古森病院@福岡市博多区 病院管理者のブログ

ベイサイドプレイス近隣にある長期滞在型病院です。投稿記事は管理者の独自見解であり、医療法人の見解ではありません。

ミスリード

2018-01-08 11:16:43 | 日記
古森病院@福岡市博多区です。

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

さて、昨日インターネットニュースにて
以下のニュースが配信されていました。

*********************************


<メタボ追跡指導>医療費節約に効果 減量促し2割安く

1/7(日) 10:00配信

毎日新聞
<メタボ追跡指導>医療費節約に効果 減量促し2割安く

追跡指導有無別の1人当たり医療費の推移

 40歳以上向けの「メタボ健診」を受診し、糖尿病など生活習慣病のリスクが高いと判定された人のうち、3カ月以上の追跡指導を受けた人は、受けなかった人に比べ、医療費が2割安いことが、全国健康保険協会(協会けんぽ、加入者約3700万人)の約26万人の調査で判明した。最大の保険者である協会けんぽで追跡指導の効果が明らかになったが実施率は2割以下で、医療費適正化のため指導強化が求められる。

 「協会けんぽ」は主に中小企業の勤め人が加入する日本最大の保険者。今回の調査は飯地智紀・研究室主任らが行った。2012年度のメタボ健診(生活習慣病予防健診)で、血糖値や血圧などの値が悪く、指導(特定保健指導)の対象とされた40~71歳の男性約26万人のうち、電話やメールで3カ月以上の追跡指導(積極的支援)を受けた人と、全く受けなかった人を比べた。がんを除く糖尿病、脂質異常症、高血圧関連の入院以外の1人当たり医療費や、体重の減り方を比較した。

 追跡指導を受けた群の体重の減り方は受けていない群に比べて3倍程度大きかった。次に1人当たり医療費の年齢調整後の平均値は、13年度で指導群が未指導群より26%(3501円)少なかった。14年度も20.1%(4027円)、15年度も15.3%(3975円)少なかった。飯地主任は「指導を契機に自助努力し体重を減らした結果、医療費が抑えられた」と分析する。

 厚生労働省によると、追跡指導を含めた特定保健指導の実施率は15年度で17.5%に過ぎず、指導対象の大半が無視しているのが現状だ。メタボ健診自体の実施率も15年度で50.1%と低く、医療費の適正化のためには受診率の向上が求められる。【斎藤義彦】

***************************

この記事のソースがどの研究なのか不明ですが、
協会けんぽのホームページに似たような研究報告書が掲載されていました。


++++++++++++++++++++++++++++++++++
平成28年度協会けんぽ調査研究報告書

特定健診・保健指導の医療費適正化効果の分析
本部 研究室 スタッフ 山口真寛
国立保健医療科学院生涯健康研究部 部長 横山徹爾
概要
【目的】
厚生労働省の「特定健診・保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのワーキン
ググループ」の分析(以下、「WG 分析」という。)では、保健指導への参加で医療費の
低減につながる可能性が報告されているが、対象者の大半が国保加入者であるため、
被用者保険である協会けんぽでも医療費適正化に効果があるか検証する。
【方法】
平成 23~26 年度の 4 年間継続して協会に加入した 40~72 歳(平成 24 年度末時点)
の被保険者約 570 万人を対象とし、平成 24 年度健診保健指導データを元に「保健指
導利用者・未利用者(積極的・動機づけ)
」「特定保健指導対象者・非対象者」「健診
受診者・未受診者」に分類した。レセプトデータは、平成 23~26 年度の入院外レセ
プト及び調剤レセプトのうち、糖尿病・脂質異常症・高血圧症(以下、「メタボ傷病」
という。)関連の傷病名コードの記載があり、かつ、これらに関連する医薬品コード
の記載があるレセプトを対象とし、各群の一人当たり入院外医療費(調剤含む。以下、
「一人当たり医療費」という。)の差を性・年齢階級・年度別に比較(マンホイット
ニー検定を実施)した。なお、「がん」関連レセプトは除外した。
また、分析開始時点の医療費の差の影響を除くため、平成 23 年度中にメタボ傷病
関連のレセプトがある者は除外した。
【結果】
積極的支援、動機づけ支援では、男女ともほとんどの年齢階級で未利用者より利用
者の一人当たり医療費が低かった。積極的支援の男性では全ての年齢階級、女性では
一部の年齢階級で有意差が見られた。動機づけ支援では、男女ともに一部の年齢階級
で有意差が見られた。WG 分析との比較では、積極的支援、動機づけ支援ともに概ね同
様の傾向が見られた。
特定保健指導対象者・非対象者では、男女とも全ての年齢階級で対象者の一人当た
り医療費が非対象者よりも有意に高かった。
健診受診者・未受診者では、男性は 45~59 歳及び全年齢計で受診者の一人当たり
医療費が有意に低く、女性はほとんどの年齢階級で受診者が有意に低かった。
【考察】
積極的支援及び動機づけ支援では、保健指導に参加することで、生活習慣が改善し
治療の必要性等が低くなったことが推測され、WG 分析の結果と同様に医療費の伸びが
抑制された可能性が示唆された。健診受診者・未受診者では、未受診者は協会からの
介入がほとんど無いのに対して、受診者はリスク保有者へ保健指導の案内等の介入が
あるため、生活習慣等の改善のきっかけとなり医療費の伸びが抑制されたことが一つ
の仮説として考えられる。
ただし、今回比較を行った各群は、健康への意識や健康状態の違いなどを考慮して
いないことについて、留意する必要がある。

上記報告書URLはhttps://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/honbu/cat740/houkokusho/h28/houkokusho_01.pdf
(協会けんぽホームページからジャンプ https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat740/sb7240/h28houkokusho)
++++++++++++++++++++++++++++++++

2番目のレポートの最後に 
「ただし、今回比較を行った各群は、健康への意識や健康状態の違いなどを考慮して
いないことについて、留意する必要がある。」という文章があるのに気づかれたでしょうか。

この視点は報道では一切触れられていません。
記者が知っていて書かなかったのか、知らなくて書かなかったのかは不明ですが。

管理人をはじめ 医療の臨床現場で働く人間にとって
保健指導の対象で、
保健指導を受ける人は 健康にそこそこ関心のある
(保健指導に聞く耳を持つ)人であることは周知の事実です。
そしてそういう人は 非常に少数派ではあるのですが・・・。

言い切りますが、
保健指導の対象であっても、保健指導を受けない人は 
健康にそこまで関心のない人か
あるいは仕事が不規則である、ないし家庭に何か問題を抱え
指導を受ける暇や余裕がなく、生活改善の見込みの薄い人です。
しつこいですが、保健指導の対象者には
そういう人のほうが圧倒的に多いのです。

検診は働いている以上、事業主の義務となっているので
仕方なく受けるのですが、その後 その結果を反映させるかどうかは
受験者次第であり、中には結果をまったく見てない人も珍しくありません。

そういう方は保健指導につなぐより、
薬を飲ませたほうがよほど手っ取り早く、「何度もいいますが」そういう方のほうが
圧倒的に多いというのが 管理人をはじめとする臨床現場の人間の印象です。

一旦振り上げた政策を止めるのは
勇気がいるでしょうけど、保健指導にかかる費用を無駄に
垂れ流すよりはましなんじゃないでしょうか。

報道する側も 忖度しないできちんと事実を報道すべきだと思います。
そのほうが、無駄な国費を使わないで済むのですから。

http://komori-hp.cloud-line.com/




この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 平成29年1~12月 入院ルート | トップ | ミスリード 2 »
最新の画像もっと見る

日記」カテゴリの最新記事