≪死活の練習問題≫
(2021年11月9日投稿)
前回のブログでは、坂田栄男『囲碁名言集』(有紀書房、1988年[1992年版])の目次の最後にある「付 死活格言集」の内容を紹介した。 たとえば、「死はハネにあり」「一合マスはコウと知れ」「ハネ一本が物をいう」「眼あり眼なしはカラの攻合い」などである。
今回のブログでは、死活格言集に関連した死活の練習問題を編集してみた。
その際に、以下の著作を参照させていただいた。
〇山田至宝『初段合格の死活150題』日本棋院、2001年[2013年版]
〇工藤紀夫『初段合格の手筋150題』日本棋院、2001年[2008年版]
〇片岡聡『これだけできれば囲碁初段』成美堂出版、1993年
〇小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書、2000年
〇林海峰『コウは怖くない』日本棋院、2000年
〇林海峰『昇段編 差をつける定石探究』日本棋院、1987年
さて、呉清源先生は、「碁で大事なのは生き死にとヨセだ」と言われた。
小林覚九段も、「詰碁に挑戦するのが一番地力がつきますよ」と、囲碁の勉強法についてアドバイスしておられる。そして、序盤から終盤のヨセまで、死活力こそが碁の基礎筋力になり、「碁が強い人は死活が強い人である」と小林覚九段は断言しておられる。つまり、序盤から終盤のヨセまで、死活力がベースになっており、碁で一番大事なのは石の生き死にであるという。
(小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書、2000年、3頁、166頁)
まずは、手はじめに死活の練習問題に取り組んでいただければ、幸いである。
【坂田栄男『囲碁名言集』有紀書房はこちらから】
囲碁名言集
【小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書はこちらから】
はじめての基本死活 (棋苑囲碁基本双書)
さて、今回の執筆項目は次のようになる。
【問題33】(黒番)<1分で3級>
≪棋譜≫(83頁の問題図)
棋譜再生
☆第一感をきたえるのは、石の形をよく見極めること。
とくに死活の場面では石が混みいっており、その見極めがむずかしいこともたしかである。
ひとつの目安としては石の弱いところに注目すること。
弱点というのは、断点とダメヅマリ。
そこを突破口にして、感覚を高めること。
【正解:ハネからホウリ込み】
≪棋譜≫(84頁の正解図)
棋譜再生
・黒1のハネ一本から、3のホウリ込みが三手の読み。
※このように、ハネてスペースをせばめ、急所に打って殺す基本公式の代表例である。
「死はハネにあり」という格言は、応用範囲が広く、ぜひ覚えてほしい。
【失敗1:功を急ぐ~ハネずにホウリ込み】
≪棋譜≫(84頁の失敗1図) 黒5(1)、白6(1の左)
棋譜再生
・黒1のホウリ込みから打つのは、白2と取られ、3と4の点が見合いとなって、生きられてしまう。
※正解図のハネの効果をよく知ってほしい。
【失敗2:無策のアテ】
≪棋譜≫(84頁の失敗2図)
棋譜再生
・黒1で正解なら問題にならない。
(山田至宝『初段合格の死活150題』日本棋院、2001年[2013年版]、83頁~84頁)
【問題115】(黒番)<5分で初段>
≪棋譜≫(247頁の問題図)
棋譜再生
☆隅の基本形である。
黒番で白をどう仕留めるか。
初段合格のためには、ぜひマスターしなければならない関門である。
あらゆる攻防手段について、たがいに正確に対応できなければいけない。
それが即ち、応用力であり、この形をマスターしたことになるのだから。
【正解1:ハネ殺し】
≪棋譜≫(248頁の正解1図)
棋譜再生
・黒1が、いちばん自然な攻めで、本題はこれに限る。
※「死はハネにあり」の格言の好見本で、スペースをせばめて殺す公式がみごとにあてはまる。
・白2のオサエには、黒3の打ち欠きがスペースをせばめる第二弾。
・白4に黒5とナカ手して仕留める。
【正解2:白のマガリには急所の攻め】
≪棋譜≫(248頁の正解2図)
棋譜再生
・白2のマガリには、黒3の急所の攻めから、5のハイが好手順。
【正解3:白のトビには急所に】
≪棋譜≫(248頁の正解3図)
棋譜再生
・白2のトビには、黒3が急所。
※形によって、急所は移動することを覚えてほしい。
(山田至宝『初段合格の死活150題』日本棋院、2001年[2013年版]、247頁~248頁)
【山田至宝『初段合格の死活150題』(日本棋院)はこちらから】
初段合格の死活150題 (囲碁文庫)
「第2章 石取りと攻め合いの手筋」の「問題99」は、「眼アリ眼ナシ」に関連した問題である。
【問題99】(黒番)<3分で初段>
≪棋譜≫(213頁の問題図)
棋譜再生
☆白は手続き不足の姿である。
何が手続き不足なのか?
