「北の山・じろう」日記

内容は主に時事問題。時々株式投資関係の記事も交じります。

メデイアの情報のいい加減さと不正確さ<ウクライナ紛争2023年8月

2023-08-20 12:09:48 | 日本の政治経済

ウクライナ軍、ザポリージャ戦線に精鋭部隊投入か…「チャレンジャー2」戦闘車両装備
2023/08/18 23:05
https://www.yomiuri.co.jp/world/20230818-OYT1T50238/

この記事に限らずよく見ます。
どうしてかと言うと、どのメデイアにも戦争専門の記者はいません。だから主にウクライナや西側各国の軍関係の広報を垂れ流します。ところが場所さえ理解していない場合があります。ウクライナ軍の広報は、二つの戦域について情報を出します。聞いている取材者は、良く分からないからそれをごちゃまぜにして報道する例があります。だから読む方は、猶更分かりません。

二つ目は地名を間違える、方面を間違えるケースです。そもそもどの方面で、どのような戦闘が行われているかを理解していないケースです。上と似ていますが、時には全然無関係な場所が出てくるケースです。

三番目は、この記事の例です。ほぼ何も分からずに書いているので噂話のような内容になります。

「米国防総省は大規模兵力を一つの戦線に集中させるよう勧告したが、ウクライナ軍は戦線の絞り込みをせず、三つの戦線に分散する戦術を採用したという。・・・メリトポリの近接都市の奪還さえ難しい。」

こう書くと、まるでアメリカ軍の勧告する戦術をウクライナ軍が採用しなかったので、攻撃が失敗して非常に遅れているように聞こえませんか?
ほぼ、嘘記事です。

第1に、アメリカ軍が作戦計画をウクライナ軍に勧告することはありません。ウクライナ軍が作戦計画を事前に相談してアドバイスを求めることはあります。アメリカ軍が作戦計画を勧告することはあり得ません。

第2に、ウクライナ軍が現在実行している軍事行動は本格的な作戦の前に行われる「形成作戦」と呼ばれる形態のものです。まだ準備段階にあり本格的な作戦計画をどのように実行するかを調査している段階にすぎません。だから戦線を広くしてロシア軍の弱い部分を調べている段階です。そのため、戦線が広く複数あるのは当然です。戦線の全域を調べているからです。

第3に、アメリカ軍やNATOが想定していたのは、例えばイラク戦争のような戦場を想定した計画です。そしてその際航空優勢を前提にして計画されています。広い開けた地形での遭遇戦または野戦を想定したものです。主に机上の作戦計画であり、実際にその作戦計画が実戦で行われたことは、いまだありません。

ウクライナの戦場で行われている戦闘は、第1次世界大戦型の塹壕戦です。全く戦闘の性質が違っていてアメリカ軍の作戦を採用することは不可能です。そして航空優勢もありません。

従って、ウクライナ軍はロシア軍の強力な防御網と地雷原を進むための方法を新しく考えなければ、なりません。

その時、無謀な人海戦術の攻撃をするとどうなるか?
冬のロシア軍の大攻勢と同じ結果が生まれます。膨大な人的、物的損失を出してロシア軍は後退するしかありませんでした。ウクライナ軍は、バフムト以外の戦線では全く後退せず防御陣地を守り切りました。

第4。従ってロシア軍が強力な地雷の海と塹壕を掘りめぐらして防御網を構築してウクライナ軍の攻撃を待ち構えている以上、無理な攻撃は出来ません。すれば損害が出て増えるだけです。

1メートル四方に対戦車地雷が4個埋められているという誰も過去に見たこともないような地雷の海が広く深く構築され、そこに塹壕と砲撃陣地を組み合わせた難攻不落ともいえる防御網が、三層に形成されています。普通に攻めるのは、無理なことは軍事の素人にも理解できます。

ウクライナ軍の進撃速度が極端に遅いのはそのためです。地雷原付近での安全を確保したうえで工兵部隊が手作業で地雷を除去しないと戦車や歩兵戦闘車などの重戦闘用車両の通行は、出来ません。こう考えると1日、せいぜい数十メートルしか進めません。それが進撃速度の遅い理由であり、作戦計画とは無関係です。

このような事前知識を持てば、記事に書かれていることは、嘘か無意味かのどちらかである事が分かると思います。海外のメデイアにも同じ事が言えます。やはりもっと勉強して知識を集積したうえで記事を書かないと、不正確であるか内容的に意味がないか間違えた記事を書いてしまうことになります。

そんな記事を垂れ流しても無意味であり、時には有害ですらあります。私が、こうして書けるのは去年の3月ごろからウクライナ紛争のニュースを読み、周辺知識を調べることを積み重ねた結果です。だから戦争の素人記者よりは余程マシな記事を書くことが出来ます。

きちんとした記事を書こうと思うなら、過去の膨大なニュースを読み、関連知識を調べなければなりません。そうできないなら、いい加減に脚色せず広報を正確に全部伝える方が、余程正確だと思います。広報の切り貼りと捏造ともいえる適当な付け加えは、本当に情報を歪めてしまうことをマスメデイアは、理解してほしいと思います。

※これはウクライナ紛争関連だけでなく、他のすべてに言えることです。



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