歴史だより

東洋と西洋の歴史についてのエッセイ

≪囲碁の布石~石田芳夫氏の場合≫

2024-12-28 19:00:06 | 囲碁の話
≪囲碁の布石~石田芳夫氏の場合≫
(2024年12月28日投稿)
 

【はじめに】


今回も引き続き、囲碁の布石について、次の著作を参考にして、考えてみたい。
〇石田芳夫『実戦に役立つ互先の布石 応用編』産報出版、1982年
 著者の石田芳夫九段は、プロフィールにあるように、正確な目算とヨセから「コンピューター」のニックネームがある有名な棋士である。
 そして、多くの俊英のプロ棋士を輩出した木谷実門下である。武宮正樹氏、加藤正夫氏と共に「木谷門の三羽烏」といわれた。
 本書の構成は、先に紹介した大竹英雄九段の布石の本と似ていなくもない。
 さらに実戦型に即して、詳しく棋譜解説をされている点が特徴的である。

【石田芳夫氏のプロフィール】
・1948年生まれ、愛知県出身。木谷実九段門下。
・1971年に22歳の当時史上最年少で本因坊となって秀芳と号し、本因坊5連覇により名誉称号を名乗る。
・正確な目算とヨセから「コンピューター」のニックネームがある。



【石田芳夫『実戦に役立つ互先の布石 応用編』はこちらから】



〇石田芳夫『実戦に役立つ互先の布石 応用編』産報出版、1982年
本書の目次は次のようになっている。
【目次】
はしがき
第1章 小目の布石
 第1型 現代の花形布石
 第2型 手堅い布石
 第3型 秀策流の布石(1)
 第4型 秀策流の布石(2)
 第5型 向い小目(1)
 第6型 向い小目(2)
 第7型 タスキ小目の布石
 第8型 総ジマリ(1)
 第9型 総ジマリ(2)
 第10型 総ガカリの布石
 第11型 シマリの布石

第2章 小目と星の布石
 第12型 足早やの布石
 第13型 黒、大模様の布石
 第14型 辺が勝負の布石
 第15型 黒、四隅を取る
 第16型 辺を重視の布石
 第17型 中国流の布石(1)
 第18型 中国流の布石(2)
 第19型 中国流の布石(3)

第3章 星の布石
 第20型 三連星の布石(1)
 第21型 三連星の布石(2)
 第22型 二連星の布石(1)
 第23型 二連星の布石(2)
 第24型 タスキ星の布石

第4章 特殊な布石
 第25型 直接掛かる布石
 第26型 小目対峙の布石
 第27型 目外しの布石
 第28型 三々の布石

布石のテスト1~25




さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・第1章 小目の布石 第1型 現代の花形布石
・第1章 小目の布石 第3型 秀策流の布石(1)
・第2章 小目と星の布石
・第2章 小目と星の布石 第12型 足早やの布石
・第2章 小目と星の布石 第17型 中国流の布石(1)
・第3章 星の布石
・第3章 星の布石 第20型 三連星の布石(1)
・第4章 特殊な布
・第4章 特殊な布石  第25型 直接掛かる布石






第1章 小目の布石 第1型 現代の花形布石


【第1型 現代の花形布石】
≪棋譜≫(1-41)

<第1譜>(1-18)無難なスタート
・黒1、3の小目対白2、4の構えは、最も現代的な布陣といってよいだろう。
・黒5のシマリは、黒として当然の態度で、白も6のカカリはごく普通。
・黒7、9のツケヒキに白10が絶対。
・白12で右下が一段落したので、黒は13のカカリが最大。
・白14の二間高バサミから白18までは誰でも知っている定石であるが、ここまでは現代花形布石の一型といえる。

<第2譜>(18-21)大きなツメ
・左上を先手で切り上げた黒は、19のツメが最大。
(しかも、黒19のツメは半先手の意味がある。というのは、黒19とつめられると、白は20のトビが余儀ない)
・白20の辛抱はほぼ仕方ない。
※これで右上、右下、左上がほぼ形がついた。
 残るは左下の白三々。
・黒のカカリはいろいろあるところだが、黒21とかかるのがこの形では一般的。

<第3譜>(21-26)「この一手」
・黒21のカカリに対し、白の応手は22の一間が一番力強いだろう。
・黒23の二間ビラキは「この一手」。
・白24の一間トビも「この一手」。
・黒25のツメは沈着な好手。

