福島第一原発に大量に溜まっている「水」を2年後に海に放出するという計画を政府が決めました。
私はこのニュースを聞いた瞬間に、なんてヤバいことするんだと思ったのですが、マスコミの報じ方をみると、「処理してきれいにした水を流すんだから大丈夫」「トリチウムを含む水は外国でも海に流している」という方向に誘導する圧力がかなり優勢なようで、危険だとか言いたてるのはむしろ風評被害を拡大する、反対している中国や韓国を利するとか言われて、自称愛国者のみなさんからの攻撃の対象になりかねない気配です。怖いですね。
でも、「処理したきれいな水」「外国でも流している」というのは本当のことでしょうか。中韓が反対しているからと条件反射で日本は正しいと反応する人たちには何を言ってもむだだと思いますが、風評被害を心配し、被災地の人たちに心を寄せる人ならば、ぜひ冷静に考えてもらいたいと思います。
まず、福島第一原発で発生している大量の水は何かというと、壊れた原子炉から溶け出た核燃料や一緒に溶けた炉内の金属などが混じって核燃料デブリとして底に溜まっているのを冷やした水です。この水は核燃料デブリに直接触れるので、非常に多種類かつ高濃度の放射性物質で汚染されます。これに周囲から流れ込む地下水が混じって量が増えた水をタンクに溜めているわけです。文字通りの汚染水です。メルトダウンした原発は福島にしかないのですから、こんな水は世界中で福島にしかありません。人類がこれまで経験したことのない超汚染水といってもいいでしょう。
この水を処理したら、飲んでも大丈夫なほどきれいな水になるのでしょうか。特別に腹黒い内臓をもつ麻生さんなら飲んでも大丈夫かもしれませんね。
東電や経産省は、これまで、多核種除去装置(ALPS)を使って汚染水を浄化した処理水(取り除くことのできないトリチウムを含む)をタンクに貯蔵していると言ってきました。まるで、いまタンクに溜まっている水は、トリチウム以外はきれいに取り除いた水であるかのような言い方ですが、これはウソなんです。経産省自身が4月13日に「東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の定義を変更しました」(注)という発表を行い、そのなかで「過去に発生した浄化装置の不具合や、汚染水が周辺地域に与える影響を急ぎ低減させるための処理量を優先した浄化処理等が原因で、現在、タンクに貯蔵されている水の約7割には、トリチウム以外にも規制基準値以上の放射性物質が残っています」と言い直したのです。つまり、いまタンクにある水のほとんどは基準値以上の放射性物質(核種)を含んだ不完全処理水であり、これは普通の言い方では汚染水だということです。これをもう一度ALPSで浄化するなどして、「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」(これを「ALPS処理水」と再定義)にして海に放出するとしたのです。なんだ、まだきれいになった処理水じゃなかったんじゃん、とツッコミたいところです。
では、これから本当にきれいにできるのかというと、かなりあやしいと言わざるを得ません。ALPSでは原理的にトリチウムは除去できないのですが、それ以外の放射性物質も、一回はALPSを通したのに取り切れなかったわけです。それをもう一回通したら全部取れるのか保証がありません。本当に取り切れるものならやって見せてよと思うのですが、そんなデータはまだないのです。つまり、これから浄化してきれいな処理水をつくるつもりだけど、ともかく2年後には海に流しはじめちゃうから、よろしく、ということを決めてしまったということです。ひどいですね。
トリチウム以外の放射性物質が取り切れないということは、経産省だって予想しているようです。先の定義変更の発表では「ALPS処理水の処分の際には、2次処理や希釈によって、トリチウムを含む放射性物質に関する規制基準を大幅に下回ることを確認し、安全性を確保することとしています」と言っています。「トリチウムを含む放射性物質」と言っているのだから、トリチウム以外の放射性物質も残っていることを想定しているということですね。「2次処理や希釈によって」と言っているのだから、ALPSを通すだけでなく、「希釈」という手段もつかって規制基準を下回らせるということですね。つまり、多種の放射性物質が取り切れずに残った水を薄めて基準以下にして海に流すということです。薄めて流しても、その分たくさん流せば、海に出る放射性物質の量は変わりません。飲んでも安全という人には、500倍に薄めたコップ一杯の汚染水を500杯飲んでみてもらいたいところです。
トリチウムを含む水は外国の原発でも海に流しているというのはどうでしょうか。
外国や日本でも福島以外の原発で流しているのは、正常運転している原子炉内の核燃料とは厳重に隔離された区域を流れてきた冷却水です。隔離されていてもトリチウムは発生して、これを除去するのは難しいので、基準以下か監視したうえで流しているわけです。そういう冷却水と、核燃料デブリに直接触れた汚染水を一緒にして「外国でも流している」というのはミスリードです。福島第一原発の汚染水は、人類が経験したことのない汚染水なのですから、特別扱いしなければならないものです。
