歴史だより

東洋と西洋の歴史についてのエッセイ

≪囲碁の布石~白石勇一氏の場合≫

2024-11-03 18:00:04 | 囲碁の話
≪囲碁の布石~白石勇一氏の場合≫
(2024年11月3日投稿)

【はじめに】


 今回のブログでは、囲碁の布石について、次の著作を参考に考えてみたい。
〇白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年
 布石の基本的な考え方が、第1章、第2章、第4章に述べてある。
 そして、目次にもあるように、「第6章 布石紹介(三連星、中国流、星とシマリの布石)」三連星、中国流、星とシマリの布石が主なテーマとなる。
 それぞれの布石の特徴としては、次のように言われている。
〇三連星~四線を中心に、スピード最優先で大きく構えることを目指す作戦
〇中国流~高低のバランスを取り、足元を固めながら勢力圏を広げていく作戦
〇星とシマリの布石~じっくり腰を落ち着けて、相手の出方を見ながら打ち方を決めるような作戦
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、144頁)

 ただ、三連星については、若干のコメントを書き加えておく。
 三連星は、かつて武宮正樹氏の“宇宙流”として、一世を風靡するほど流行した。
 現在、三連星の布石は、プロ棋士やアマ高段者の間では、打たれない。その理由の一つには、攻略法(三連星破り)が研究されたことがあろう。
 例えば、次のようなYou Tubeのサイトを見れば、そのことがわかる。
〇囲碁学校(小松英樹九段)
 「小松流 碁の勝ち方 ゆるまず打つ!(3)」(2017年1月30日付)
〇rido channel
「3連星が打たれなくなった理由【布石理論】」(2020年2月7日付)
〇プロ棋士 柳澤理志の囲碁教室
「三連星対策シリーズ1 白の大模様返し作戦!」(2020年4月27日付)
※なお、三連星の可能性については、次のようなYou Tubeのサイトもある。
〇将碁チャンネル(山田規三生九段)
「おすすめのAI流三連星1」(2024年5月4日付)



【白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版はこちらから】

やさしく語る 布石の原則 (囲碁人ブックス)




〇白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年

本書の目次は次のようになっている。
【目次】
まえがき
序章 本書の内容と活用法
第1章 勢力圏を意識する
第2章 勢力圏争いに勝つ
第3章 確認問題①
第4章 勢力圏への入り方
第5章 確認問題②
第6章 布石紹介(三連星、中国流、星とシマリの布石)
第7章 実力テスト
第8章 知識編
<コラム>




さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・白石勇一氏のプロフィール
・本書の内容
・第1章 勢力圏を意識する
・第2章 勢力圏争いに勝つ
・第2章 テーマ図3
・第3章 確認問題①
・第3章 第7問~三連星の布石
・第4章 勢力圏への入り方
・第4章 テーマ図1
・第5章 確認問題②
・第5章 第4問
・第5章 第6問
・第6章 布石紹介(三連星、中国流、星とシマリの布石)
・第6章 三連星
・第6章 中国流
・第6章 星とシマリの布石
・第7章 第3問~中国流
・第8章 知識編
【ヒラキとツメ】【二間ビラキ】【二間ビラキもどき】【割り打ち】
・第8章 知識編
定石や定型~【テーマ図5】:大々ゲイマへの打ち込み
・【補足】布石 削減の手筋~藤沢秀行『基本手筋事典 下』より







白石勇一氏のプロフィール


白石勇一六段
昭和59年生まれ。神奈川県出身。岩田一九段門下。
平成17年入段。平成27年六段。
「白石勇一の囲碁日記」 http://blog.goo.ne.jp/igoshiraishi

本書の内容


「序章 本書の内容と活用法」
<本書の内容>
白石勇一氏の前作『やさしく語る 碁の本質』では、中盤戦、つまりお互いの石がぶつかり、弱い石ができてからの考え方、打ち方がテーマであった。
中盤戦は地を気にせず、石の強弱を第一に考えて打てばよいと主張している。
自分の弱い石は守り、相手の弱い石を攻めることの重要性、またその方法について解説していた。

一方、本書は、その前の段階、布石がテーマである。
布石を上手く打つことができれば、自分に弱い石ができなかったり、相手の弱い石を作ることにもつながる。そうなれば、中盤戦も有利に戦うことができる。
布石は中盤戦のための大事な準備区間であるという。

第1章では、勢力圏という概念について説明している。それを理解すれば、布石で何を目指すべきなのか、イメージが掴める。
第2章、第4章では、局面によってどういう打ち方をすればよいのか、その指針となる「原則」について説明している。
そして、第3章、第5章は確認問題である。第2章、第4章で学んだことを、しっかりと身に付けてほしい。
第6章は布石紹介である。アマ同士の対局でよく打たれる布石と、その特徴を紹介している。
第7章には、それまでの内容の総まとめとして、実力テストがある。どれだけ本書の内容を理解し、身に付いているかを確認することができる。
第8章は知識編である。覚えておくと役に立つ形や定石などを収録してある。
(本書の内容を理解するために役立つものも多いので、最初に第8章から読んでもよいようだ)
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、11頁)

