セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

朝鮮史上の三大妖婦

2009-04-11 18:39:17 | 文化
今週の「王の女」で、ケトンが自分の意思に反して王様の側室にさせられたとき、ナレーションで「朝鮮史上の三大妖婦の一人のキム尚宮の誕生である」なんて言ったので驚いた。ケトンって実在した人物でしかも「妖婦」として歴史に残っている人だったのだ。正午から放送している「張禧嬪(チャン・ヒビン)」の張禧嬪も三大妖婦だ。ドラマ上設定でも、張禧嬪は陰謀家で復讐心のつよい悪役になっている。しかし「王の女」でのケトンは、凄味のある表情をみせたが悪役とは違う内容になると思う。
張禧嬪とケトンが歴史的に三大妖婦とされた理由はわかる。しかしその評価は朱子学的な基準によるもので現代的に見て正しいかは別だと思う。「張禧嬪(チャン・ヒビン)」ではドラマの設定で、張禧嬪と仁顕王妃の性格での善悪ははっきりしている。しかし朝鮮史で張禧嬪が悪役になっているのは、両班出身の王妃を追い出して、訳官という身分の低い親の娘が本来なれない王妃になったことが、朱子学的身分秩序に反するからだったではないのか。本当の史実はドラマの内容とは違って本当は王妃も嫉妬深く陰謀好きだったのでないのか。つまりどっちもどっちだった。ただ身分の低いものが身分の高いものを追い出したので妖婦にされてしまったような気がする。
「王の女」のケトンの場合は、ドラマではたぶんいい人間だったということになるのだろうが、こちらは逆に歴史評価に方にある程度妥当性がある。つまり王様の側室つまり妻の一人だったものが身分的には自分の子供にあたる王子の光海君と密通をして権勢をふるったということだ。しかしドラマ「王の女」の設定では、ケトンは光海君をずっと慕っていて、光海君を王様にすることで宮中の女官である自分も光海君のものになる期待を持っていたようである。しかし王妃が王様のケトンを気にした様子をみて、王様の寵愛を独占して権勢を持ってきた側室をけん制するため、ケトンを利用しようとしたのだ。他の女官なら王様の寵愛を受けて側室になることは大いに望むことだが、光海君を慕うケトンはそれを拒否する。しかし女官なので拒否できない。最初に王様の寝室へ食べ物を運ぶ役割を命令されたときは、規定の沐浴を行わずに王様の寝室に行き、屁理屈で王様を説き伏せ同衾をさせなかった。とうとう王妃は側室の儀式を行わせ拒否できないようにした。やむなく王様の寵愛をうけたケトンは光海君のために王様の寵愛を利用しようと決意する。そして王妃と今まで寵愛を受けていた側室に面と向かって宣戦布告をするのだ。王妃はケトンを道具として利用しようとしたが、あらたな敵を作ってしまったのだ。「人間を道具にしてはいけない」とはカントの言葉だそうではあるが、自立した人間を道具にはできないのだ。

ちなみに「王の女」の時代は、太閤秀吉の朝鮮出兵のあった時期から始まる。ところで史実と違う点があるぞ。光海君の兄の臨海君は日本軍の捕虜になった。史実では朝鮮人の反乱軍に捕らえられて加藤清正軍に引き渡されたのち、講和交渉で返されたはずだが、「王の女」では怪我をしていたので日本軍に捕まって、牢屋にいたが臨海君の部下に助けだされたことになっていた。歴史の偽造だよ。