また、トリチウムは基準以下なら安全だというのも、ちょっと乱暴な言い方で、トリチウムだって放射性物質で危険があるのですから、できる限り環境中に放出しない方がいいのは間違いありません。
以上のように、2年後と期限を決めて汚染水を海に流してしまうというのは、やっぱり相当ヤバいことなのです。実際の放出までには時間がありますから、よくよく考えて、世論の力で放出をやめさせるようにしたいものです。
(注)経産省「東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の定義を変更しました」
https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210413001/20210413001.html
勝川先生が言っているようにトリチウム以外の核種が重要な論点です。そして、これも言われているように、漁業関係者や第三者を交えた透明性をもった仕組みが構築されていないのに、2年後には汚染水の海洋放出をはじめると決めてしまったことが問題なのです。
東電は、この時期に、あからさまなテロ対策の不備で柏崎刈羽原発が原子力規制委員会から再稼働を事実上禁じられるような、考えられないようなリスクを平気でおかす体質なので、バレないと思えば他の核種をこっそりばらまくこともありうると、私は思います。
勝川準教授の基礎からわかるトリチウム排出の話 3 4 5
人為的につくられるトリチウムについて
地球温暖化のように、人間活動は地球規模で環境に影響を及ぼしています。1960年代には、核実験が盛んに行われました。核実験によって大量のトリチウムが発生し、地球上のトリチウム濃度が増加しました。下のグラフは、東京と千葉に降る雨にふくまれていたトリチウムの含量を示したものですが、核実験が盛んだった1960年代にはトリチウムが100ベクレル/Lにも達した年もありました。その後は核実験が禁止されたことから、徐々に減少し、現在は自然発生する量とほぼ近い水準まで下がっています。1960年代にもトリチウムによる害は観察されていませんので、現在のレベルのトリチウムが、環境や人間に深刻な影響を及ぼすとは考えられません。
子力発電所を稼働させると、トリチウムが発生します。すべての原発はトリチウムを、海か空に排出しています。それらの総量は経産省がまとめた資料にあります。現在、福島原発には1000兆ベクレルのトリチウムが存在すると考えられています。これらを毎年22兆ベクレル程度ずつ排出していく計画ですが、それとは桁外れの量のトリチウムが世界中で、環境中に排出されていることがわかります。これらの排出は、特に問題視されていないし、実際に問題が発生していません。また、近年の世界のトリチウム濃度が上がっていないことからも、環境中にどんどん蓄積していくような量ではないことがわかります。福島原発の事故によって、短期間の内に3400兆ベクレルのトリチウムが環境中に放出されましたが、すでに検出できない水準になっています。
トリチウムはなぜ除去できないのか?
福島原発の処理水をALPSという装置で放射性物質の除去を行っています。ALPSで処理をする前と後の核種の量を比較したのが下の図です(引用元)。縦軸の告示濃度比は、法律で決められた排水の濃度上限との比を示していて、赤線よりも下なら排水可能と言うことになります。ストロンチウムやセシウムなどの核種は、排出限界を大幅に下回り、処理後の青い棒グラフがほとんど見えないようなレベルまで除去できています。しかし、トリチウムだけは、殆ど減少していません。なぜ、トリチウムは除去できないのでしょうか。
セシウムやストロンチウムは、これらの物質が吸着しやすい素材を用いて、取り除くことができます。放射性のセシウムや放射性のストロンチウムを選択的に取り除くのではなく、放射性ではない普通のセシウムやストロンチウムも一緒に除去しています。水から不純物を取り除く処理をすることで、他の核種を取り除いているのです。
トリチウム水の場合、放射性ではないトリチウム水はすなわち水ですから、他の核種を分離した手法は適用できません。トリチウムを分離するには、放射性の水とそうでない水を分けることになり、物質そのものを除去すれば良かった他の核種と比較して、技術的なハードルが段違いに高いのです。
超高性能の遠心分離機を利用すれば、分子の重さの違いを利用して、水とトリチウム水を分離することは可能です。ただ、コストも時間もべらぼうにかかります。カナダは原発由来のトリチウムの純度を高めて販売しているのですが、1グラムあたり300万円と高価です。分離されたトリチウムは、水素爆弾の材料なので、核拡散禁止条約によって、日本はそのような設備を持つことが許可されていません。いろいろな意味で現実的とは言えません。
トリチウムは生物濃縮をしない。その理由は?