第1章 勢力圏を意識する


①勢力圏を意識して打つ。
【布石は勢力圏争い】
・中盤戦では、地よりも石の強弱が大切。
 布石(序盤)でも、石の強弱が最も大切。
 しかし、碁が始まったばかりの段階では、お互いに弱い石がないことが多い。
・そこで、「勢力圏」という概念が出てくる。
 石は打った場所そのものだけではなく、周辺に影響力を及ぼす。そして、味方の石の影響力が及ぶ範囲を勢力圏と呼ぶ。
➡いかに相手より広い勢力圏を確保するか、これが布石の基本。
・勢力圏にも、強弱がある。
 勢力圏の強弱は、石の強弱によって変わる。
 弱い勢力圏は、相手に消されたり、奪われたりしやすい。
 だから、布石では、勢力圏を広げることはもちろん、固めることもまた重要。
(弱くなりそうな石を守る、と言い換えてもよい)
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、14頁~15頁)

【勢力圏の及ぶ範囲】
〇どこまでを勢力圏と見るべきか?
➡勢力圏の及ぶ範囲は、辺方向に向かっては、4路先まで。
・相手がこの範囲内に入ってくれば、攻めのチャンス。
・4路というのは、絶対的な基準ではないが、目安にはなる。
・例えば、黒に背後から迫られても、二間にヒラければ、ある程度ゆとりがあり、急な攻めは受けにくい。
・二間ビラキは、辺で安定したい時の基本の形。
(布石では非常に重要なので、ぜひ覚えておこう)

【勢力圏をつなげる】
・勢力圏同士をつなげると、より強く、大きな勢力圏ができる。
➡それが育っていくと、「模様」へ、そして最終的には、大きな地になる。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、16頁~17頁)

②相手の勢力圏も意識する。
・自分の勢力圏を大きく広げることは大事だが、相手がいることを忘れてはいけない。
 相手も勢力圏争いに勝とうとしているのだから、隙あらばこちらの勢力圏を破壊しようと狙っている。だから、相手の妨害を警戒しながら、ほどよい間合いで勢力圏を広げていく。
・また、相手の勢力圏が大きくなりそうであれば、逆にこちらから妨害しにいった方がいいこともある。碁盤全体を見て、勢力圏争いに勝つ方法を考える。
・一般に、ヒラキは五間までとされている。(あくまで目安だが)
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、19頁)

③その他
【三線と四線の違い】
・辺にヒラく時は、三線か四線が基本。
(五線にヒラいてはいけないわけではないが、足元をすくわれやすく、活用はやや難しい。本書では扱わない)
・それでは、三線と四線は、どちらがよいのか?
 これはプロにとっても永遠の課題で、多くの場面で明確な答えは出ていないそうだ。
 
〇ただ、両者には大きな違いがある。
・三線の方が、打ち込みに強い。
・四線は打ち込みに弱く、三線はボウシ、肩ツキが弱点といえる。
・大雑把にいえば、四線は模様を張ることや攻めを好む人、三線は確実性を好む人に向いている。

※布石は、まず三線、四線から占めていくのが基本。
 また、そこから五線や六線など、中央へ進出していく手ももちろん有効だが、二線の手は基本的に好ましくない。二線は根拠を確保する時、奪う時だけ。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、24頁~26頁)

第2章 勢力圏争いに勝つ


【原則を意識して打つ】
・本章では、勢力圏争いに勝つ方法として、次の3つを原則とする。
①「広い所から打つ」
②「弱い石の周りは大きい」
③「模様の接点を逃さない」
➡これらを意識して打つことで、勢力圏を効率よく広げることができる。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、30頁)

第2章 テーマ図3


【第2章 テーマ図3黒番】
・広い所に打つというのは見た目に分かりやすいが、それだけではいい布石は打てない。
・まだ、13手目なので、正解を逃したからといって、大きく形勢を損なうという場面ではない。しかし、いい流れで布石を展開できるかどうかの分岐点にはなるだろう。

【勢力圏争いの原則 弱い石の周りは大きい】
・前作のメインテーマだった「石の強弱」がここで登場する。
・布石は石がまったく置かれていない所からスタートすることもあり、まずは「広い所から打つ」という原則を最初に説明した。
・だが、より重要なのが、この「弱い石の周りは大きい」という原則。
・格言にも、「大場より急場」とある。

【1図】(正解)根拠の要点
・右辺白は二間ビラキして、一息ついたが、まだ強い石にはなっていない。
・そこで、黒1と根拠を脅かす手が好手になる。
※これは、自身の守りを兼ねており、後に白aなどと詰め寄られた時も安心。
 つまり一石二鳥の好手。
・攻めを避けて、白2と守れば、黒3とさらにプレッシャーをかけながら、勢力圏を広げて、好調。
・黒5まで、黒の勢力圏の方が広くなった。
※相手に守りの手を打たせることで、勢力圏争いを有利に展開できる。

※4図黒1は広い所だが、白2と根拠の要点に打たれては、チャンスを逃している。
 一方、左辺では黒9と守らされている。こちらは黒が有利な戦場ではない。
 やはり、1図のように、明快にリードを築きたい。

