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「肩胛骨は翼のなごり」

2010-09-17 21:32:39 | デイビィッド・アーモンド

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 『肩胛骨は翼のなごり』、デイヴィッド アーモンド著、山田 順子訳、東京創元社


<あらすじ>
  主人公のマイケルは、家族とともに新しい家に越してくる。彼はサッカーが好きで、作文が上手い少年。環境の変化のせいで多少の不安や寂しさがあっても、本来なら楽しい気持ちでいっぱいのはず。
 でも、生れて間もない妹は、生命が危ぶまれるほどの心臓の病気を患っていた。マイケルやお父さん、お母さんにも、その暗雲がのしかかっていた。


 引越し先の家の裏庭には、古ぼけて、今にも崩れそうなガレージがあった。お父さんには、危険だから中に入ってはいけないと止められていたが、マイケルはこっそりと入ってしまう。
 そしてガラクタと埃まみれの中から、翼を持った生き物スケリグと出会う。マイケルは、とても衰弱していたスケリグを、新しい友だちの少女ミナとともに命を助けようとした。



<感想>
 デイヴィッド アーモンドの処女作で、カーネギー賞とウィットブレッド賞を受賞した英国児童文学の新しい傑作。
 主人公マイケルの目を通して描かれる物語は、夢と現実の間にあって、繊細で美しく、まるで澄み切った満月の晩に水面に映った月のように、ときには美しく。風が吹けば、波紋が起きれて消えてしまうようなに、ときにはかなさを感じる作品です。


 短い章(多くても4~5ページほど)をいくつも積み立てて構成されていて、すべてを語らずに曖昧な部分を故意に(たぶん)入れている。
 こうすることでゆれる少年の心の繊細さ、物語り全体における神秘さをかもし出しています。


 なんでもない出来事が、10歳の少年には、大きな不安ともたらすことを気づかされる。
 そんなピュアな時が、自分にも有ったんだと思い起こさせてくれた、心洗われる作品でした。



「シャーディック」<下>

2010-09-17 09:16:06 | リチャード・アダムス

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 『シャーディック』下、リチャード アダムズ著、神宮輝夫訳、評論社


<あらすじ>
 シャーディックに導かれたオルテガ人たちの怒涛の進軍に、あっという間に首都ベラクは陥落し、彼らは念願のベラク奪還を果たしたのだった。


 シャーディックを発見した狩人ケルデレクは、祭主王としてベラク帝国を治める。しかし、南の諸州は異民族の力が残っていて、5年以上にわたる紛争を繰り返していた。


 そんな折、一人の領主エレロスが謀反の心を抱いて、首都ベラクを訪れるのだった。


 主人公ケルデレクが、シャーディックとの出会いによって数奇な運命をたどっていく壮大な物語である。




<感想>
 アダムスの話を幾つか読んで気が付いたことですが、彼は登場人物に苦難を与えるとき、必ず血が流れます(その人物が怪我をする)。
 特に主人公は、何かあるごとに怪我を負うので、いつも傷だらけなのです。これはイエス・キリストの受難をイメージしているのではないかと感じるほどです。


 この『シャーディック』は、主人公ケルデレクの数奇な運命、シャーディックに翻弄されて受難し傷ついていく姿は、キリスト教文化における信仰心をテーマにしているのではないかと強く感じました。


 カテゴリーは児童文学となっていますが、テーマ内容としては、重たい感じのする作品です。



「シャーディック」<上>

2010-09-17 08:46:50 | リチャード・アダムス

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 『シャーディック』上、リチャード アダムズ著、神宮輝夫訳、評論社


<あらすじ>
 架空の大陸ベラク。かつてこの広大な土地を支配していたオルテガ人は、異民族の侵入を赦し北の辺境である大きな河の中洲へと追いやられてしまう。
 しかし、いつか彼らの元に神は、使いである巨大な熊シャーディックを遣わし、ベラク帝国を取り戻してくれるという伝説が残った。
 シャーディックの伝説を祭る信仰クィソが女司祭ツギンタによって代々伝わり、取り仕切っていた。


 そして時代が過ぎて、中洲の北側の未開の森林地帯で大火災が起こる。
 火事に追われた1頭の巨大が熊がオルテガ人の住む中州へと泳ぎつき、狩人ケルデレクが偶然にも最初に発見する。
 彼は、この事実をクィソの女司祭ツギンタであるサジェットへと知らせるのだった。


 シャーディックの出現は、オルテガ人を動揺させ、熱狂的な意思のもと、かつての自分たちの土地だったベラク帝国の首都ベラクへと軍勢を侵攻させる。


 ケルデレクは、神の力としてのシャーディックに魅せられて…… 


 主人公ケルデレクが、シャーディックとの出会いによって数奇な運命をたどっていく壮大な物語である。




<感想>
 『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』に続くリチャード アダムズの2作目の長編小説。アダムスは、動物ものの作品が得意で、基本的に動物たちが主人公であるのですが、本作品は巨大な熊にであることで大きく運命を翻弄される狩人ケルデレクが主人公になっている。


 一応、児童文学というジャンル分けになりますが、内容は大人でも十分に楽しめるもので、ネイティブアメリカンの雰囲気たっぷりです。


 アダムスの物語構成の仕方は絶妙で、読者を飽きさせず、最後までどうなるのか分からないという、ハラハラドキドキの展開が楽しめます。