■「由太郎ノート-早咲将棋に学ぶ！NO.5」（第45回しんぶん赤旗全国将棋大会大分県大会観戦記）

★「由太郎ノート－早咲将棋に学ぶ！ＮＯ．５」
　（第４５回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会観戦記＜Ａ級準決勝＞：
　　平成１９年９月１６日）

［観戦記：山　由太郎］

※筆者については予選リーグ１回戦の観戦記で詳しく紹介しています。

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＜準決勝＞
▲稲積良平
△早咲誠和

＝第１譜＝

▲７六歩　　△３四歩　　 ▲６六歩　　△１四歩　　 ▲１六歩　　△３五歩　　 ▲５八金右　△３二飛　　 ▲６七金　　△３六歩　　 ▲同　歩　　△同　飛　　 ▲４八銀　　△３四飛（第１図） ▲３七歩　　△６二玉　　 ▲６八玉　　△７二玉　　 ▲７八玉　　△８二玉　　 ▲７七角　　△７二銀　　 ▲８八玉（第２図）

いよいよ、準決勝。対戦相手は稲積 良平さん。稲積さんとは大分に居たこ ろに対戦があるので、その当時から将 棋が変わっていないとすると、居飛車 党本格派で持久戦調のじっくりとした 将棋を好む棋風です。 　さて、対局開始です。▲７六歩△３ 四歩▲６六歩。▲６六歩にらしさが現 れています。「じっくりとした将棋を 指しましょう」という意味でしょう。 △１四歩。この端歩の意味は、僕はま だわかる領域には来てないです。ごま かして言うと間合いでしょうか。 　▲１六歩。突かれたら突くという感 じでしょうか。△３五歩▲５八金右△ ３二飛で戦型決定です。早咲さんの三 間飛車ＶＳ稲積さんの居飛車の戦いと なりました。 　▲６七金△３六歩▲同歩△同飛、相 居飛車の戦いでは「飛車先の歩交換は ３つの得あり」といいますが、振り飛 車の場合は意味合いが異なります。と いうのも、振り飛車の場合は飛車先の 歩は大事な位でもあるからです。僕も 振り飛車を指しますが、３つの得と位 の天秤がいつもあやふやでよくわかっ ていません。ここらへんは、暗記する のではなく、それこそ棋譜並べや強い 人の将棋を見て感覚を掴むものだとは 思っていますが。ま～　今回の場合だ と「こういう時は交換していいんだ な」と僕の頭の中に残ったという感じ です。これから、自分で指すことに よって成功と失敗を繰り返して自分の ものにしていくといった感じです。 　▲４八銀△３四飛▲３七歩△６二玉 ▲６八玉△７二玉▲７八玉△８二玉▲ ７七角△７二銀▲８八玉。稲積さんは 自分の力を発揮させるためにじっくり とした将棋を目指し、玉を深く囲いま す。しかし、重大な振り飛車からの筋 を見落としていました。 　早咲さんはずっとタイミングを見計 らっていたのです。僕も指されるまで 気がつきませんでした。

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＝第２譜＝

△３六歩　　 ▲同　歩　　△５五角　　 ▲１八飛　　△２四飛　　 ▲５六歩　　△１九角成　 ▲同　飛　　△２七飛成　 ▲７八銀　　△１八香　　 ▲６五歩　　△３三歩　　 ▲３七桂　　△１九香成（第３図）

△３六歩▲同歩△５五角。指される と厳しい順です。この筋は稲積さんが ▲５六歩を突かなかったのでずっと存 在していたことになりますが、早咲さ んはタイミングを待っていたのです。 なぜかというと「取り返しのつかない 局面を作る」ためです。自分しか気づ いていな筋があるとき、すぐに決行し たくなりますが、決行したあとに相手 が「うっ」と感じた後が問題です。 　「自分の方が勉強不足だったな、だ けど自分の玉は固い、相手の玉は薄 い、まだ、なんとかなりそうだから手 を考えよう」このように反省させるだ けではあまり意味がないんです。最悪 の場合、相手が追い詰められたことに より１２０％の実力を発揮すること だって考えられますから。 　本譜の場合だと、「うっ」のあと は、「………ヤバイ、受けがない…… しかも相手も固い………ダメか…… …」と感じるはずです。こういう心境 だと、早めに諦めてしまい、手が単調 になってすぐに終わってしまう場合が あるのです。気持ちの持ちようという のは手の見え方にもかなり影響しま す。 　予選一回戦の観戦記で書いた、実戦 詰め将棋を次の一手で出されるか、詰 め将棋として出されるかということで す。対局というのは将棋で勝たなくて もいいんです、勝負で勝てばＯＫなの で、相手の気持ちを折るというのは非 常に重要なことです。 　▲１八飛△２四飛▲５六歩△１九角 成▲同飛△２七飛成▲７八銀△１八香 ▲６五歩△３三歩▲３七桂△１九香 成。▲１八飛と逃げれば、ここまでは 進むような感じです。 　さて、稲積さんの心境ですが、どう やらまだ心は折れていないようです。 筋をうっかりしたことに反省はしたの でしょうが、勝つ気満々といった感じ です。どこで、それが感じ取れるかと いうと３七桂ですね。遊んでいる駒を 使い、被害を最小限にする手です。実 際、駒割は稲積さんの香損。まだまだ 頑張れそうな感じです。準決勝まで勝 ちあがってきた人間ですから、将棋だ けでなく心も強いのです。また、心が 折れていると▲３七桂のところで、▲ １八同飛などと指してしまい、以下駒 をボロボロ取られて自然死ということ になってしまいます。