【2図】(正解変化)勢力圏争いで優位に
・白が右辺を守らなければ、一例として黒2以下の攻め方がある。
・自然と外側に黒石が増え、黒12となって、巨大な勢力圏が出現した。

【3図】(正解変化・その後)黒有利な戦い
・もちろん、2図の後、白1などと侵入する余地はある。
※しかし、取ることはできなくても、厳しい攻めでポイントを挙げられる。

【4図】(失敗)広い所だが
・黒1が悪手というわけではない。
・しかし、調子よく上下を固めてから、悠々と白10と打ち込み、白の流れがよい。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、40頁~42頁)

第3章 確認問題①


【実戦に向けての練習】
・本章では練習問題を用意した。
 より実戦に近い形で考えることができるだろう。
①「広い所から打つ」
②「弱い石の周りは大きい」
③「模様の接点を逃さない」
➡この3つの考え方に基づいて、選んでもらえばいいが、考え方の手順としては、以下のようになる。
①碁盤全体を見渡して、お互いの弱い石、弱くなりそうな石を探す。
②あればその周辺を打ち、無さそうなら…
③広い所、模様の接点を探す
※ちなみに、石の強弱を見極める力は、死活の力に大きく左右される。
 大体このぐらいのスペースがあれば生き、このスペースは危ない、という感覚を身に付けておくが大事。
(囲碁の勉強法として、詰碁が重要と言われるのは、それが理由)
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、58頁)

第3章 第7問~三連星の布石


【第3章 第7問黒番】
・これまでに培ってきた感覚を生かして、ぜひ正解してほしい。
・さて、局面は双方が三連星の布石で対峙したところ。
 勢力圏争いで優位に立つには、黒A~Cのどれがよいだろうか。

【1図】(正解)模様の接点
・黒1が正解。
・白2なら黒3以下、目一杯に広げ、勢力圏争いは明らかに黒有利。
※白がどこに入って来ても、大きな地が残るだろう。

【2図】(正解変化)黒有利な戦い
・白2の反撃を恐れる必要はない。
※黒の勢力圏なので、有利に戦える。
 右辺白が苦しいし、上辺黒aなども狙える。

【3図】(次善)模様の接点を逃す
・黒1ものびのびした手であるが、何と言っても、白2が絶好点。
・白8までは一例であるが、白模様が大きく盛り上がった。

【4図】(失敗)狭い所を囲う
・黒1、3のような打ち方はいけない。
※下辺は狭く、これから盛り上がる余地も小さい所。
・白6まで、右辺黒の勢力が泣く。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、75頁~77頁)

第4章 勢力圏への入り方


【相手の方が勢力圏が広い時】
・時には相手の勢力圏に入っていくことも必要。
だが、相手の勢力圏での戦いは、危険を伴う。
 入っていったものの、厳しく攻められて形勢が悪化してしまった、というのはよくある。
・そうならないためには、どうすればよいか?
 ➡読みの力をつける、戦いの手筋を学ぶ、といったことはもちろん大切。
 ただ、不利な状況で始まった戦いは、どんなに頑張っても、上手くいかないことも多い。
〇一番大切なことは、入っていく前に状況をしっかり把握し、適切な入り方を選ぶこと。

〇相手の勢力圏へ入る際に従うべき3つの原則
①相手の弱い所に打ち込む
②苦しい打ち込みより浅い消し
③苦しい逃げ出しより楽な捨て石
※棋力が多少違うぐらいでは、読みの力に大きな差があることは少ない。
 戦いの結果を大きく左右するのは、スタート地点である。そこで正しい考え方ができれば、自然といい結果がついてくる。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、80頁)

第4章 テーマ図1白番


【第4章 テーマ図1白番】
・お互いに勢力圏を広げ合う布石になっている。
・形勢は開いておらず、このまま大きさ比べを続けるのも一局。
・ただ、そういった展開に自信が持てない人も多いだろう。その場合は、黒模様に入っていくことを考えたいところ。
・どう打ち込めば、苦しい戦いを避けられるだろうか。

【勢力圏への入り方・原則①相手の弱い所に打ち込む】
・相手の勢力圏に打ち込めば、当然弱い石を作ることになる。
 では、その石が厳しく攻められないためには、どうすればいいのだろうか。
➡そこで重要になるのが、「相手の弱い所に打ち込む」という原則。

・石を攻める際には、自分の石が弱くならないことが重要。
 無理な攻め方をして、逆に自分の石が取られてしまった、ということは経験されていることだろう。
 これを逆の立場で考えると、「相手の石を弱くしておけば、自分の石は厳しく攻められない」ということになる。
 そこで、相手の根拠の無い石や、連絡が不完全な石を狙って、打ち込んでいくのである。

【1図】(正解)黒の弱い石を狙う
・左下黒は、左辺白の勢力圏に入っている石。
・そこを狙って白1と打ち込む。
※これは四線の構えの弱点を突いており、次に白aで根拠を奪う手を見ている。
・すると、黒も黒4、6といった手で、自分の石を守らなければいけない。
※そこを一緒になって逃げていけば、急な攻めを食わずに済むし、場合によっては反撃も狙える。