<第4譜>(26-41)中原が「勝負」
・白26のトビは厚い手。
※こう打っておくと、左辺の黒二子が無言の威圧を受けている。
・黒27のツケは彼我の要点。
・白28のヒキは戦いの常識だろう。
・黒29となれば、白30のマゲは絶対。
※このマゲは単に黒の模様が広がるのを防いでいるだけでなく、秘かにキリをねらっている。
 この白30のように着手は一つの目的だけでなく、二つ三つとたくさんの目的を持っている方が優ることは言うまでもない。
・黒33は白のキリに備えつつ、右上の黒地の補強にも一役買っている。
 これで右上は一段落し、白の次の目的は右辺一帯を中心とした模様の盛り上げ。
・白34の二間はいい見当で、黒35の受けも仕方ないが、次の白36が作戦の分れ道だろう。
・白36以下40と思い切って押し、中原が勝負の碁。

【本型のポイント】
・黒が実利をがっちり取り、これに対して白が右辺を中心にした模様で対抗した。
・模様の打ち方はお互いにむずかしいのであるが、第4譜の白26、黒27、白30、34など学ぶべき手法である。
(石田芳夫『実戦に役立つ互先の布石 応用編』産報出版、1982年、15頁~21頁)

【第3型 秀策流の布石(1)】


【第3型 秀策流の布石(1)】
≪棋譜≫(1-44)

<第1譜>(1-8)現代的なハサミ
・黒1、3の小目に対してすぐ白4と掛かるのは、黒にシマリを許さないという態度。
・これに対して黒は5と左下隅を占め、これが昔からある「秀策流1、3、5の布石」。
・白は再び右下に6と掛かるが、このカカリでは、高いカカリもよく見られる。
・次の黒7の二間高バサミに現代の臭いがする。
※コミのある現代では、こうやって積極的にやってゆくが、コミのない昔の打碁には、黒のコスミがよく見られた。
・ここで白はすぐ4の一子を動き出すのが普通であるが、白8と変化をもたせたのは、白として一つの作戦。

<第2譜>(8-17)手筋の応酬
・白8の作戦というのは、黒のコスミツケを打ちにくくしていること。
・黒9のツケは当然の一手。
・白は10とのび込んで、様子を見る。
・黒11のオサエは気合いというもので、黒13のツギでは白11とはい込まれて、気合い負け。
・白12は筋。
・黒13のツギは仕方ないだろう。
・白も14、16とおとなしく応じる。
・黒17の打込みは衆目の集まる好点。

<第3譜>(17-27)大場の打合い
・白18はつらい屈服だが、仕方ない。ここは白も威張れないところ。
・黒19と高く締まりたい気分。
※なぜなら、左上、右上、右辺すべての白が低いので、黒19の一間が光ってくる。
・白20のヒラキ、黒21の肩ツキと大場の打合い。
・白24のマゲは理由のある手。普通はケイマ。

<第4譜>(27-44)双方順調
・白28と下辺に割打ったのも、注文を含んだ手。
・黒は29とつけ、忙しく打っていく。
・白はともかく30のノビを打たなければならない。
※急いで32とひらくと、黒30と押さえられてしまう。
・黒は33と隅を押さえたが、これは仕方ないだろう。
・黒に33と押えられれば、白も34と補うのは当然だろう。
・黒35から39とつめ、黒41と好調の足どりであるが、白も42とひらいてゆっくりしたペースである。

【本型のポイント】
・「秀策流」の布石は、昔から不変の布石として息づいている。
・しかし最近比較的みられないのは、白がコミを意識して、避けているから。
・本型、下辺の打ち方に、白はいろいろと工夫がいる。
(石田芳夫『実戦に役立つ互先の布石 応用編』産報出版、1982年、33頁~39頁)

第2章 小目と星の布石


【小目と星の布石】
・小目と星を組み合わせた布石は、比較的最近打ち出されたもの。
 この布石の大きな特長は、小目の実利性と星の勢力性を巧みに組み合わせたもの。
 これならば、実利に走り過ぎることもないし、逆に勢力過剰で地にあまくなるという心配もない。
・本章で取り扱ったものは8型であるが、この8つを頭に入れておけば、「小目と星の布石」は一応無難にこなすことができるといってよい。
・また、この布石の最近の大きな特色は、「中国流」の開発。
 中国流はシマリを省略して、スピードで自己の勢力圏を築いてしまうというもの。
 本場の中国の人が好んで使うところから名付けられたが、本章でも3つの型を選んでみた。
(なお、タスキ型は省略した)
(石田芳夫『実戦に役立つ互先の布石 応用編』産報出版、1982年、122頁)

第2章 小目と星の布石 第12型 足早やの布石


【第12型 足早やの布石】
≪棋譜≫(1-47)

