蒲田耕二の発言

コメントは実名で願います。

リテラシー

2015-01-11 | 社会
近ごろネットでブログなどを拾い読みすると、この言葉がチラチラ目につく。「だれそれはリテラシーが低い」「リテラシーが低いからメディアを鵜呑みにする」。嫌な言葉だね。

かつて、電車男で2ちゃんねるが盛り上がったころ、ネットには独特の言語があった。

「うp」「禿同」「氏ね」「萌え」

元来は誤変換だったのだろうが、紙媒体に見られない独自表現として積極的に使われた。誤りを愛嬌として容認する余裕が、そこにはあった。

「リテラシー」は、愛嬌やユーモアを一蹴する。誤りをひたすら「無教養」と決めつける。ただし、露骨に無教養といっては身もフタもないから外来語のオブラートでくるむ。同時に自分には教養があると暗に誇示する。鼻持ちならない。

これって、ネトウヨが安倍の政策に異議を唱える人間をすべて「反日」で片づけるのと、基本的に同じじゃないかね(彼らにいわせると、天皇も「反日」だ)。

ネットが窮屈になったといわれる。それを象徴するのが、「リテラシー」と「反日」だろう。どっちも無名のネット民が愛用している。ブログの管理人は実名が多いが、オレ同様に無名といって差し支えない程度の名前である。

朝日に「マイストーリー」を連載している林真理子が昨日、印象的なフレーズを書いていた。

「匿名とは無名であることで、それは強いけれどつらいことなんですよ。だから彼らは、名前を出して世の中に出てくる人たちに嫉妬している。少しでも彼らの弱点やアラを探そうと、必死になっている。それに生き甲斐を見出す者さえいるんです」

なるほど、と思う。だが、嫉妬だけだろうか。

ネットのいわゆる「鬼女」は有名人だけではなく、親族が生活保護を受けていたお笑い芸人からコンビニの店員に土下座をさせた主婦まで、ありとあらゆる人物を血祭りに挙げる。そこにあるのは、弱者に対する非寛容とサディズムだ。

政治家、官僚その他の権力者には、彼らは決して矛先を向けない。

大衆人気に頼るアイドル、芸人は、有名人ではあっても権力者ではないから彼らの餌食になる。メディアは権力者だが大多数に非とされるような失策を犯した途端、餌食になる。朝日バッシングが、その典型だった。

非寛容はここ数年、にわかに顕著になった。沖縄県知事に門前払いを食わせる安倍政権の体質と、水面下でつながっていないだろうか。
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湾岸トラウマ

2015-01-02 | 政治
20年前にパパ・ブッシュが湾岸戦争を起こしたとき、日本は憲法上参戦できないのでカネを出した。総額130億ドル(当時の為替レートで1兆7000億円)という天文学的巨額だった。

イラクが負け、クウェートは感謝の広告をNYタイムズに出した。対象の30か国中に、日本の名前はなかった。

日本中がショックを受けた。

で、カネを出すだけじゃダメ、人も出さなきゃ(てのは要するに、人命を犠牲にしなきゃ、てことだ)と誰かが言い出し、PKO協力法が成立した。そしてブッシュ・ジュニアがイラク戦争を始めると、自衛隊が現地に派遣された。「自衛隊の行くところが非戦闘地域です」と、当時の小泉首相はうそぶいた。

集団的自衛権行使の閣議決定も、源流の一つは多分この湾岸トラウマにある。

しかし大晦日の東京新聞によれば、戦後復興費用の名目で日本が拠出した1兆7000億は、うち1兆0790億(約68%ですな)までをアメリカに持って行かれ、肝心のクウェートにはたったの6億3000万(0.037%!)しか渡らなかったそうだ。ウィキにも載っている。

これじゃクウェートも、ちょっと感謝する気にはなれないよな。

湾岸トラウマを、自民党政権は最大限に利用した。念願の憲法改正へと舵を切る千載一遇のチャンスを、そこに見たのだろう。いつものとおり、メディアが政府に協力した。クウェートを悪者にして、カネを出しても感謝されなかったと書き立てた。クウェートにはスズメの涙しか行かなかったとは、どこも書かなかった。いま安倍に潰され掛かっている朝日も含めて。

政府とメディアの馴れ合いは、こうして目くらましをしながら国民を都合のいい方向へ誘導していくんだね。
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