ぶろぐのおけいこ

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日本で唯一の踏切 ~「歌行燈」に引き寄せられて(6)

2022-06-17 19:37:58 | PiTaPaで歩く

 桑名の予定はほぼ終了。最後にもう一か所見ておきたかったところがあります。近鉄、JRの桑名駅から伊勢方面へ最初の踏切、三岐鉄道北勢線の西桑名駅から阿下喜方面へ最初の踏切が、とても珍しい踏切だというのです。

 

 近鉄名古屋線は線路幅が1435mm、JR関西線は1067mm、三岐鉄道北勢線は762mm。この踏切を渡ると3種類の線路幅が体験できる、日本で唯一の踏切だというのです。だからどうなんだと言われたら返す言葉はないのですが。桑名に行ったら渡ってみないわけにいかない。

 西日に殴られながら現場に行ってみました。JRや近鉄特急が結構頻繁に走る。合間に三岐鉄道の黄色い電車が走る。徒歩か自転車でしか渡れないその踏切はしょっちゅう閉じることになります。よく見ていると、三社の線路をまたぐその踏切はふたつに分かれており、単独の近鉄とJRと三岐鉄道のワンセット。つまり、近鉄電車が通るときはJRや三岐鉄道の踏切は開いている。JRか三岐鉄道の列車が通るときは近鉄の踏切は開いているという具合です。となると、歩行者は踏切を渡り始めて、線路の中州に取り残されることもあるわけで、慣れている地元の人はいいけど、よく知らずに渡っているよそ者は、怖い目に遭うことになります。

 電車を眺めていて気づいたのは、この踏切の南側100mほどのところにも踏切があるということでした。跨線橋の下に確かに踏切がある。だとしたら日本で唯一ではないではないか。行ってみました。確かに三岐鉄道をまたぐ踏切はあるのですが、この踏切を渡っても、三岐鉄道とJRの線路の間にある「中州」に行けるだけで、JR、近鉄を越えることはできないようになっているのでした。近鉄の向こうまで渡りたい歩行者は階段で跨線橋へ上り、歩道を歩くことになります。

 件の珍しい踏切に戻り、東側から西側へ渡ってみました。無事に渡れた。写真を撮って戻ろうとしたら、警報機が鳴り始めました。とっさのことで戻ったものか進んだものかわからず、慌てました。素人さんは、渡る前に十分シミュレーションしておきましょう。

 踏切の名称は会社によって違い、近鉄が益生第4号、JRが桑名駅構内、三岐鉄道が西桑名第2号というそうです。

 ところで、桑名は鉄道会社が集まるところらしく、近鉄名古屋線、JR関西線に加えて養老鉄道養老線もあります。この三線はほぼ同じところに駅があるのですが、三岐鉄道北勢線だけは少し離れていて、駅名は西桑名です。

 ここで疑問が。桑名駅から見て西桑名駅は西にはないのです。西ではなく南東方面になる。検索をけると、同じ疑問をもつ人は多いことがわかります。答は、駅の所在地が大山田村だったから、西桑名駅はもともと大山田駅として開業しました。その後同村は西桑名町に変更になったために、現在の西桑名駅に変更された。今の桑名市は広いエリアになっていますが、もともとの桑名は海沿いの狭いエリアだったということがわかりますね。西桑名は、現在の桑名駅からではなく、もともとの桑名から見て西にあったというわけです。

 さらにわかったのは、大正4年から昭和36年まで、起点は西桑名ではなく、700m先の駅だったということ。駅名は桑名町(のちに桑名京橋と改称)。会社としては、駅を桑名の町中に少しでも近づけたかったのでしょう。そしてモータリゼーションの発達で、国道1号線を渡る踏切がネックになって、廃止されたそうです。

 この会社、社名変更も半端でないようで、北勢鉄道として開業し、北勢電気鉄道、三重交通、三重電気鉄道、近畿日本鉄道を経て、現在は三岐鉄道となっています。


  ここまでの情報を時間軸に並べてみました。

明治28年(1895) 関西鉄道 名古屋-草津間開業

明治42年(1909) 泉鏡花「歌行燈」執筆

大正2年(1913) 六華苑竣工

大正3年(1914) 北勢鉄道 大山田(現在の西桑名)-楚原間開業 

大正4年(1915) 北勢鉄道 大山田(現在の西桑名)-桑名町駅(後の桑名京橋駅)間開業

昭和7年(1932) 参宮国道竣工

昭和8年(1933) 尾張大橋供用開始

昭和9年(1934) 伊勢大橋供用開始

昭和36年(1961) 三重交通 西桑名-桑名京橋間廃業

 

 

 名古屋駅近くの「横井製麺所」から始まった桑名行きです。「歌行燈」に引き寄せられて、桑名という町が友達のように感じられるようになりました。

 これまで知らないということすら気づかなったことがわかるようになる。行ったことのないところを訪ねてみるのは楽しいことですね。

(おしまい)





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