 第12型 足早やの布石
<第1譜>(1-13)ポピュラー型
・黒1の小目と黒3の星のコンビネーションは、最近プロの対局でもよく見られる。
※小目と星の組み合わせは、小目の実利と星の勢力によって、バランスを保とうという考え。
・黒5と締れば、白6の割り打ちはほぼ絶対。
※同点へ黒に打たれると、黒の構えがいかにもよくなってしまう。
・なお、白6ではA(17, 九)と割り打つこともあるが、そのときは左下に白の勢力(たとえば白4、8の小ゲイマジマリ)があるとき。
・黒7の一間高ガカリから黒13のヒラキまでは、おなじみの定石。

<第2譜>(13-18)一本道の進行
・黒13とひらいたとき、白14のツメは絶対。
・白14は次に白A(3, 十二)の打込みをねらっていることは言うまでもない。
・黒15のツメはこれが正しい。
・白16の二間ビラキは本手。一路進めて三間にひらくのは、一手戻るので得にならない。
・黒17の大ゲイマも本手。
・白18の走りも当然だろう。
※今度黒E(17, 十五)とこすまれると、右辺の二子が苦しくなる。

<第3譜>(18-28)三々の荒し方
・白18のスベリに対し、常識的には黒A(17, 十七)と受けるのだろうが、この局面ではこれは小さい。
・いま一番急がれるのは、黒19のカカリ。黒19は積極的な打ち方で、白も20のハサミが積極的なよい手。
・白20とはさまれれば、黒は21と三々へ入る一手。
・白22のオサエに黒は23、25とはねつぐ感じ。
・黒27とケイマすれば、白は28の備えが省けない。

<第4譜>(28-34)文句のない大場
・黒29のツメは文句のない大場。
・白30のツケ以下は定石。
・白30、32のツケヒキには黒33が正着。
※黒33は将来B(18, 十五)のツケ味ねらっている。
・白34のコスミツケは厚い手。
・黒が29へきているので、白34は相場。

<第5譜>(34-46)ツケノビの効用
・白34は本手。
・白40の守りに、黒41、43のツケノビが好手。
※このツケノビは右上の拡大は言うまでもない。もろもろの味を有効に防ごうというのが、黒41、43のツケノビ。またこのツケノビが白の左上の模様拡大を阻止していることは、いまさら言うまでもない。
・白は44から白46とついだが、これは本手。

<第6譜>(46-47)いい勝負
・白が46と一手入れてくれたのだから、黒も47と一手備える。
※もうこれからあとは、中盤の戦いとみてよい。
※右上の黒地が大きそうだが、丸々地にはならないだろうから、結構好勝負と思われる。

【本型のポイント】
・小目と星の組合せは、言葉を変えれば実利と勢力の組合せ。
・従って、全局的なバランスが大切となってくる。
 本局でいえば、上辺19のカカリから三々に入ったタイミングを学んでほしい。
(石田芳夫『実戦に役立つ互先の布石 応用編』産報出版、1982年、123頁~132頁)

第2章 小目と星の布石 第17型 中国流の布石(1)


【第17型 中国流の布石(1)】
≪棋譜≫(1-46)

<第1譜>(1-9)スピード豊か
・黒1、3から5と辺に構えるのは、俗に「中国流」と呼ばれている。
※黒の趣旨は、スピードで勝負しようというもの。
・白6のシマリ、黒7、白8とお互いに大場へ先行しているように、この布石は模様の碁に発展する可能性が比較的多い。
・黒9と大ゲイマに掛かるのは常識。

<第2譜>(9-16)模様への対策
・黒9のカカリ。
・白10のケイマは当然であるが、ここで黒11ととんだのが目に引く手。
・黒11と白12を交換するのは通常惜しい打ち方であるが、このような模様の碁では許される打ち方といってよいだろう。
 もうひとつ、黒は左辺へ打ち込む可能性があまりないことも、黒11と打った理由。
・黒13のヒラキに白14のカカリは絶対の一手。
 白は右下に掛かるか、右上へ掛かるかの二者択一であるが、この模様では右下が優先する。
・相手の模様の中へ飛び込むときは、軽く打つのが肝要。白14の一間高ガカリの方が軽い。
・白16とつけたのも、軽くゆく方針。

<第3譜>(16-26)白、トビトビ
・白16とつけられれば、黒17のハネから19のノビは当然。
・白20のマゲから22ととんだのは、ごく常識的な打ち方。
・白は22と打つことによって、黒の大模様を適度に消すというのが、普通の考え方。
・黒23の受けは仕方ないだろう。
・白24ととんだのも、大勢上のがせない。
・白24ととべば、黒25の受けは相場。
※黒が25と受けて、右方は一段落。
・白は26のツメが最大となる。