【2図】(正解変化①)黒の弱い石を狙う
・黒2のボウシに対しては、白3が黒の弱点を突く手。
・黒4の受けを待って、白5とヒラけば、悠々と根拠を持つことができた。

【3図】(正解変化②)楽に治まる
・黒2、4などと打てば、左下黒は安泰であるが、その間に白も形を作ることができる。
※単騎で侵入したことを考えれば、大成功。

【4図】(失敗①)強い所に打ち込む
・白1と打ち込むのは、失敗。
・黒6まで、左下の黒が強くなってしまった。
※後は白が一方的に攻められるだけであろう。

【5図】(失敗②)黒に響かない
・また、白1と高く打ち込むのも、いまひとつ。
※黒の根拠を脅かしていないから。自分の根拠も作りにくく、かえって苦労する。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、81頁~84頁)

第5章 確認問題②


【実戦で正しく判断するために】
・第4章の内容はおもに次の点にあった。
〇肩ツキとボウシの違い
〇石を捨てるサバキ

※白石勇一氏が最も伝えたいことは、布石でも石の強弱が一番大事であるということ。
・相手の石を弱くできる場面はチャンスである。
・逆に自分の石が弱くなったり、いじめられたりすることは避けなければならない。

☆さて、第5章は確認問題である。
 第4章で学んだことを実戦に生かせるよう、練習しよう。

【実戦での考え方】
①相手に弱点があれば、そこを狙って打ち込む
②弱点が無ければ、消しを考える
③(圧倒的に不利な状況で戦いが始まってしまった場合には)苦しい逃げ出しより楽な捨て石
※①②の考え方ができていない人が多い。それは大きな失点につながる。
 だから、この考え方が実戦でできるようになるまで、しっかりと身に付けよう。
・捨て石を苦手にしている人は、捨てることを思い付かないから、戦いが苦しく感じた時に、自然と石を捨てる発想が浮かぶようになれば、碁は格段に変わるという。

・捨て石での注意点としては、石数が増えていくと、だんだん捨てにくくなっていくということである。
だから、戦うか捨てるかは、なるべく早い段階で決断するように心がけよう。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、108頁)

第5章 確認問題②~第4問 白番


【第4問 白番】荒らしの手筋
・ここからは、プロ同士の対局を題材にしている。
レベルが違うとはいえ、考えるべきことは、そう変わりない。
・本局は、水間俊文七段との対局で、著者の白番。
・白20は黒a(15, 六)のカケから勢力を築かれることを嫌ったもの。
・さて、問題は黒21とトバれた場面。
☆左辺黒が大きくなりそうだが、どう邪魔しにいくか?

【1図】(正解)ボウシで消す
・黒石が多いので、白1とボウシで消した。
・黒2と受けてくれれば、白3と引き上げて、満足。
※黒地は隅や辺だけに限定されている。

【2図】(正解その後)後の狙い
・左上の黒地が大きく見えるが、後に白1、3の狙いがある。
※中国流、ミニ中国流などではよく出て来る形である。

【3図】(続・正解その後)
・黒1とカカえるぐらいであるが、白12までと生きることができた。
※こういう荒らしの手筋を知っていると、布石を無理せず打てるという。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、121頁~123頁)

第5章 確認問題②~第6問 白番


【第6問 白番】
〇藤沢里菜初段(当時)との対局で、著者の黒番。
・右上は最近の定石。白は右上で大きく治まったが、その代わり黒は右辺に勢力を得た。
・このまま放置すると、右下のシマリを中心に巨大な黒模様ができそう。
・白はどう邪魔しにいくべきだろうか?
 選択肢は多いが、惑わされてはいけない。


【1図】(正解)安全に消す
※右下一帯は黒に弱みが無いので、深入りしてはいけない。
・白1の肩ツキが正解。
※安全に黒模様の巨大化を防いだ。

【2図】(失敗①)深入り
・白1と入っていくところではない。
・黒8まで一例であるが、白がいかにも窮屈。
➡これでは生きても、よくない。

【3図】(失敗②)方向違い
※消す発想はよいが、右辺は黒石が最も多い所。
※そちらに入っていっては、肩ツキといえども、反撃されて苦しくなる。

【4図】(失敗③)無謀な打ち込み
・だから、白1の方の打ち込みなどは、最悪の結果を招く。
・黒4まで、もはや命の問題になっている。
➡万が一生きたとしても、ダメ。

【5図】(別解①)ボウシも正解
・他の手としては、白1なども考えられる。
※やはり安全に消す意味で、右下は少し大きくなる代わりに、aの打ち込みが残る。

【6図】(別解②)攻めを狙う打ち込み
・また、黒▲の攻めを狙う白1の打ち込みも、いい発想。
・ただ、黒4とトバれると、右下一帯が大きくなることを嫌い、実戦は1図だった。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、129頁~132頁)

第6章 布石紹介(三連星、中国流、星とシマリの布石)


「第6章 布石紹介」において、代表的な3つの布石を紹介している。
〇三連星
〇中国流
〇星とシマリの布石

・どんな布石作戦にも共通するのは、「大きさ比べに勝つ」ということであると、白石勇一氏は強調している。
そこを目指すための道筋は様々である。
〇三連星~四線を中心に、スピード最優先で大きく構えることを目指す作戦
〇中国流~高低のバランスを取り、足元を固めながら勢力圏を広げていく作戦
〇星とシマリの布石~じっくり腰を落ち着けて、相手の出方を見ながら打ち方を決めるような作戦
※その他、とにかく確定地を取っておき、後から模様の中に入っていって勝負、といった布石法もある。