水とトリチウム水を分離するのが技術的に困難であるということは、生物濃縮が起こりづらいことを意味します。生物濃縮は、生物が特定の物質を捉えて放さないので起こります。トリチウム水の場合は、普通の水と性質の違いが殆どありませんから、トリチウム水だけを選択的に蓄積するような生物は見つかっていません。トリチウム水は、普通の水と一緒に吸収され、普通の水と同じように排出されるので、生物のトリチウム水の濃度は、環境の濃度とほぼ等しくなります。
トリチウムを濃縮する生物が見つかったら、世紀の大発見です。その生物がトリチウム水を集めるメカニズムを解明して、海水からトリチウムを集める方法が確立できれば、水の中からエネルギーを無尽蔵に取り出すことができるようになるかもしれません。
トリチウムの海洋放出は、他国から非難されるようなことなのか?
トリチウム水を海に流すのは、海に塩を撒くようなものだと筆者は考えます。そもそも環境に大量に存在するものを低濃度で流したところで、影響が出るとは思えません。他国も当たり前のようにやっていることですし、それによって国際的な非難をあびるような事で無いはずです。中国や韓国が日本を非難しているのは、純粋に政治的な理由によるものでしょう。本当にトリチウムの排出が問題だと考えているなら、まず、自国の原発を止めているはずですから。
他国の人は、日本で大騒動が起こっているので、何かとんでもないものを流そうとしていると勘違いしているのかもしれません。世界中で認められているトリチウムの排水で大騒ぎしているとは、普通は思わないでしょうから。科学を無視した日本国内の騒動が国際的な誤解を招いているのかもしれません。
風評被害か、実害か?
トリチウム排出において、唯一起こりうる問題は、風評被害であると筆者は考えます。風評とはいえ、経済的な被害や、精神的な負荷といった実害を伴うので、無視することはできません。
風評被害の原因は、放射性物質ではなく、人の心の中の不安や不信です。トリチウム水そのものではなく、日本政府や東京電力への不信感が風評被害を引き起こし、科学的な根拠も無く「危ない、危ない」と騒ぐ、メディアや特定政党の政治家がそれを増幅しているのです。
不正確な情報で危機を煽る人たち。正義感に駆られてそれを拡散する人たち。よかれと思ってそのような行動をとっているのかもしれませんが、やっていることは火の無いところに煙を立てて、人々の不安を煽り、一次産業従事者を苦しめて、原発事故の処理を妨害して、近隣諸国との間に不要な摩擦を引き起こしているように私からは見えます。
対派の言い分について検討してみよう
1)綺麗だというなら飲んでみろ
反対派から「安全性に問題ないなら飲んでみろ」という要求がしばしばなされます。民主党政権時代には、フリーのジャーナリストから「飲んでみろ」と詰め寄られた政務官が、処理水を飲んだこともあります。そんなことをしても、安心感は得られません。だから、現在もこのような問題が繰り返されているのです。
そもそも飲料水の基準と、環境排出基準は全く別物です。この瞬間も多くの河川の水が海に流れ込んでいますが、それらの水のほとんどは飲料水としては不適格です。「飲めるかどうか」と「海に流して良いか」は別問題なので、論点をすり替えるべきではありません。これは排出推進派にも言えることで、「飲めると聞いている」などといって、安全性をアピールするのは、賢いやり方ではありません。あくまで、環境に流しても問題が無いかどうかを論点にすべきです。
)問題ないなら、処理水を東京湾で排出すべきである
べつに東京湾に排出したところで、何も起きません。税金を使って、わざわざ水を運んでも、問題が解決するとも思えません。そもそも反対をする人たちが、それぐらいのことで納得するとは思えないからです。やりたければ、やれば良いけど、時間とお金の無駄でしょう。
3)他の核種も混じっているのではないか
これは重要な論点です。東電のデータを見る限り、トリチウム以外の核種の除去には問題がなさそうです。技術的にも十分可能だと思われます。近年は、福島県の一次産品はほぼすべて基準値以下になっており(下図)、トリチウム以外の核種を大量にばらまくとすぐに明らかになるでしょう。そういうリスクを冒してまで、東電が他の核種をこっそり排出するとは考えづらいです。