<第4譜>(26-42)囲い合い
・黒27、29のツケヒキは無駄のないところ。
・白は28から30が正しい受け方。
・黒が31と守れば、白も32と守ったのは仕方ないだろう。
※白32と守ると左辺の白地は十九路ぶっ通しで大きそうだが、白はいわば一カ地。
 対する黒は下辺と右上一帯に大きな地を持っているので、いい勝負と見られる。
・黒33のツケは様子を聞いたもの。
・白34のオサエから38のヌキまでは定石で、黒は39とつけるのがねらい。
・黒39のツケは、大局上の要点。
 黒がここへ打たないでいると、白から41のトビが好点で、左上一帯がグーンと盛り上がってくる。
・白40のハネは当然であるが、黒41のノビも肝要。

<第5譜>(42-46)互角の形勢
・白42のノビから44のツギは仕方がない。
・白44のツギは足が遅そうだが、白44とつげば、黒も45の備えが省けない。
・つづいて白は黒からのデギリに備えて、46のケイマ。これで互角の形勢だろう。

【本型のポイント】
・中国流の布石から生じる典型的な大模様の碁。
・大模様というのは、心もち黒が打ちやすいようであるが、ひとつ判断を誤ると、取り返しのつかないことになりかねない。
(石田芳夫『実戦に役立つ互先の布石 応用編』産報出版、1982年、177頁~184頁)

第3章 星の布石


・星の布石は、いうまでもなく勢力を前面に打ち出した布石。
 しかも星というのは、高目などに比べ、地の点でも、まるっきりあまいということもない。
・もうひとつの大きな特色は、星の定石というのは、小目その他に比べ、複雑さがない。
 初級者が置碁から離れて、互先の碁を打つ場合も、星の布石は手っとり早いと言える。
・最近の専門棋士の布石傾向としても、星の布石は激増している
 勢力とスピードでコミを吹っ飛ばしてしまおうというのであろう。
・星の布石は、二連星とタスキ星の二つに分類される。
 二連星は三連へ発展できるように、勢力一本ヤリの布石といえるし、タスキ星は臨機応変の器用さがある。
 スペースの関係でタスキ星の布石は1型しか紹介できなかったが、二連星と三連星を重点的に勉強してほしい。
(石田芳夫『実戦に役立つ互先の布石 応用編』産報出版、1982年、212頁)

第3章 星の布石 第20型 三連星の布石(1)


【第20型 三連星の布石(1)】
≪棋譜≫(1-42)

<第1譜>(1-8)三連星
・黒1、3と二隅の星を占めるのを二連星という。
 もちろん地よりも勢力に重点を置いた打ち方。
・つづいて黒5と辺の星を占めるのを三連星といい、スピードのある打ち方。

<第2譜>(9-23)絶対の肩つき
・黒9のカカリに白10と掛かり返したのは、策のあるところ。
※白10でA(4, 十四)と受けていれば普通であるが、すると黒12と構えられるのがすばらしい。右辺の三連星と呼応して、黒の理想形となる。
・黒11とおとなしく受けた。
(黒11のような受けは、おおむね悪い手にはならない)
・白12のハサミは当然だろう。
・黒13の三々入りでは、21またはA(4, 十四)などとハサミ返す定石もあるが、互先の碁では黒13と入るのが実利の大。
・白14の遮断から21まではおなじみの定石。
・ここで白は22が省けない。白22は本手の守り。
・白が下辺を守れば、黒は左上に向う一手であるが、23と肩をつくのが絶対だろう。

<第3譜>(23-31)三々の肩つき
・黒23の肩つき。
・黒23の肩つきに対し、白はハイ方が二通りあるが、通常は「自分の強い方へはえ」と記憶しておくと便利だろう。従って、白24のハイは当然。
・黒25のノビに対して、白26と曲げたのが好手。
・白28のノビに黒29は形。
・白30ととんで一段落。
・黒31では右下のシマリもあるが、石の流れからいくと31だろう。

<第4譜>(31-42)きびしい打込み
・黒31と上方をしまれば、白32の三々は絶対。
・黒は33のオサエから35と打つのがコツ。
・黒39、白40の交換はこんなもの。
※黒は下辺に打込む碁ではないから、白40と受けさせても惜しくはない。
・つづいて黒41の打込みが作戦の岐路。
※黒41の打込みは、先に31と締った手を働かす意図も含んでいる。

