ひねくれ亭日常

散歩と徘徊が日常の独り言

立川談志と柳家小さん

2020-12-31 11:45:41 | 落語

小さんと談志が修復しがたい関係に陥ったのは弟子である談志に問題があったからだ。

元々仲は悪くなかった様でどちらかというと師匠小さんが問題児を長い目で見るそんな関係だ。

立川流を名乗り破門されてからは完全に関係が絶たれたが談志は師匠の事を意識していた節がある。

「もしも小さんが”俺が悪かった”と謝って来たらどうするか解らんねえ」

つまり師匠小さんが手をついて謝ったら俺は許すかもしれない、いや許すというのだが何とも談志らしい。

小さんに瑕疵は無い。

勿論謝る道理も無い。

師匠に手をついて詫びるのは談志の方なのだ。

小さんは談志を破門したのち彼について語る事は無かったようだが周囲は違う。

小さんの孫である柳家花緑は

「談志さんにはおじいちゃんにきちんと謝って欲しい」

と公言していた。

もしも談志が謝ったら(謝る訳はないが)恐らく小さんは許したんだろうなあ。

鷹揚な人だから。

不器用な弟子と師匠の関係だった。


神田伯山と立川談志

2020-12-29 12:06:04 | 落語

随分前だが立川談四楼さんのインタビュー時、自分が咄家を目指した切っ掛けを語ってくれた。

「私は談志の鼠穴を聞いて体が震えたんですよ。これは凄いと。咄家に成ろうと決めたのは談志の鼠穴のせいですね」

談四楼さんとはほぼ同じ年代なので彼が聞いたのは恐らくNHKの長講一席というラジオ番組ではなかろうか。

45年以上は前の番組で水曜の午後九時から十時まで、タイトル通りに長い演目を取り上げていた。

勿論落語以外にも講談や浪曲も掛かり私は落語以外には殆ど聞かなかった。

そんな中に談志の鼠穴があったのである。

当時は確か中学生で布団に入り電気を消して聞き入っていた。

これは一体どうなるのか?希望があるのかそれとも絶望か?

まあ聞き終えた時の感覚は今でも覚えている。

感動というのか鳥肌ものというのか放心状態というのか。

談四楼さんも同じような状態に陥ったのだろう。

実に良く解る。

今年襲名で多いに名を売った今を時めく神田伯山、彼が話芸の道へと進むきっかけがやはり鼠穴を聞いたからだというので驚いた。

年齢はかなり違うから恐らくリアルタイムの放送ではなく何かの音源だろう。

あの時の噺の出来はかなり良かったと思う。

談志の何時もの口調が聞こえてくるようだ。

「どうだ、あの時の俺の鼠穴を聞いたか!」

っとね。

 

 

 

 


立川談志 

2020-12-26 13:31:01 | 落語

”談志が死んだ”

大昔からあるギャグだが本当に談志が死んで9年が過ぎるのか。

一部の人にとっては神様的存在ではあるが個人的には是々非々でしかないなあ。

良いものは良い、悪いものは悪い。

山藤章二氏の様にはとてもいかない。大体弟子も「芸は最高、人柄は最低」

と言うように(勿論洒落もあるが)かなりとんでもない人物であるぞ、談志は。

まあそのあたりは盟友マムシさんの話にも多く出て来るし落語界にも語り部はまだいるからねえ。

例の分裂騒動の時も焚きつけ役の談志はいち早く離脱するがその理由は円生の次の会長が志ん朝だと聞かされて激怒したからだ。

まあ次から次へと物議を醸す天才だった、いや天災か…

お騒がせこそここに談志ありという事だったのかもしれない。

実に存在感のある咄家だ、そういう意味では。

当然嫌う人も多かった。

面白いのは師匠である小さんとの関係だ。

小さんは談志を可愛がっていたし談志も慕っている。

しかし実直な小さんからすれば談志の行いは認める訳にはいかない。

談志が小ゑんから真打に昇進するときに欲しがった小三治の名跡は小さんが拒否する。

「あいつは了見がわりぃから」

という理由で。

かくして子弟の距離はどんどん離れていく事になる。