父親は居なかった。
母親が生活の為に、一生懸命働く姿しか覚えていない。
女親だから、子供に舐められてはいけないと思っていたのか、言葉でも態度でも、厳しく躾られた。
洋裁を生業にしていたから、手元には竹製の長い定規があった。
体罰も厳しかった。
母親が自分の手で、私を叩くと手が痛くなるからと、その洋裁の定規が折れるほど叩かれた。
時には洋服のブラシの柄が、折れるほど叩かれた。
いわゆる折檻というやつか。
理由は覚えていない。
叩かれる理由が有ったのだろう。
父親がいないからと、躾は厳しかった。
私はお陰でグレる事もなく、長じる事が出来たと、思っている。
母親が亡くなり、15年ほどになるが、懐かしく思い出す。
そして感謝の念しか、浮かばない。
ありがとうございました。
母親が逝った年まで、まだ20数年あるが、私はそれまで生きられるだろうか。