攻め合いは黒が負けているように見えるけれど、何か妙案があるのか……などを考えよ。
石取りはすべて必然の手順。
一手間違えると結果が入れ替わるから、細心の注意力が必要。
【失敗1:ダメが一手でも詰まると攻め合いに負ける】
≪棋譜≫(214頁の失敗1図)
棋譜再生
・黒1と白2は見合いの地点。
※ここのダメが一手でも詰まると黒は攻め合いに勝てなくなる。
・白4、6の筋で黒は三子をツゲないから、白を取ることもできない。
【失敗2:黒の攻め合い負け】
≪棋譜≫(214頁の失敗2図)
棋譜再生
・黒1も白2、4で、黒は攻め合い負け。
・黒1を4も、白2がわかりやすい。
【正解:ダメがびっちり詰まっていない~「眼アリ眼ナシ」】
≪棋譜≫(214頁の正解図)
棋譜再生
※この形は、攻め合っている石のダメがびっちり詰まっていない。
・それなら黒1の眼持ちが正解。
※後は順番にダメを詰めると、最後のアタリを白は打てず、「眼アリ眼ナシ」
※白は1の打ち忘れが手続き不足だった。
(工藤紀夫『初段合格の手筋150題』日本棋院、2001年[2008年版]、213頁~214頁)
「第2章 石取りと攻め合いの手筋」の「問題95」は、「眼アリ眼ナシ」の注意点を教えてくれる問題である。
【問題95】(黒番)<ひと目初段>
≪棋譜≫(205頁の問題図)
棋譜再生
☆白の手数は三手。
一方の黒は?
この黒の手数を数秒で読み切れるなら、あなたは石取りに関する限りでは、楽に有段者の実力があるそうだ。
では高段者は? 高段者なら瞬時。もちろん1秒もかからないという。
(この読みの早さを身につけるのが、「慣れ」らしい)
【失敗1:黒の攻め合い負け】
≪棋譜≫(206頁の失敗1図)
棋譜再生
・黒1と外ダメを詰めるのは、白2のホウリコミから白4のシボリが、手数を縮める常用手段。
・黒がツゲば、全体の手数は二手。
・黒、攻め合い負け。
【失敗2:「眼アリ眼ナシも時によりけり」】
≪棋譜≫(206頁の失敗2図)
棋譜再生
・黒1は眼作りをしたいのか、余計な寄り道。
・白2は単に4でも白勝ち。
<注意点>
※攻め合いに接しているダメがびっちり詰まっている場合の一眼作りはタブー。
「眼アリ眼ナシも時によりけり」という格言もあるので注意しよう。
【正解:ツギが正しい】
≪棋譜≫(206頁の正解図)
棋譜再生
・黒1のツギが正しく、これで黒の手数は四手。
(工藤紀夫『初段合格の手筋150題』日本棋院、2001年[2008年版]、205頁~206頁)
【『初段合格の手筋150題』日本棋院はこちらから】
初段合格の手筋150題 (囲碁文庫)
片岡聡『これだけできれば囲碁初段』(成美堂出版、1993年)の「2 中盤」の「攻め合いに勝つ法」の「第5問 眼あり眼なし」として、次のような問題がある。
【第5問 眼あり眼なし】[黒先]
≪棋譜≫(221頁の問題図)
棋譜再生
<ヒント>
左方の黒と隅の白三子との攻め合いである。
うまく「眼あり眼なし」にしたい。
第一着がポイント。
【正解図:眼あり眼なし~コウ手段を封じる】
≪棋譜≫(222頁の正解図)
棋譜再生
・黒1のツケに気づけば立派。
・白2とサエギれば、黒3で白a(1, 十九、つまり黒3の左)と取っても、黒b(3, 十九、つまり黒3の右)ツギで、「眼あり眼なし」の格好。
【失敗図:コウ】
≪棋譜≫(222頁の失敗図)
棋譜再生
・同じツケでも、この黒1では失敗。
・白2のホウリ込みがうまい手筋で、白4とオサえて、コウになる。
(片岡聡『これだけできれば囲碁初段』成美堂出版、1993年、221頁~222頁)
片岡聡『これだけできれば囲碁初段』(成美堂出版、1993年)の「2 中盤」の「基本となる死活」の「第24問 一合マスの基本形」として、次のような問題がある。
【第24問 一合マスの基本形】[黒先]
≪棋譜≫(349頁の問題図)
棋譜再生
<ヒント>
☆これは一合マスの基本形。
白が(2, 十八)に置いたところだが、黒はせめてコウにもち込んでほしい。
【正解図:一合マス~1の二の筋】
≪棋譜≫(350頁の正解図)
棋譜再生
・黒1(黒7でも同じ)が急所。
・もし白2、4と眼を取りにくれば、黒7でコウ。
※白6で白7なら、黒6でセキになる。
【失敗図:眼あり眼なし】
≪棋譜≫(350頁の失敗図)
