ウクライナ軍のクルスク侵攻作戦は、致命的な大失敗でした。クルスク方面を少々荒らそうともロシア軍は、大した痛くありません。
この無理な作戦のためにドネツク戦線の各戦場から精強の機甲旅団(攻撃力の強い部隊)を引き抜きてクルスク侵攻作戦に転用しました。
これでドネツク戦線のウクライナ軍は、単に弱体化しただけではありません。
まずウクライナ軍は、予備兵力が枯渇しました。
次に各戦場で機会を見てロシア軍に反撃する手段を失いました。ロシア軍が攻めてきた場合、ひたすら守るだけで反撃の手段がありません。その上、増援部隊が来る見込みがなければ、撤退も早くなります。これまでのようにその戦場を死守するような激しい戦い方は、しなくなると思います。
それがはっきり出たのが、ポクロウシクPokrovsk戦線です。もう、どうにもなりません。
最近、ロシア軍が活発に攻撃を始めたのが南部ドネツク戦線のヴフレダル方面です。
マリンカMar'inkaからヴフレダルVuhledarにかけてのエリアでロシア軍は、西に進撃しつつあります。
最近攻撃を始めたのがロシア軍が支配するパヴリウカPavlivkaから西のプレチステイフカPrechystivka方向です。
2024.09.4
ロシア軍が前進するドネツク州ヴフレダル方向、急速に状況が悪化
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/russian-troops-advance-towards-vhledar-in-donetsk-region-situation-rapidly-deteriorating/
プレチステイフカPrechystivkaは、ほぼロシア軍が制圧したようです。航空万能論によると8日間で10km進撃していますから、かなり速いスピードです。この方面も補給事情は悪化していると思いますし、部隊が引き抜かれているかもしれません。相当、ウクライナ軍が弱体化しています。
昨日の記事では、ここから北にあるノボウクラインカНовоукраїнкаに激しく砲撃を加えているようです。
ロシア軍は、ここから2方向の攻撃を選べます。
(1)『中風呂敷作戦⇒遠くからウーレダーVuhledarを包囲する』
マリンカMar'inka南のヴォデイアン方向にロシア軍が進撃しています。この動きと呼応してプレチステイフカPrechystivka』にいるロシア軍は、ここから北方向のノボウクラインカНовоукраїнкаを目指して進撃し、2方向から遠巻きにウーレダーVuhleda包囲を目指す作戦です。
(2)『大風呂敷』
これでは、かったるい!と考えた場合は、『大風呂敷』も可能です。
この作戦は、もっと広範囲な包囲を目的にします。
プレチステイフカPrechystivkaにいるロシア軍は、ルートT-0509を西に進撃し西にある拠点のヴェリカ・ノボシルカVelyka Novosilkaを目指して進撃します。
ヴェリカ・ノボシルカVelyka Novosilkaを制圧した後、進撃路をルートT-0518に変え、ここから北上します。
このような進撃が成功するとマリンカMar'inkaの遠い西に出ます。マリンカMar'inkaから大きな東西に長い貯水池の南側を西に進撃するとマリンカMar'inkaから進撃してきた部隊と、プレチステイフカPrechystivkaから西回りで北上してきたロシア軍が合流します。
こうすると南ドネツクのかなり広範囲なエリアを大きく包囲することが出来ます。このエリアにいるウクライナ軍の兵力数とロシア軍の兵力数に大きな差があれば、このような『大風呂敷』も可能です。
どうしてこのような好き勝手な作戦が可能かと言うとウクライナ軍には、増援に送れる予備部隊がほとんどありません。そして各戦場にいた戦闘力のある部隊を引き抜いているため、どの戦場でも反撃が出来ません。
ロシア軍の好き勝手な攻撃が可能だと言うことです。
戦況略図を見ると、プレチステイフカPrechystivkaから西にヴェリカ・ノボシルカVelyka Novosilkaまで進撃し、そこから進撃路を北にとってルートT-0518を北上すると、マリンカMar'inkaから西に来るルートN-15と交差する付近までウクライナ軍の拠点があります。バハテイルBahatyrです。
略図を見るとプレチステイフカPrechystivkaの次に小さな集落のソロタ・ニヴァZolota Nyvaがあって、その次がヴェリカ・ノボシルカVelyka Novosilkaです。
ヴェリカ・ノボシルカVelyka Novosilkaの北の途中には、やはり小集落のロズドルネRozdol'neしかありません。その次が交差点付近にあるバハテイルBahatyrです。
つまりロシア軍の現在地であるプレチステイフカPrechystivkaから西のヴェリカ・ノボシルカVelyka Novosilkaまで行き、そこから次に北のバハテイルBahatyrに行くルートには、小集落が2か所あるだけで、他にウクライナ軍の拠点になりそうなところは見当たりません。
距離は相当長いですが、その間にほとんど抵抗拠点がありませんので比較的簡単にロシア軍は進撃できるのではないか・と思います。
どうもロシア軍の戦闘地域の広がり方を見ると西のヴェリカ・ノボシルカVelyka Novosilkaを目指している気配があります。
(2)『大風呂敷』を計画しているのかもしれません。
そうした方が、広いエリアをまとめて包囲できますから簡単ではあります。
ロシア軍がこのように好き勝手に作戦を選択できるのは、ウクライナの参謀本部がクルスク侵攻作戦を実行したからです。南ドネツクのウクライナ軍は増援部隊も来ませんし移動するロシア軍を見ても攻撃が出来ません。
南ドネツクは、年内に大体のメドが付くのかもしれません。
一気に中部ドネツクと南部ドネツクが崩れ始めたのかもしれません。
ロシア軍の現在地であるプレチステイフカPrechystivkaから西のヴェリカ・ノボシルカVelyka Novosilkaまで突破するのは、それほど難しそうではありません。ここまで突破してしまうと完全にウクライナ軍の防衛ラインの内側に入り込めます。
完全に防衛ラインの内側に突破されると守る方は、守りようがなくなるのはポクロウシクPokrovsk戦線の例を見れば、よく分かります。
ロシア軍が狙っているのは、こっちでしょうね❓
※関連記事目次
「中立の視点で見るウクライナ紛争」の目次⑥
https://blog.goo.ne.jp/kitanoyamajirou/e/e2c67e9b59ec09731a1b86a632f91b27