とはいえ、「国や東京電力が都合の悪い情報を隠してごまかしているのではないか」という疑問を持つこと自体は、無理からぬことだと思います。国や東電を信用できないからと言って、原発事故の処理を止めるわけにいきません。そこで、透明性をどのように高めていくかが重要な課題です。福島県沖の水質や生物のモニタリング結果を見ていれば、大きな変化があるかどうかはわかります。また、国際団体のIAEAが人を派遣して監視をすることになっています。IAEAが原発推進団体であることを問題視する人もいますが、外部の団体をいれるのは重要です。今後は、漁業関係者や第三者を交えながら、透明性を持って監視をしていく仕組みの構築が必要になるでしょう。
ですから、勝川先生やパンンドラさんのトリチウムは人体に無害という解説を何ら否定するものではありませんが、汚染水問題の議論の中で、トリチウムは無害を強調することは、政府・東電の汚染水を安全だと思い込ませる作戦にまんまと乗ってしまう危険性があると思います。
勝川先生も、確か、トリチウム以外の核種が問題だということなら議論が必要だという趣旨のツイートをされていたと記憶しています。
人為的につくられるトリチウムについて
地球温暖化のように、人間活動は地球規模で環境に影響を及ぼしています。1960年代には、核実験が盛んに行われました。核実験によって大量のトリチウムが発生し、地球上のトリチウム濃度が増加しました。下のグラフは、東京と千葉に降る雨にふくまれていたトリチウムの含量を示したものですが、核実験が盛んだった1960年代にはトリチウムが100ベクレル/Lにも達した年もありました。その後は核実験が禁止されたことから、徐々に減少し、現在は自然発生する量とほぼ近い水準まで下がっています。1960年代にもトリチウムによる害は観察されていませんので、現在のレベルのトリチウムが、環境や人間に深刻な影響を及ぼすとは考えられません。
そういうものをいくつか読んでみますと、●そもそも人の文章をよく読んでいないので攻撃のポイントが的外れ、●初めて会話する人だろうに、自分は匿名で、相手は呼び捨て、揶揄、脅迫的など礼儀知らずで口汚い、●上から目線で、無知なお前に俺様が教えてやる風に決めつける、●微妙に誤字、変換ミスが多い――などの特徴があることがわかりました。
御上に盾突くような「サヨク」的発言をする者は攻撃して黙らせろという独自のルールに従って、何かテンプレートでも参照しながらコメントを書き込んでいるかのようですね。この私の感想が正当かどうかを読んだ人の判断にお任せするために、いくつかのコメントを残しておきますが、以後は、変なコメントには付き合いきれないので、適宜ブロック、削除するようにします。
まじめにご意見をいただいた方には感謝しています。
汚染水に含まれているのは、トリチウムだけでなく、例えば、骨に蓄積して健康への影響が大きいストロンチウム90とか、半減期が1570万年と非常に長いヨウ素129とか、ALPSでは構造上取り除くのが難しいとされる炭素14など多様な核種です。その影響は、自然放射線やリスクを理解したうえで使用されるレントゲンなどの人工放射線とは異なります。
韓国や中国、その他の外国の原発が冷却水をたくさん海洋放出しているのは、福島の汚染水とは性質が異なるとはいえ、確かに問題があると思います。だから原発は世界中で廃止する方向にもっていった方がいいですね。
年1回定期検診があるのできょうぶレントゲンが0.05マイクロSv.CTスキャンが6.97mSv,医療現場で受ける平均放射線量は6.9mSv。その程度の年間放射線量であれば健康に影響ないことは科学飲ん苦手なきつつきでもわかるだろうか?
東京電力は基準値以下になったのを確認してから海洋放出すると言っているので基準値以上で海洋放出すされることはない。p
公害でもそうですが、「危険かもしれない」という段階で対処しないと、あとあとたいへんな被害をうんでからでは手遅れです。そうならないように、海に出す前になんとかしないといけないですね。核廃棄物も何十万年も安全に管理するなんてできるはずないです。
北海道も核廃棄物受け入れ問題で揺れていますが、安全、問題無いと云うなら、政治家連中はその土地の上に家を立てて住めば良いと思います。
いや、いっそ官邸内に埋めれば良いと思います。
甘い汁だけ吸い、厄介な廃棄物を弱者の足元を見て押し付けるとは卑劣過ぎます。
『どこかが受け入れなければならない!』と、犠牲的精神みたいな言い方をしていますが、20億円の交付金無しでも同じ事が言えるのだろうか?
自然は誰のモノでも無い、人間だけのモノですら無いし、勝手に値段など付けられないと思います。
これまで長年渡り、歯を食いしばって風評被害と闘い続けてきた地元の方々の苦労を踏みにじる決定だと思います。