棋譜再生
・黒1のマゲでは白6まで、「眼あり眼なし」で、黒は死に。
※途中黒5で6に置けば、白a(1, 十六)、黒5、白b(3, 十九)で、やはり死に。
(片岡聡『これだけできれば囲碁初段』成美堂出版、1993年、349頁~350頁)
【片岡聡『これだけできれば囲碁初段』成美堂出版はこちらから】
これだけできれば囲碁初段―初段・1・2級の問題
「第3章 上級の基本死活」の第43題
【第43題:四死六活もどき】<黒番>
≪棋譜≫(139頁)
棋譜再生
☆隅の死活の基本形として「四死六活」というのがある。
この形はちょっとちがう。
この状態では白死なのである。
どんな手順で仕留めるか。あとは腕しだい。
【第43題の失敗:セキ生きに持ち込まれる】
≪棋譜≫(140頁の1図)
棋譜再生
※こうした形は黒1のところが眼形の急所。
ただし、いま黒1と攻めるのは手順が悪い。
・白2、4とスペースを広げられ、セキ生きに持ち込まれる。
【第43題の正解:ハネ殺しの筋】
≪棋譜≫(140頁の2図)
棋譜再生
※まずは黒1とハネてスペースを狭めるのがよい手。
⇒いわゆる黒1は「ハネ殺しの筋」である。
【正解の続き】
≪棋譜≫(140頁の3図)
棋譜再生
・そして、白2と換わってから、黒3が好手順。
・黒5まで。
【変化図:欠け眼の筋】
≪棋譜≫(140頁の4図)黒4打ち欠く(2)
棋譜再生
・前図白4で、本図白1は、黒2、4が読み筋。
⇒欠け眼の筋である。
(小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書、2000年、139頁~140頁)
【小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書はこちらから】
はじめての基本死活 (棋苑囲碁基本双書)
「第3章 上級の基本死活」の第48題
【第48題:最善の攻防】<黒番>
≪棋譜≫(149頁)
棋譜再生
☆黒A(15, 十九)のサガリは、白を無条件で生かしてしまう。
では、どう攻めるところだろうか。
ここは、「敵の急所は我が急所」の格言にしたがう。
初手、急所攻めである。
そのあと、最善の攻防はどんな結末になるか。
【第48題の失敗Ⅰ:俗筋】
≪棋譜≫(150頁の1図)
棋譜再生
・黒1はろこつな俗筋。
・白2とハネられ、万事休す。もうどうにもならない形である。
【第48題の失敗Ⅱ:無策の攻め】
≪棋譜≫(150頁の2図)
棋譜再生
・また、黒1とスペースを狭めるのは、白2が見え見え。
⇒黒1は無策の攻め。
【第48題の正解:隅の急所、二の一】
≪棋譜≫(150頁の3図)
棋譜再生
※黒1でaのサガリ(15, 十九)は、白1が眼形の急所だった。
攻める場合もまた、黒1が急所である。
⇒格言が「隅の急所、二の一」と教えてくれる急所。
【正解の続き:コウ】
≪棋譜≫(150頁の4図)
棋譜再生
・白2に黒3が好手。
・白4、黒5までが双方の最善手順。
・コウになる。
(小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書、2000年、149頁~150頁)
「第4章 腕だめしの基本死活」の第64題
【第64題:辺の基本死活】<黒番>
≪棋譜≫(183頁)
棋譜再生
☆実戦によくできる辺の死活の基本型である。
この形は白から打っても生きることはできない。
では、白1と抵抗してきたときは、どう仕留めるのか。
(口で「死んでいるはず」といっても、証明しないかぎり、碁がたきは納得しない)
【第64題の失敗Ⅰ:内部の急所を攻める】
≪棋譜≫(184頁の1図)
棋譜再生
・内部の急所を攻める黒1は、白2とスペースを広げられて失敗。
【失敗Ⅰの続き:セキ生き】
≪棋譜≫(184頁の2図)
棋譜再生
・ついで、黒1と攻めるほかない。
・すると白2とさえぎってくる。
・黒3と三子にして、これはセキ生き。
【第64題の失敗Ⅱ:外側から】
≪棋譜≫(184頁の3図)
棋譜再生
・ここは、外側からスペースを狭めるハネ殺しの筋。
・とはいえ、黒1のハネは白2と受けられ、万事休す。
【第64題の正解:ハネ殺しの筋】
≪棋譜≫(184頁の4図)
棋譜再生
・黒1のほうからハネるのが正着。
・白2に黒3、5とトドメを刺す。