・まず、勢力圏を広げる際には、入られても困らないように気を使っていることが大切である。
・基本的にはヒラキは五間幅までが無難とされている(応用で六間にヒラくこともあるが)
・また、相手の勢力圏の近くの石は、しっかりと守ること
(これは打っているとつい忘れがちだが、非常に重要)
☆布石の手順を丸暗記するのではなく、こういった考え方を身に付けてほしいという。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、143頁~144頁)

第6章 三連星①


【三連星①のテーマ図】
≪棋譜≫(145頁)
・黒1、3、5が三連星である。
⇒三連星と言えば、武宮正樹九段が有名である。
 三連星から豪快な模様を張る「宇宙流」は一世を風靡した。
※足早に勢力圏を広げ、入って来た白を攻めるのが基本パターンである。
※模様や攻めの碁が好きな方には、おすすめの戦法。
(地を気にしてしまうと、上手くいかない)

【1図:中央へ勢力圏を広げよ】
≪棋譜≫(146頁の1図)
※隅や辺を地にすることにはこだわらず、どんどん勢力圏を広げていく。
 また、辺へのヒラキ方は黒7など、なるべく高く構える。
※中央へ勢力圏を広げることを意識せよ。
【2図:勢力圏内での戦いは大歓迎】
≪棋譜≫(146頁の2図)
・白8は黒a(16, 六)と受けさせ、黒の勢力圏を小さくする狙いである。
・これに対しては、黒9などとハサむのがおすすめ。
※黒の勢力圏なので、戦いは大歓迎。
【3図:三々に入って来た石を閉じ込める定石】
≪棋譜≫(147頁の3図)
・ハサミには白10と三々に入れば無難。
・黒25まで長い手順になるが、これはぜひ覚えよ。
※三々に入って来た石を閉じ込める定石は、必ず必要になると、白石勇一氏は強調している。
【4図:模様の接点を逃すな】
≪棋譜≫(147頁の4図)
・白26に対しては黒27と、模様の接点を逃さず打つこと。
※このように大きく構え、白が中に入って来たら攻める作戦。
 a(10, 十八)のスソアキは当面気にしてはいけない。
【5図:変化図】
☆4図黒27で地を気にして黒1と打ったりすると、せっかくのスピードを失ってしまう。
・白20となって、白の方がのびのびした姿になる。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、145頁~148頁)

第6章 三連星②


【三連星②のテーマ図】

☆黒の三連星に対し、白も三連星で対抗して来ることもある。
 この場合、黒がやるべきことは変わらない。とにかく大きさ比べに勝つことである。
(黒番であれば、思い切り広げている限りは大丈夫)

【1図:模様の張り合いの展開】
≪棋譜≫(152頁の1図)
・このような模様の張り合いの展開もある。
⇒こういう時は、黒9のような模様の接点を逃さないように。
(白に打たれると、白模様の方が大きくなりかねない)
【2図:急所を逃すな】
≪棋譜≫(152頁の2図)
・黒13は下辺の星(10, 十六)が狙われないように守る手である。
 同時に模様の谷を深くしてもいる。
・黒15は模様の接点である。
※こういう碁では逃がせない急所なので、迷わず打とう。
【3図:根拠を奪う常套手段】
≪棋譜≫(153頁の3図)
・黒模様が大きくなったので、白16と入りたくなるが、そこですかさず、黒17、19が根拠を奪う常套手段。
・黒23まで、白は非常に窮屈な姿になっている。
【4図:理想的な展開~サガリがよい攻め方】
≪棋譜≫(153頁の4図)
・白24、26と守れば、すかさず黒27のサガリがよい攻め方。
⇒白の根拠を奪いながら、a(17, 十七)の三々入りを無くしている。
※白を攻めている間に、自動的に黒地が増える、理想的な展開である。
【5図:変化図~三連星の趣旨に反した展開】
≪棋譜≫(154頁の5図)
☆1図黒9で本図黒1などもいい所であるが、白2がいかにも絶好点である。
⇒この後、黒a(6, 三)やb(3, 六)と入らされる展開は、嬉しいものではない。
 三連星の趣旨に反している。

【6図:変化図~スケールの小さい構えに】
≪棋譜≫(154頁の6図)

☆また、2図黒15で本図黒1と急に地を気にしてしまうのも、いけない。
⇒白2、4となると、いっぺんにスケールの小さい構えになってしまう。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、151頁~154頁)



第6章 中国流①


【中国流①のテーマ図】
≪棋譜≫(155頁)
※中国流は三連星と同じく、足早に勢力圏を広げて白の侵入を待ち構える打ち方である。
 三線に石が二つある分、三連星に比べるとやや腰を落とした打ち方と言える。
※中央へ勢力圏を広げるスピードでは劣るが、隅や辺に侵入して来る手に対しては強い。
☆四線ばかりだと足元が気になる方には、こちらがおすすめ。