<第5譜>(41-53)打込みをめぐって
・黒41の打込みに対し白42のツケは「この一手」といってよい。
・白42のツケに対し、黒43と割込んだのはきびしい手。
・白44、46の受けは仕方ない。
・白46のヒキに対して黒47とはったのは仕方ない。
※ここは戦いを起すところではなく、黒47以下51までガメツク地をかすって53と渡ってしまう。黒かなりの戦果であろう。

<第6譜>(53-55)白のねらい
※前譜黒41の打込みから本譜53のワタリまでは、比較的常識的なワカレ。
・黒53のワタリに白54の守りは省けない。
※しかし白54の守りは、ただ自己の補強ではなく、ねらいを秘めている。
・黒55は本手。

【本型のポイント】
・第6譜のあとは、左上黒四子の去就が注目されるが、黒は上辺で稼いだのだから、少々の損失は覚悟しなければならないだろう。
・本型から学んでほしいことは、右辺の黒模様に対する考え方である。
(石田芳夫『実戦に役立つ互先の布石 応用編』産報出版、1982年、213頁~222頁)

第4章 特殊な布石


・「特殊な布石」と分類したが、内容的には前3章以外の布石というもの。
・第25型の「直接掛かる布石」というのは、アマチュアの人には少々むずかしいかもしれない。しかし逆に考えれば、むずかしいだけにおもしろいわけである。
 何もむずかしいのは、こちらだけではなく、お互いさまなのであるから。
・特殊な布石とはいっても、布石の理屈は他の布石とまったく同じこと。
 形にとらわれず、石の理屈を理解することが大切。
(石田芳夫『実戦に役立つ互先の布石 応用編』産報出版、1982年、270頁)

第4章 特殊な布石  第25型 直接掛かる布石



【第25型 直接掛かる布石】
≪棋譜≫(1-40)

<第1譜>(1-2)一間高ガカリ
・「特殊な布石」の最初は、黒1の小目に白2と直接掛かるもの。
・白2の一間高ガカリだと、黒は手を抜いてあき隅を占めるというよりは、何らかの挨拶をするというのが普通。
※なお、こういった碁だと、アマチュアの場合は平素の知識外の戦いになるので、本当に力のある人が有利ということが言えるだろう。

<第2譜>(1-18)左上隅が大きい
・黒3、5のツケヒキから7まではおなじみの定石だが、ここで白はA(9, 三)と打つのでは策に乏しい。
・このヒラキを省く意味で、白8と左上隅を占めるのが大切な考え方。
・白10の小目は正着。
・黒11のカカリに白12と一間にはさんで忙しく打ったのには理由がある。
(白12などの忙しいハサミだと、黒も手を抜いているわけにはいかない)
・黒13とケイマしたのにもわけがある。
・白14のケイマはこの一手。
・黒はなるべく上方にさわらず、15、17と左方にもたれていく。
・勢い白は18と曲げることになる。思いがけないところで戦いとなった。

<第3譜>(18-27)カカリを急ぐ
・黒19、21のハネノビは必然。
・黒が手厚く19、21とはねのびれば、白22の守りは仕方ないところ。
・黒23のハサミツケは手筋。
・白24とかわしたのは、味わいのあるところ。
・白24と受ければ黒25は絶対。これで黒は白をへこませた格好になったが、白も26とひらいて不満ないだろう。
・白26のヒラキは絶対で、もし他へ転じると黒C(3, 十三)とつめられて、全体の白が攻められることになってしまう。
・白26のカカリに対し、黒27と右下に掛かったのは、大きな手。

<第4譜>(26-32)白、両ニラミ
・黒27の小ゲイマガカリは「この一手」。
・また白28のコスミは、次に下辺のヒラキと30のカケを見合いにしている。
・黒は29とひらいた。
・白30のカケは、28とこすんだときからの予定の行動。
・黒31のトビに対し、白32と左下の三々へ入ったのは、大きな手。

<第5譜>(32-38)出口を止める
・白32の打込みを迎えて、黒はどちらから押さえるのが正着だろうか。33と34両方の打ち方があるが、正しいのは黒33。
・黒33と押さえれば、白34のワタリから36のツギまでは一本道。
・黒は37と押さえたが、ここはのがしてはならない点。
・白38のツメは大場。

<第6譜>(38-40)黒、不満なし
・白が38のツメで辛抱したのだから、黒は39のトビで不満はない。
・白40のケイマは、本型の白の基本方針である、「いなし」を継承している。

【本型のポイント】
・こういった布石は、あまり見かけないだけにむずかしい意味がある。
・従って、左上隅の打ち方、左下隅の打ち方などにおける石の理屈を十分理解していないと打てない。
(石田芳夫『実戦に役立つ互先の布石 応用編』産報出版、1982年、271頁~280頁)




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