「マサチューセッツ州の伝統を色濃く残し、古い幽霊譚や魔女伝説が今なお息づく街」
Arkham(アーカム)は、マサチューセッツ州エセックス郡に位置する古い地方都市だ。現在、アイビーリーグの名門、ミスカトニック大学のベットタウンとして主に知られている。
街の中央を東西に流れるミスカトニック河の北側にボストン=マサチューセッツ鉄道が走り、ボストンに2時間足らずで行くことができる。
この街の礎を築いたのは、改革派教会の押し付けがましさを嫌い、信仰の自由を求めてボストンやセイレムから17世紀後半に移住してきた人々で、1692年セイレムで魔女裁判の騒動が発生した際に逃亡者やその家族を向い入れ、屋根裏部屋などに匿ったこともある。
街の中には、セイレムと共通した地名が幾つか存在しており、彼の地から逃れてきた魔女たちが、ミスカトニック河の中洲の島で饗宴を開いていたという噂がささやかれている。
18世紀には、西インド交易の拠点のひとつとして発展し、19世紀に入ると、工業へと主要産業を移し、マサチューセッツ州の有数な繊維工業地として栄えていった。
近隣のインスマスやキングスポートなどの街に比べると、古い歴史があるところではないが、密集する駒形切妻屋根の家、ジョージ風の欄干といった数世紀前の街並みを、「時の止まった街」という言葉で形容されており、そんな雰囲気が、老人たちが語り継いできた魔女や幽霊にまつわる数々の物語共々、変化のない街として現在に至っている。
そのためニューイングランド地方の歴史、風俗を研究する学者、北部アメリカの伝統的な文化を好む懐古趣味の芸術家が、この街をよく訪れ、長期に渡って滞在することが多い。
主要な新聞は、1806年創刊の伝統がある「アーカム・ガゼット」紙と、比較的軽めの話題を取り扱う「アーカム・アドヴァタイザー」の大衆紙がある。