【1図:中国流の打ち方】
≪棋譜≫(156頁の1図)
※右辺を3手で済ませ、どんどん他へ勢力圏を広げていく。
・隙間が空いているので、白a(17, 六)やb(16, 十五)に入る余地はある。
⇒しかし、黒はそれを待ち構えている。
【2図:黒は下辺に展開して、白の侵入を待ち構える】
≪棋譜≫(156頁の2図)
・白6、8など、外側から黒の勢力圏を制限するのが、白の正しい態度である。
※その代わり、黒は下辺に展開して、白a(16, 十五)やb(11, 十七)の侵入を待ち構えることになる。
【3図:その後の展開①~一つの定石】
≪棋譜≫(157頁の3図)
・白1なら黒2から攻める。
・白17までは一つの定石であるが、黒は下辺、右辺が自然に固まる。
※先手も取れるので、黒18などに回り好調。
【4図:その後の展開②~右下を拡大する展開】
≪棋譜≫(157頁の4図)
・白1なら黒2から攻める。
・黒12までは一例であるが、白を攻めながら自然と右下を拡大する展開になれば、理想的である。
※このように、中国流も攻めを意識した布石なのである。

【5図:変化図①~白は右辺に入っても、根拠の無い石に】
≪棋譜≫(158頁の5図)
・1図の後、白1と入っても白7までしかヒラけず、根拠の無い石になってしまう。
・黒10までは一例であるが、白を攻めている間に、周囲の黒がどんどん強くなっていく。
【6図:変化図②~黒の嬉しい展開】
≪棋譜≫(158頁の6図)
・また、六間幅なので、白1と入りたくなるが、これも罠である。
※白は狭い所を何手も打たされることになり、黒は外側に石が増えていくので、嬉しい展開である。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、155頁~158頁)

第6章 中国流②


【中国流②のテーマ図】
≪棋譜≫(159頁)
・今度は白が変化して、白6から下辺に展開して来た。
⇒それなら、黒は上辺へ展開するのが自然な進行というものである。
☆一例として黒11までと構えた後の展開を考えてみよう。

第6章 布石紹介(星とシマリの布石)


第6章 布石紹介(三連星、中国流、星とシマリの布石)
【星とシマリの布石】
【テーマ図】
・シマリはまず一隅を確保し、拠点にする打ち方。
➡種類、向きなどは色々とあるが、いずれもただ地を稼ぐ手ではない。 
・滅多なことでは死なない2子なので、周囲にできる勢力圏も強力。
 これを意識して打とう。
※三連星や中国流に比べると、足は遅いが、隙の無い打ち方ができる長所がある。

【1図】
※小目からのシマリの特徴として、2手で隅を確保できている点が挙げられる。
※周囲に相手の石が来たとしても、危なくなる可能性は低く、安心して打つことができる。
【2図】
・白6と外側からカカると、黒も9、11と対抗して、模様の張り合いになりやすい。
・黒13でシマリを中心にしたしっかりとした模様ができ、これは黒にとって理想的な展開。
【3図】
・その後、白1と打ち込んで来た場合を考えてみよう。
※シマリがしっかりしているので、右側を心配する必要がない。
・黒6まで、どんどん攻めて好調。
【4図】
・右辺に白1と入るのも窮屈。
・黒10までは一例であるが、右辺や下辺の黒がどんどん固まっていく。
※白はただ逃げるだけになってしまうので、これも黒好調。
【5図】(変化図)
・2図白6で右辺に割り打ちする手もある。
・これに対しては、黒2から上辺を大きく構えるのが、一つの行き方。
・白3に石が来ても、既にシマっているので、大丈夫。
【6図】(変化図)
・白1に黒2と割り打つなどもよい。
※お互いに大きな模様ができない、じっくりした展開。
 相手の出方を見ながら、好みの打ち方を選べるのも、この布石の利点。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、163頁~166頁)

第7章 第3問~中国流


【第7章 第3問】
・鈴木嘉倫七段との対局で、著者の黒番。
・特に重要なのは、なぜ白14や白20の肩ツキを打ったかということ。
・これらの手で、右辺や上辺に打ち込む手の是非も考えてみてほしい。
・なお、スペースの都合上、解説していないが、黒19は上下の白を分断して、右辺白への攻めを狙いながら、下辺白の勢力圏の広がりを制限している。非常に重要な一着。

【1図】(実戦黒1~9)
・黒の中国流に対し、白6、8と下辺に勢力圏を広げて、対抗した。
・黒9は、上辺に勢力圏を広げつつ、右辺への侵入に備えている。
【2図】(実戦白10~黒13)
・白10も同様の意味で、左下の勢力圏を固めて、対抗した。
・黒11、13と広げられ、右辺から上辺にかけて、大きな黒模様ができそうだが…。
【3図】(実戦白14~白20)
・そこで白14の肩ツキから、消しに出た。
➡黒地を辺に限定すれば、十分という考え方。
・黒19にさらに白20と肩ツキしたのも、同様。
【4図】(変化図①)
・実戦白14で、本図白1のように入るのは、黒が待ち構えている所。
※周囲が黒石ばかりなので、一方的に攻められて、形勢を損なう。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、179頁~182頁)

