Paradise Lost
Book I
John Milton
41 If he opposed; and with ambitious aim
42 Against the throne and monarchy of God
43 Raised impious war in Heav’n and battle proud
44 With vain attempt. Him the Almighty Power
45 Hurled headlong flaming from th’ ethereal sky
46 With hideous ruin and combustion down
47 To bottomless perdition, there to dwell
48 In adamantine chains and penal fire,
49 Who durst defy th’ Omnipotent to arms.
41 手向かいさえしたならば そして野心に充ちた企てによって
42 神の座と王政に対して
43 天にて不敬な戦いをはじめ 虚しい挑みに
44 思いあがった戦闘を引き起こした 全能なる御力は
45 激しく燃やしつつ妙なる天空から投げ落とした
46 凄まじい破滅と焔と共に
47 底知れぬ獄へと落ちて そこにて
48 不壊の鎖と業火のうちに住まうのだ
49 敢えて無窮の御技に抗したかの者は
*41行目は前回の続きのand with ambitious aimからです。
読んでいてふと気になったのは42行目のMonarchy/君主制。
以前、1640年代の英国史を研究していたため、同時期の政治色の強いパンフレットの類はそれなりに詠みこんでいるのですが、この表現が文字通りの「神の王国」の意味合いで使用されるのは、私の感覚としては珍しい気がしたのです。「野心に充ちた企てによって玉座と君主制に抗い、共に抗った同輩たちの上に立つ至高の存在になろうと思いあがった「蛇」――これはどうも私には、内戦期に議会軍副司令官を務めて共和主義者の英雄となりながら王の処刑後にはかつての絶対君主と変わらない独裁色を強めていった護国卿オリヴァー・クロムウェルを念頭に置いているものではないか、と感じられてなりません。無知/無垢ゆえの楽園とは、精神的な意味合いでは理性の光に啓蒙される以前の音声/情動優位の個人の内面世界、現実的な意味合いでは、理想化された牧歌的なかつての君主制社会を意味しているのかもしれません。蛇/クロムウェルの教唆によってひとたび王を処刑した英国民の心性は、王政復古後に再び君主を頂いてももはやかつてのように虚心にその聖性を受容できない。平伏して己を客体化するための至高の存在を失くしたアダムとエヴァの行き着いた果てがエリオットの荒地なのでしょう。
Book I
John Milton
41 If he opposed; and with ambitious aim
42 Against the throne and monarchy of God
43 Raised impious war in Heav’n and battle proud
44 With vain attempt. Him the Almighty Power
45 Hurled headlong flaming from th’ ethereal sky
46 With hideous ruin and combustion down
47 To bottomless perdition, there to dwell
48 In adamantine chains and penal fire,
49 Who durst defy th’ Omnipotent to arms.
41 手向かいさえしたならば そして野心に充ちた企てによって
42 神の座と王政に対して
43 天にて不敬な戦いをはじめ 虚しい挑みに
44 思いあがった戦闘を引き起こした 全能なる御力は
45 激しく燃やしつつ妙なる天空から投げ落とした
46 凄まじい破滅と焔と共に
47 底知れぬ獄へと落ちて そこにて
48 不壊の鎖と業火のうちに住まうのだ
49 敢えて無窮の御技に抗したかの者は
*41行目は前回の続きのand with ambitious aimからです。
読んでいてふと気になったのは42行目のMonarchy/君主制。
以前、1640年代の英国史を研究していたため、同時期の政治色の強いパンフレットの類はそれなりに詠みこんでいるのですが、この表現が文字通りの「神の王国」の意味合いで使用されるのは、私の感覚としては珍しい気がしたのです。「野心に充ちた企てによって玉座と君主制に抗い、共に抗った同輩たちの上に立つ至高の存在になろうと思いあがった「蛇」――これはどうも私には、内戦期に議会軍副司令官を務めて共和主義者の英雄となりながら王の処刑後にはかつての絶対君主と変わらない独裁色を強めていった護国卿オリヴァー・クロムウェルを念頭に置いているものではないか、と感じられてなりません。無知/無垢ゆえの楽園とは、精神的な意味合いでは理性の光に啓蒙される以前の音声/情動優位の個人の内面世界、現実的な意味合いでは、理想化された牧歌的なかつての君主制社会を意味しているのかもしれません。蛇/クロムウェルの教唆によってひとたび王を処刑した英国民の心性は、王政復古後に再び君主を頂いてももはやかつてのように虚心にその聖性を受容できない。平伏して己を客体化するための至高の存在を失くしたアダムとエヴァの行き着いた果てがエリオットの荒地なのでしょう。
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