この高言する者が幅をきかす文化のため、中国の王朝では漢人王朝はほとんど愚かだ。金庸の小説をみよ。優れた皇帝や王侯は満州人か蒙古人。漢人皇帝は侫臣に取り囲まれた愚か者ばかり。
しかし中国では支配者が一面では統治の方便として、他面ではその愚かさにより高言を歓迎してきた。そのため本当の愛国者や忠臣は、不忠だとか漢奸、反革命だとか右派分子としてつぶされてきた。リア王の世界だね。
日本だけに本当の愛国者や忠臣がいて、中国には偽者ばかりというのではない。どちらの社会にも両方がいる。しかし、日本には高言するものを胡散臭く見る文化がある。「武士は言挙げせず」ということわざもある。いわゆる右翼は胡散臭く見られる。
中国では歴代王朝を滅ぼす反逆者には忠義を公言して、忠の入った名前を皇帝から賜った者が多い。毛沢東の最も忠実な同志といわれた林彪は毛沢東の暗殺に失敗して逃亡中に死んだ。これも中国史の基本パターン。
日本でも中国でも高言するものに愛国者も忠臣もいないのは人間社会の鉄則だ。大阪の陣で日ごろ一番声高だかに豊臣家に忠義を言っていた者が直前に逃亡し、日ごろ温和で口数も少ない毛利勝永や真田幸村が最後まで殉じた。楠正成も現実的な判断で足利尊氏との和解を主張した。