(また、白2で5は黒4)
※黒1が本物のハネ殺しの筋であった。
(小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書、2000年、183頁~184頁)
最後に、プロの実戦例から、隅の死活について紹介しておこう。
林海峰『コウは怖くない』(日本棋院、2000年)の「第5章 実戦の中のコウ」において、「5 コウでハジく好手」を取り上げている。
実戦例は、坂田栄男(黒)VS林海峰(白)の第25期本因坊戦の第1局(昭和45年)である。
(当時は持時間10時間、コミ4目半)
【坂田栄男(黒)VS林海峰(白)の対局】
≪棋譜≫(112頁の1図と113頁の3図)白7コウ取る(4の上)、黒10コウ取る、白13コウ取る
棋譜再生
・白1と切って、白3とコウにハジくのが、用意の一手。
・右下隅をコウ材に使って、黒18まで白の成功といえる。
※先手が回った白は、つづいて、右下隅の生きを図る。
【対局の続き:右下も生きる】
≪棋譜≫(113頁の4図)
棋譜再生
・白1、3に対して、黒a(19, 十五)なら白b(19, 十六)のコウである。
⇒これは黒も戦えないので、黒4
・以下、白は7まで生きて、優勢を確立した。
第25期本因坊戦の第1局で、林海峰氏はこのあと三連勝して連続三期目の本因坊を防衛した思い出の碁となったという。
(林海峰『コウは怖くない』日本棋院、2000年、112頁~113頁)
【林海峰『コウは怖くない』日本棋院はこちらから】
コウは怖くない―一子の取り合い (有段者への近道)
「第22期本因坊戦 挑戦手合第3局」から、隅の死活に関わる問題を示しておく。
ちなみにこの時の本因坊戦は、2年連続して本因坊の坂田栄男氏に、名人の林海峰氏が挑戦したものであった。
第3局で坂田栄男氏が挑戦手合17連勝を記録し、第5局も坂田氏が勝って、本因坊7連覇を達成した。
第3局は中盤戦で、林海峰氏が右下隅の死活を見損じたことで有名になったそうだ。
【隅の死活の見損じ:黒のオキが大失着】
≪棋譜≫(55頁の16図)
棋譜再生
☆右下隅の死活の見損じ
・白1のグズミに、黒2のオキが大失着。
・こう打ったので、辺に白a(19, 十七)が利き、白b(16, 十九、つまり黒2の左)、黒c
(18, 十九、つまり黒2の右)、白d(19, 十九)の押しつぶしの生きの形になっている。
【最善の打ち方:コウ】
≪棋譜≫(55頁の17図)
棋譜再生
・辺に白(19, 十七)のサガリが利く形である。
・従って、黒1、白2のコウになるのが、最善の打ち方。
この戦いのそもそもの発端は、右上隅の「小目・ケイマのカカリ」定石であった。
【小目・ケイマのカカリ:坂田流大ぬり】
≪棋譜≫(46頁のテーマ図)
棋譜再生
(林海峰『昇段編 差をつける定石探究』日本棋院、1987年、46頁、50頁、55頁)
【林海峰『昇段編 差をつける定石探究』はこちらから】
差をつける定石探究 (日本棋院新書 昇段編)
(2021年11月9日投稿)
【はじめに】
前回のブログでは、坂田栄男『囲碁名言集』(有紀書房、1988年[1992年版])の目次の最後にある「付 死活格言集」の内容を紹介した。 たとえば、「死はハネにあり」「一合マスはコウと知れ」「ハネ一本が物をいう」「眼あり眼なしはカラの攻合い」などである。
今回のブログでは、死活格言集に関連した死活の練習問題を編集してみた。
その際に、以下の著作を参照させていただいた。
〇山田至宝『初段合格の死活150題』日本棋院、2001年[2013年版]
〇工藤紀夫『初段合格の手筋150題』日本棋院、2001年[2008年版]
〇片岡聡『これだけできれば囲碁初段』成美堂出版、1993年
〇小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書、2000年
〇林海峰『コウは怖くない』日本棋院、2000年
〇林海峰『昇段編 差をつける定石探究』日本棋院、1987年
さて、呉清源先生は、「碁で大事なのは生き死にとヨセだ」と言われた。
