魚崎駅の次は芦屋駅です。前から一度行ってみたかったのがヨドコウ迎賓館。ヨドコウとは物置などを作っているあの淀川製鋼所です。この会社が所有する迎賓館を見学しようと歩きました。
芦屋駅の下を流れているのが芦屋川。この川を北上していけば、2kmくらいで目的の迎賓館に到着するはずです。南から心地よい風が吹いているとはいうものの、やはり日差しは強い。芦屋川の西側は大層な邸宅が多いものだと感心しながら歩いていきます。芦屋川は蘆だか葦だかに覆われている部分も多くて、うっそうとしている雰囲気です。「だから芦屋かぁ」と勝手に納得しています。住吉川よりも川幅も斜度もあるように見えます。やはり地元の人たちが水遊びをしています。水遊びができるということは水質に問題なしということなのでしょうね。
JR神戸線(東海道線)は、この芦屋川の下を潜って走っています。阪急電鉄の芦屋川駅を越えると、歯科医院の前で芦屋川と別れて、斜め右方向に道路(ライト坂というらしい)を登ればすぐにヨドコウ迎賓館です。
今はヨドコウ迎賓館と呼ばれていますが、もともと建築したのは櫻正宗の山邑太左衛門氏。またご登場、財力があったんですね。帝国ホテルの設計のために招聘されていた、あのフランク・ロイド・ライトに、「うちの別邸も設計してぇなぁ」(山邑さん、そんな言い方をしたんでしょう、多分)と依頼したそうです。1924(大正13)年に竣工、もっとも完成時にはライトはすでに帰国していて、二人の日本人の弟子によって完成したという話です。
ライトさん、芸が細かい。採光と風通しのために、天井にいくつも作られている小窓。こういう小窓があること自体、海からの涼しい風が吹くという証拠なんでしょうね。窓の網戸も風を感じさせてくれます。応接室は木と石の内装も、大きな窓からの眺めも素晴らしい。歩いてきた芦屋川が真下に見え、海まで流れています。市内だけでなく、神戸から大阪までずっと見下ろせる場所にあります。きっと夜景が素晴らしいに違いありません。洋館ですが和室もあります。違和感なく作られているのですが、和室に設計したのはライトではなく日本人の弟子の仕事だそうです。木の葉をモチーフにしたという銅版もあちらこちらにあって、これが日光を受けて木漏れ日のように影を作ります。ちゃんと計算してあるんでしょう。大きな2面のバルコニーも開放的で、パノラミックです。
1967(昭和42)年、社長公邸として淀川製鋼所が購入したそうですが、なんとその後独身寮としても使ったというのですから豪勢な話です。1974(昭和49)年に、大正時代以降の建造物として初めて、かつ鉄筋コンクリート建造物としても初めて国の重要文化財に指定されたのだそうです。
迎賓館を出て、芦屋川からその重要文化財を眺めてみます。山の斜面に、樹木に覆われて建っています。建物の一部がチラッと見えるだけの控えめなヨドコウ迎賓館。奥ゆかしさが感じられます。何度も何度も振り返りながら、阪神の芦屋駅へ戻ったのでした。
(つづく)
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