場合の夫婦の過ごし方を計画するというテーマを考えてみてください)、自発性、観察、分析、考察、洞察、推理、理解、興味、発想、企画、計画、創意、工夫、予見、シミュレーション、修正、整理、機転、抑制、忍耐、感動及び判断等、「前頭葉」を構成している各種の高度な機能を発揮する上で不可欠の働きをする「認知機能」を正常に発揮するに際して、一定レベル以上での「認知度」が確保されていることが必要となるのです。
認知度が低いと、「前頭葉」の各種機能自体が必要なレベルで発揮されなくなるからです。その「認知度」の高さ或いは低さを左右しているのが、意欲、注意の集中力と注意の分配力という「三本柱」の機能なのです(「認知度」と「発揮度」とがともに、「三本柱」の機能レベルと「リンク」している)。ところが、この「三本柱」の機能自体に、「加齢と共に老化し衰えていく」という重要な性質があることは、前述したとおりなのです。
(2) 生き甲斐となることも、これといった目標となるものもなく、その上、趣味や遊びや人付きあいを楽しむ機会もなく、運動もしない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を送っていると言うことは、脳の機能面から言うと、「前頭葉」の機能の中でも最も基本的で不可欠な機能であり、「認知度」を左右する働きをしている意欲、注意の集中力と注意の分配力という「三本柱」の機能の出番が極端に少ない生活を送っているということになるのです。ナイナイ尽くしの「単調な生活」を日々送っている中で、もともと加齢により機能が衰えていく性質を持っている「三本柱」の働き(その反映としての「前頭葉」の働き)が、膝の筋肉と同じように、廃用性の機能低下を起こしてきて、更には加速度的に働きが衰えていくのです。
(3)「三本柱」の働きが、廃用性の加速度的な機能低下を起こしていくということは同時に、自発性、観察、分析、考察、洞察、推理、理解、興味、発想、企画、計画、創意、工夫、予見、シミュレーション、修正、整理、機転、抑制、感動及び判断といった「前頭葉」全体の機能の構成要素としての各種の高度な機能の「発揮度」も同時に加速度的に低下していくということなのです(上述した『二重構造」の仕組み』の問題)。「前頭葉」の各種の機能が異常なレベルに低下した下でそのアウトプット自体が、「アルツハイマー型認知症」の症状として発現してくるのです。
&12 「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である(「小ボケ」)の症状
(1)「アルツハイマー型認知症」を発病すると、その最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、左脳、右脳及び運動の脳は未だ正常な機能レベルながら司令塔の「前頭葉」の働きだけが異常なレベルに衰えた「脳全体の機能レベル」のアウトプットとしての症状が発現してきます。
(2) 脳全体の司令塔の役割を担う「前頭葉」の基礎的な機能である「三本柱」の機能(意欲、注意集中力及び注意分配力)が異常なレベルに機能低下してきたことにより発現してくる症状(より詳細に説明すると、「三本柱」の機能が異常なレベルに衰えてくることに連動して、「前頭葉」の構成要素としての各種機能の機能発揮度も衰えてくる結果として発現してくる症状)、言い換えると「前頭葉」の機能障害としての認知症の症状について、最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の症状として例示してあるものの中から、いくつか取り上げて、症状を具体的に説明してみることにしましょう。
(3) 高齢者であればだれでも、以下のような症状が確認されるわけではないのです。このような症状が確認される人には必ず、ナイナイ尽くしの「単調な生活」の継続という「生活習慣」が確認されるものなのです。(但し、下記項目中4つ以上の項目に該当するときは、「二段階方式」のような神経心理機能テストで、「前頭葉」の機能レベルをきちんと調べてもらったほうがいいでしょう。CTやMRIでは、測ることができないので念のため注記しておきます)。
□ 複数のことに注意が分配できなくて、3つの用事が同時にさばけない(「注意分配力」の機能の機能障害としての症状)
□ 機転がきかなくて、状況に応じた創意工夫ができない(「機転及び創意工夫」の機能の機能障害としての症状)
□ 発想が乏しくて、画一的な行動が目立つ(「発想」の機能の機能障害としての症状)
□ 何事をするにも億劫で面倒がり、何かをやってみようという意欲が見られない(「意欲」の機能の機能障害としての症状)
□ 一日や一週間の計画が自分で立てられず、なにも思いつかない様子(「計画」の機能の機能障害としての症状)
□ これまでなら感動していたことに対して感動しない(「感動」の機能の機能障害としての症状)
□ ぼんやりしていることが多く、自分から何もしないが指示されるとできる(「自発性」の機能の機能障害としての症状)
□ 根気が続かず中途半端なことを繰り返し、やりかけの家事が目立つ(「注意集中力」の機能の機能障害としての症状)
注)本著作物(このブログA-91に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。
エイジングライフ研究所のHP(ここを「クリック」してください)
脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)
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