葛飾区の四つ木銀座にある銀河食堂という飲み屋で、常連客たちが彼らそれぞれにまつわる特異なエピソード披露するという小説。
一冊の中で6つのエピソードが語られます。350ページほどのなかに6つのエピソードですから、お話一つあたりのボリュームは大きめといえるでしょう。
作者、さだまさしという人はいったいいつ小説を書いているのかなといつも不思議に思います。コンサートの本数は半端ではないし、そのほかにもマルチに活躍する人、そのさだ氏はいったいいつ執筆活動をするのか。そして、その小説はすべてよく練られていて、頭の中に沸き上がったことを文字化しましたというレベルではありません。リアリティのための取材だって時間とエネルギーが必要なはず。小説家としての才能は認めますが、創作活動の時間はどこにあった?と思うのです。いつも彼の小説を読むたびにそう思う。
6つのエピソードのそれぞれが、多くの局面から構成されていて、そこまで複雑にお話を組み上げる?と感心しながら「銀河食堂」に引きずり込まれるのを感じます。
さだ小説をいくつも読んだはずですが、彼の小説の特徴は、どこを探しても悪人が登場しないこと。彼の楽曲同様に、作家としてのさだ氏の人をみつめるやさしさや温かさが感じられます。それは同時にさだ小説の限界なのかもしれないとも思いますが、平たい言葉でいえば、ハートウォーミングな小説といえるのかもしれません。
噺家が語るような体裁の部分と、いわゆる神の視点(第三人称)で語られる部分とが絶妙に組み合わさって、読者を引きずり込んでいくカタチも私なんぞには新鮮な形です。
タイトルは「銀河鉄道の夜」からの発想でしょうね。
実は、この『銀河食堂』、ブックオフで初めて見つけました。別の本を探しに行ったのですが、一緒に買ってきてしまいました。買って損はさせない一冊でした。
(ストーリーを書かずに済んだ!ふぅっ)
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