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＝第３譜＝

▲４五桂　　△４二銀　　 ▲２二歩　　△１三桂　　 ▲２一歩成　△３六竜　　 ▲３三桂成　△同　銀　　 ▲１一と　　△４四銀　　 ▲２二角　　△２五桂　　 ▲１三角成　△１八飛　　 ▲５九銀　　△３七桂成（第４図）

▲４五桂△４二銀▲２二歩と稲積さ んは、必死の手作りです。△１三桂は 相手の力を利用して手を作る早咲さん お得意のパターンです。しかも、これ 気が付きませんか？△１四歩は４手目 に指した手です。まさか４手目からこ の局面を想定していたわけではないで しょうが、仕掛けるときにはこの桂馬 の活用は見えているはずです。早咲さ んの将棋を見ると、すごさももちろん 感じますが、こういうふうに恐怖に似 た感情も持ってしまいます。 　▲２一歩成△３六竜▲３三桂成△同 銀▲１一と△４四銀、稲積さんも勝負 を諦めず狙っています。△４四銀はそ の狙いを避けた手。▲７七角の利きか らの銀取りを防ぎつつ、▲３七香の田 楽刺しを避けた手です。 　▲２二角△２五桂▲１三角成△１八 飛▲５九銀△３七桂成。自陣にいた２ 一の桂馬がいつの間にか３七まで。し かも稲積さんの守りの銀とも交換でき そうです。さ～いよいよラストスパー トです。

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＝第４譜＝

▲２三馬　　△５二金左　 ▲１四馬　　△１六竜　　 ▲４一馬　　△４八成桂　 ▲同　銀　　△同飛成　　 ▲６六角　　△４九竜　　 ▲８六香　　△１八竜　　 ▲３八歩　　△同竜寄　　 ▲５二馬　　△６九竜　　 まで、７０手で早咲さん勝ち

▲２三馬△５二金左▲１四馬△１六 竜▲４一馬△４八成桂▲同銀△同飛 成。ついに、桂馬と銀が交換になって しまいました。▲６六角△４九竜▲８ 六香△１八竜▲３八歩△同竜寄▲５二 馬。横からの攻めでは間に合わないと 考えた稲積さんは８六香と縦からの攻 撃も絡めます。 　しかし………△６九竜。この手を見 て稲積さんが投了されました。本局は 早咲さんの機敏な仕掛けから優位にな り、優位をどんどん拡大し勝ちに結び つける技術が勉強になりました。ま た、稲積さんの精神力。これもまた、 勉強になりました。 　僕は相手によって精神が変わったり するのですが、稲積さんを見てるとそ んなようじゃダメなんだなと思いまし た。 　さて、本局に勝った早咲さんは決勝 進出です。

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◆関連リンク
→「由太郎ノート－早咲将棋に学ぶ！ＮＯ．１」（第４５回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会観戦記＜Ａ級予選リーグ１回戦＞：平成１９年９月１６日）
→「由太郎ノート－早咲将棋に学ぶ！ＮＯ．２」（第４５回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会観戦記＜Ａ級予選リーグ２回戦＞：平成１９年９月１６日）
→「由太郎ノート－早咲将棋に学ぶ！ＮＯ．３」（第４５回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会観戦記＜Ａ級予選リーグ３回戦＞：平成１９年９月１６日）
→「由太郎ノート－早咲将棋に学ぶ！ＮＯ．４」（第４５回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会観戦記＜Ａ級準々決勝＞：平成１９年９月１６日）
→「第４５回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会」結果－ＮＯ．１（平成１９年９月１６日：大分市「稙田公民館」）
　・入賞者
　・Ａ級～Ｃ級成績詳細
→「第４５回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会」結果－ＮＯ．２（平成１９年９月１６日：大分市「稙田公民館」）
　・改元大会成績詳細
　・熱戦譜　［Ａ級決勝］▲早咲誠和　対　△泉翔太
　・ミニミニ写真館

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