第8章 知識編


・本書の最終章は、知識編。
 前半は前作と同様、囲碁用語の説明。
 言葉は知っていても、意外と本当の意味や役割の理解が不完全の人も多い。
・後半は、定石や定型の中で、これを覚えておくと、必ず役に立つ、というものを詳しく解説している。
 俗に「定石を覚えて2目弱くなり」などという。 
 その真意は、定石の意味を理解せず、手順だけを丸暗記していると、状況に合わせない定石を平気で打って失敗してしまう、といったところ。
 それは一理あり、定石は打てば得点が入るような万能なものではない。
 正しい使い方を知らないのであれば、状況をしっかり見て判断し、自分の頭で考えた手を打った方がずっとよい。
※ただし、そうは言っても、知らなければなかなか打てない手もある。
 そして、その手を逃したばかりに形が崩れ、どうにもならなくなってしまうようなこともある。

・死活が絡んでいる場合は、さらに深刻。
 定石を知らなかったばかりに石が死んでしまったという経験は、覚えがあるのではないだろうか。
 また、気が付いていないだけで、大損をしているケースもよくある。
 例えば、生きている石に手を入れたり、逆に取れている石にさらに手をかけてしまうケースである。
(それは、場合によっては1手パス同然になってしまう)
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、198頁)

囲碁用語


・囲碁用語については、次の用語を解説している。
【ヒラキとツメ】
【二間ビラキ】
【二間ビラキもどき】
【割り打ち】


【ヒラキとツメ】
・ヒラキとは、隅や辺の石から、辺に向かって展開する手の事を指す。
 通常は三線か四線である。
 目的は勢力圏を広げること、または弱い石を守ることである。
・ツメは相手の石に詰め寄り、ヒラキを妨害する手。
 目的は、主に攻めを狙うことであるが、相手の勢力圏を狭めたり、自分の勢力を広げる目的でも打たれる。
※また、多くの場合、ツメは自分の石からのヒラキにもなっている。ヒラキながらのツメということで、ヒラキヅメとも呼ばれる。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、199頁)

【二間ビラキ】
・二間ビラキの強みは、非常に切られにくいこと。
 その強みを生かし、主に石を補強する際に使われる。
・図は上辺、右辺、下辺が三線、左辺が四線の二間ビラキ。
 中央は、ヒラキではなく二間トビ。
・試しに、白1から中央の二間トビを切りにいってみよう。
 ちょっと強引だが、一応白5までと切ることができた。
・では、上辺で同じように切りにいくとどうなるだろうか?
 黒6まで、逆に白が取られてしまった。
➡これが二間ビラキの強み
※四線の二間ビラキの場合は多少手段の余地は生じるが、やはり切るのは大変。

〇ただ、実際には、辺で安定する際には、三線の二間ビラキが基本。
 というのは、四線に足元に隙があるからである。
 白aにスベられると、簡単に根拠を奪われてしまう。
 一応、三線の二間ビラキに対して、bやcと足元から侵入することも不可能ではないが、離れた手なのでリスクもある。
・よって、三線の二間ビラキは多用されるのだが、2手だけで生きているわけではない。
 下辺のように、両側に詰め寄られている時は、気をつけよう。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、200頁)

【二間ビラキもどき】
・右上白1のハイコミを打たれ、右上黒が心配。
・そんな時は、右辺にヒラいておく必要があるが、白石にくっつける黒2は進みすぎで、黒aが正着。
※この黒2のような手を、著者は「二間ビラキもどき」と呼んでいる。
 二間ビラキと違って俗筋の代表であるが、残念ながらアマの人には大人気(笑)

・この後の進行を左上に示しておこう。
・白2のオサエに黒3と打ちたくなるが、白4と「2目の頭」をハネられてしまった。
※黒はダメヅマリで不自由な形になっている。
・この後、白10までは代表的な進行だが、黒石が内側に引きこもり、外の白はすっかり強くなってしまった。
※この二間ビラキもどきが悪いと理解しておくと、他の場面でも役に立つ。

〇右下を見てほしい。
黒▲のは隅の星からの五間ビラキであり、多用されるが、何故ここまでヒラけるのかを考えてみよう。
・白1のカカリに対して、黒2、4は攻めの常套手段。
・この後、白は二間ビラキができない。
 白bと打つのは「もどき」であり、よくないことはこれまでの図から明らか。
※つまり、白は根拠の確保が難しく、弱い石を作る結果になるのである。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、201頁)
【割り打ち】
・相手の勢力圏を分断するため、真ん中付近に打つ手を割り打ちと呼ぶ。
・なぜ真ん中かと言えば、次にどちらかの方向にヒラいて、根拠を確保できるから。
・カカリなどに比べると、急な戦いになりにくいという特徴がある。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、202頁)

定石や定型


【定石や定型】
・テーマ図1コスミツケへの三々・①
・テーマ図2コスミツケへの三々・②
・テーマ図3コスミツケへの三々・③
・テーマ図4ハイコミからの置き
・テーマ図5大々ゲイマへの打ち込み
・テーマ図6三々に入った石の閉じ込め方
・テーマ図7三々ツケからの攻防