小林覚九段も、「詰碁に挑戦するのが一番地力がつきますよ」と、囲碁の勉強法についてアドバイスしておられる。そして、序盤から終盤のヨセまで、死活力こそが碁の基礎筋力になり、「碁が強い人は死活が強い人である」と小林覚九段は断言しておられる。つまり、序盤から終盤のヨセまで、死活力がベースになっており、碁で一番大事なのは石の生き死にであるという。
(小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書、2000年、3頁、166頁)
まずは、手はじめに死活の練習問題に取り組んでいただければ、幸いである。
【坂田栄男『囲碁名言集』有紀書房はこちらから】
囲碁名言集
【小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書はこちらから】
はじめての基本死活 (棋苑囲碁基本双書)
さて、今回の執筆項目は次のようになる。
・はじめに
・「死はハネにあり」の練習問題~『初段合格の死活150題』より
・「眼あり眼なし」の練習問題~ 『初段合格の手筋150題』より
・「眼あり眼なしも時によりけり」~『初段合格の手筋150題』より
・「眼あり眼なし」の練習問題~片岡聡『これだけできれば囲碁初段』より
・一合マスの練習問題~片岡聡『これだけできれば囲碁初段』より
・死活の練習問題~小林覚『はじめての基本死活』より
・隅の死活の実戦例~坂田栄男VS林海峰
・隅の死活問題~第22期本因坊戦より
「死はハネにあり」の練習問題~『初段合格の死活150題』より
【問題33】(黒番)<1分で3級>
≪棋譜≫(83頁の問題図)
棋譜再生
☆第一感をきたえるのは、石の形をよく見極めること。
とくに死活の場面では石が混みいっており、その見極めがむずかしいこともたしかである。
ひとつの目安としては石の弱いところに注目すること。
弱点というのは、断点とダメヅマリ。
そこを突破口にして、感覚を高めること。
【正解:ハネからホウリ込み】
≪棋譜≫(84頁の正解図)
棋譜再生
・黒1のハネ一本から、3のホウリ込みが三手の読み。
※このように、ハネてスペースをせばめ、急所に打って殺す基本公式の代表例である。
「死はハネにあり」という格言は、応用範囲が広く、ぜひ覚えてほしい。
【失敗1:功を急ぐ~ハネずにホウリ込み】
≪棋譜≫(84頁の失敗1図) 黒5(1)、白6(1の左)
棋譜再生
・黒1のホウリ込みから打つのは、白2と取られ、3と4の点が見合いとなって、生きられてしまう。
※正解図のハネの効果をよく知ってほしい。
【失敗2:無策のアテ】
≪棋譜≫(84頁の失敗2図)
棋譜再生
・黒1で正解なら問題にならない。
(山田至宝『初段合格の死活150題』日本棋院、2001年[2013年版]、83頁~84頁)
【問題115】(黒番)<5分で初段>
≪棋譜≫(247頁の問題図)
棋譜再生
☆隅の基本形である。
黒番で白をどう仕留めるか。
初段合格のためには、ぜひマスターしなければならない関門である。
あらゆる攻防手段について、たがいに正確に対応できなければいけない。
それが即ち、応用力であり、この形をマスターしたことになるのだから。
【正解1:ハネ殺し】
≪棋譜≫(248頁の正解1図)
棋譜再生
・黒1が、いちばん自然な攻めで、本題はこれに限る。
※「死はハネにあり」の格言の好見本で、スペースをせばめて殺す公式がみごとにあてはまる。
・白2のオサエには、黒3の打ち欠きがスペースをせばめる第二弾。
・白4に黒5とナカ手して仕留める。
【正解2:白のマガリには急所の攻め】
≪棋譜≫(248頁の正解2図)
棋譜再生
・白2のマガリには、黒3の急所の攻めから、5のハイが好手順。
【正解3:白のトビには急所に】
≪棋譜≫(248頁の正解3図)
棋譜再生
・白2のトビには、黒3が急所。
※形によって、急所は移動することを覚えてほしい。
(山田至宝『初段合格の死活150題』日本棋院、2001年[2013年版]、247頁~248頁)
【山田至宝『初段合格の死活150題』(日本棋院)はこちらから】
初段合格の死活150題 (囲碁文庫)
「眼あり眼なし」の練習問題~ 『初段合格の手筋150題』より
「第2章 石取りと攻め合いの手筋」の「問題99」は、「眼アリ眼ナシ」に関連した問題である。
【問題99】(黒番)<3分で初段>
≪棋譜≫(213頁の問題図)
棋譜再生
☆白は手続き不足の姿である。
何が手続き不足なのか?
