ミンククジラ
日本が南極海で行っている調査捕鯨について、国際司法裁判所は「調査」ではなく「商業捕鯨」と変わらないとして違法という判定を下しました。私は妥当な判定だと思います。
提訴したオーストラリアを感情論で日本を訴えていると非難する人もいますが、冷静に世界の地図を思い浮かべてもらいたいのです。日本の船が赤道を越えてオーストラリアの裏側の南極海(公海)に行って、捕獲が原則禁止されている鯨を調査という名目で大量(捕獲枠ミンククジラ年間800頭=約6000トン)に捕っているのです。逆のことを考えてみてください。オーストラリアの船が赤道を越えて日本の裏側の日本海(公海)に来て、例えば資源保護のために禁漁にしているカニやエビを調査と称してたくさん捕って、しかもそれを国内で販売していたら、日本人としては強く反感を覚えるはずです。相手の立場に立って考えてみるということも必要です。
日本の伝統である捕鯨文化を理解していないと言う人もいますが、南極海での捕鯨は伝統文化ではありません。日本船が初めて南極海で捕鯨を行ったのは昭和の初めで、本格的に操業を開始したのは戦後になってからです。70年ほどの歴史しかないものを伝統文化とは言えないでしょう。南極海での商業捕鯨は、「まるは」で有名な大洋漁業(現マルハニチロ)などの捕鯨企業の文化にすぎないのです。
それと違って日本の沿岸を回遊する鯨を捕るのは、まさしく伝統文化です。数百年の歴史を持ち、小舟と素手で鯨を仕留める勇敢な漁法、捕った鯨を筋一本も残さず活用しきる見事な文化、誇るべき伝統です。守るべきは、この沿岸捕鯨です。しかし、鯨の全面禁漁が議論された国際捕鯨委員会で、日本は企業の利益を優先して南極海での捕鯨継続に固執し、沿岸捕鯨を認めさせる努力を行いませんでした。結果的に、反捕鯨国に数で敗れて全面禁漁となってしまったのです。その網の目をすり抜ける姑息な「調査という名の商業捕鯨」が否定されるのは、やむを得ません。だいたい野生動物の調査で、対象個体をすべて殺してしまって調査するような手法は、とても考えられません。判決で、調査の意図が感じられないと断じられてしまったのも仕方がないでしょう。
南極海での捕鯨はあきらめるべきです。その代り、日本沿岸での伝統的な捕鯨を(ただし、厳密な数量管理、自然保護の規制のもとで)、国際的に認めさせる努力を行うべきではないでしょうか。
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