【テーマ図5:大々ゲイマへの打ち込み】
≪棋譜≫(214頁のテーマ図5)
・白△の大々ゲイマの構えは、三間なので打ち込みが狙える。
・黒1と打ち込み、白2に黒3の割り込みがポイント。
※シチョウ関係があるので、あらかじめ確認してから、決行しよう。

【1図:通常の形】
・白1のオサえれば、穏やか。
・黒6まで白の根拠を奪い、aと切る狙いも残った。
※黒としては、満足できるワカレ。
【2図:白1の成立はシチョウ関係次第】
・白1と切れば、黒2と逃げる一手。
※この後、シチョウ関係が問題になる。
【3図:シチョウその1】
・まず、白1と取る手。
・これには黒2~6とシチョウに抱え、この石を取れるかどうかが問題になる。
・シチョウが悪くて逃げ出されてしまうと、黒バラバラでいけない。
【4図:シチョウその2】
・もう一つは、白1とつなぐ手。
・すると黒2とアテ、これもシチョウ。
※3図とは方向が違うので、注意。
 打ち込む前に、両方のシチョウ関係を確認しておこう。
【5図:黒失敗】
・白1のツケに黒2と打ってしまうのは、よくある失敗。
・白3と切られて、ダメヅマリになり、苦しくなる。要注意。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、214頁~215頁)

【テーマ図6:三々に入った石の閉じ込め方】
≪棋譜≫(216頁のテーマ図6)
☆三々に入って来た石への対応は、定石の中でも非常に重要。
⇒間違えると、いっぺんに形が崩れてしまうこともある。
 特に次の一手は、絶対に逃してはいけない。
【1図:絶対の一手~ノビ】
≪棋譜≫(216頁の1図)
・黒1のノビが絶対の一手。
※これはハサミが黒(8, 十七)以外のどこにあっても、あるいは何もない場合でも同じ。
 自分の2目の頭であり、相手の2目の頭も狙う、形の急所なのである。
・白2と守れば穏やかで、黒3と止めて、定石完成。
【2図:内→外の手順で切る】
≪棋譜≫(216頁の2図)
・白1の押しが少し難しい手。
・これには黒3から切りを2つ入れるのがポイント。
【3図:目的達成】
≪棋譜≫(217頁の3図)
・白1を待って黒2とハネれば、白a(7, 十五、つまり黒2の右)とハネられなくなっている。
・白3と1目取るぐらいなので、黒6まで閉じ込めることができた。
※ハサミの位置が変わっても、大抵は同じ打ち方で閉じ込めることができる。
【4図:切る順番が大事】
≪棋譜≫(217頁の4図)
・2図で切る順番を間違えて、黒1は、白2と取られて失敗。
※白は、1目ポン抜いて厚くなり、黒(8, 十七)の存在がかすんでしまった。
【5図:急所を逃す】
≪棋譜≫(217頁の5図)
※もし1図黒1のノビを逃してしまうと、どう打ってもよくならない。
・白4に切りが入り、黒の外勢は崩壊するだろう。
(白石勇一『やさしく語る 布石の原則』マイナビ出版、2017年、216頁~217頁)

【補足】布石 削減の手筋~藤沢秀行『基本手筋事典 下』より


削減の手筋


・拡大と逆の立場にあるのが削減。
 相手のモヨウ拡大を未然に防ぐのがその目的である。
 双方のモヨウが接しているときは、削減の手段が拡大の手段を兼ねることも多い。
・単騎で敵のモヨウに乗り込むばあいには、主として第三線のヒラキに対する圧迫手段となる。
 早期にキメては相手を固めただけとなるし、時期が遅れては逆襲の恐れが生じる。
・削減の基本的パターンは限られており、むしろ応手に変化が多い。
(藤沢秀行『基本手筋事典 下』日本棋院、1978年、72頁)

【1図】(カタツキ)
・白1がカタツキ、最も深い削減手段である。
・黒2、4が基本の受けで、白の足もとをさらって将来の攻めを見込む。
※黒モヨウの谷がごく深ければ、白1にaなどと攻められて、危険。
※左方にも黒モヨウが広がっていれば、黒4でbとオサれて、つらい。
(藤沢秀行『基本手筋事典 下』日本棋院、1978年、72頁)

カタツキ


【カタツキ 黒番 原図】
・黒の形は厚みともいいきれず、白からヨリツかれては、上辺が盛り上がる。
・機先を制して、上辺を消す急所はどこか。

【1図】(ボウシ)
・黒1のボウシなどでは、白2と受けられて、上辺がぴったりの構えになる。
・白aとオサれては、まだけっこううるさい。
・といって、黒aのオシは損がさきだし、黒bは白1で苦しい戦い。

【2図】(黒1、急所)
・aのオシを含みに、黒1とカタにカケて、上辺を第三線の地に限定してしまう。
・白2、4と出て来ても、これで行き止まり。
・黒13とキッて、この厚みは相当なものだろう。


【3図】(伝家の宝刀)
・前図白6で1とツイだときにかぎり、黒4のオシから6と打つのである。
※黒8ののち、白aなら黒bとオサえてよく、白bなら黒aのタタキを打つ。
※白1は黒に調子を与えるだけだ。
(藤沢秀行『基本手筋事典 下』日本棋院、1978年、78頁)



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