翌日。京都に帰るために、富山を昼過ぎに出ることになります。
京都-富山をサンダーバードで走るなら約3時間です。普通列車しか乗れない青春18きっぷで移動すると、うまく接続できて約6時間。時間は誰にとっても平等といいながら、3時間を料金で買うこともできるというわけです。
北陸本線は大動脈です。ロングレールの上を特急電車が疾走していきます。駅名すら読めないような小さな駅でも長い長いホームがあって、かつての長大な客車列車が走っていた頃の名残と思われます。その長いホームに泊まる普通列車は2両とか3両のコンパクトな電車です。新型の電車がほどよい加速減速を繰り返してクイックリーに進んでいきます。乗客はそんなに多くはないものの、車両が短いぶんだけ乗車率が上がって、座れない人もたくさんいます。地方のローカル線はガラガラなんて思うのはもはや時代遅れの認識なのかも知れませんね。
米どころです。沿線はほとんどが田んぼです。野菜畑はほとんど見当たりません。区画整理されて広く大きな田んぼが続きます。たいがいこの時期になれば、稲より頭を伸ばしている稗が見えたりするものですが、この辺りの田んぼは手入れが行き届いているのか、そんな田んぼはほとんど見えません。
青空と白い雲と、稲の瑞々しい緑。日本人の心にある原風景とはこういうものかと思います。そんな景色の中を短い普通電車は軽快に走っていきます。
金沢から乗った2両の電車では座れなかったので、運転席のすぐ後ろにしがみついていました。運転席の右手前方には運転手用の時刻表が掲げられていて、運転中何度も運転手が指差し確認をしています。この時刻表は15秒刻みで書かれていています。計器板の中央には運転手さんの懐中時計がはめ込まれています。当然のことでしょうが、運転手さんは秒針まで読み取って、時刻表に違うことなく、発車させています。こんな仕事、私には到底無理だなと思いました。遅刻ダメ、寝坊ダメ。ポカ休ダメ(ここまでは私も滅多にしませんが)。時間に忠実に。おしゃべりダメ。うたた寝だめ。何より何百人もの命を一度に預かる仕事。こういう律儀な仕事は私には無理だなと思わされたのでした。
その運転手氏の話題をひとつ。運転席の後ろにしがみついている私の横に、パパに抱かれた男の子がやってきました。2歳くらいでしょうか。「うんてんちゅさんを見る」パパにそう言っているのが聞こえます。子どもは電車やクルマが大好きですものね。もちろんその声は運転手氏には聞こえないはず。
ある駅でその親子は下車したのですが、ホーム上、運転席の後方から、出発しようとする電車に手を振っているのが見えたのです。パパの腕の中で小さい手を振っています。やがて発車。電車が動き出すと、この運転手氏、一瞬窓から子どものほうを向いて左手を振ったのでした。ほんの一瞬のことで、あとは何もなかったかのように前方を指差し、運転に集中。運転手氏、なかなかやるなと思ったのでした。
列車の乗り継ぎもうまくできていて、おかげで18組さんもロスなく移動できます。とてもありがたいことですが、逆に効率がよすぎて、駅前をブラブラしてみるとか、駅そばを食すということができにくいということでもあります。下手をすると乗り継ぎになる駅でもトイレに行けない(その代わりか、車内にトイレが設置されている)場合もあります。
駅のホームでそばを食べたいと思っていました。昨日のことですが、敦賀、福井両駅のホームには今庄そばという屋号のそば屋が、富山駅では立山そばという屋号がありましたが、入ってみる時間の余裕がありませんでした。富山駅では改札口を出て、コンビニの向こうにホームと同じ立山そばがありました。期間限定という白エビそばを食べました。カマボコの立山という文字がかわいいでしょ。
さて、青春18きっぷ。5日分のうち、これで3日分を消化しました。残り2日分。有効期限は9月10日までです。次はどこへ行きましょうか。
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