攻め合いは黒が負けているように見えるけれど、何か妙案があるのか……などを考えよ。
石取りはすべて必然の手順。
一手間違えると結果が入れ替わるから、細心の注意力が必要。
【失敗1:ダメが一手でも詰まると攻め合いに負ける】
≪棋譜≫(214頁の失敗1図)
棋譜再生
・黒1と白2は見合いの地点。
※ここのダメが一手でも詰まると黒は攻め合いに勝てなくなる。
・白4、6の筋で黒は三子をツゲないから、白を取ることもできない。
【失敗2:黒の攻め合い負け】
≪棋譜≫(214頁の失敗2図)
棋譜再生
・黒1も白2、4で、黒は攻め合い負け。
・黒1を4も、白2がわかりやすい。
【正解:ダメがびっちり詰まっていない~「眼アリ眼ナシ」】
≪棋譜≫(214頁の正解図)
棋譜再生
※この形は、攻め合っている石のダメがびっちり詰まっていない。
・それなら黒1の眼持ちが正解。
※後は順番にダメを詰めると、最後のアタリを白は打てず、「眼アリ眼ナシ」
※白は1の打ち忘れが手続き不足だった。
(工藤紀夫『初段合格の手筋150題』日本棋院、2001年[2008年版]、213頁~214頁)
「眼あり眼なしも時によりけり」~『初段合格の手筋150題』より
「第2章 石取りと攻め合いの手筋」の「問題95」は、「眼アリ眼ナシ」の注意点を教えてくれる問題である。
【問題95】(黒番)<ひと目初段>
≪棋譜≫(205頁の問題図)
棋譜再生
☆白の手数は三手。
一方の黒は?
この黒の手数を数秒で読み切れるなら、あなたは石取りに関する限りでは、楽に有段者の実力があるそうだ。
では高段者は? 高段者なら瞬時。もちろん1秒もかからないという。
(この読みの早さを身につけるのが、「慣れ」らしい)
【失敗1:黒の攻め合い負け】
≪棋譜≫(206頁の失敗1図)
棋譜再生
・黒1と外ダメを詰めるのは、白2のホウリコミから白4のシボリが、手数を縮める常用手段。
・黒がツゲば、全体の手数は二手。
・黒、攻め合い負け。
【失敗2:「眼アリ眼ナシも時によりけり」】
≪棋譜≫(206頁の失敗2図)
棋譜再生
・黒1は眼作りをしたいのか、余計な寄り道。
・白2は単に4でも白勝ち。
<注意点>
※攻め合いに接しているダメがびっちり詰まっている場合の一眼作りはタブー。
「眼アリ眼ナシも時によりけり」という格言もあるので注意しよう。
【正解:ツギが正しい】
≪棋譜≫(206頁の正解図)
棋譜再生
・黒1のツギが正しく、これで黒の手数は四手。
(工藤紀夫『初段合格の手筋150題』日本棋院、2001年[2008年版]、205頁~206頁)
【『初段合格の手筋150題』日本棋院はこちらから】
初段合格の手筋150題 (囲碁文庫)
「眼あり眼なし」の練習問題~片岡聡『これだけできれば囲碁初段』より
片岡聡『これだけできれば囲碁初段』(成美堂出版、1993年)の「2 中盤」の「攻め合いに勝つ法」の「第5問 眼あり眼なし」として、次のような問題がある。
【第5問 眼あり眼なし】[黒先]
≪棋譜≫(221頁の問題図)
棋譜再生
<ヒント>
左方の黒と隅の白三子との攻め合いである。
うまく「眼あり眼なし」にしたい。
第一着がポイント。
【正解図:眼あり眼なし~コウ手段を封じる】
≪棋譜≫(222頁の正解図)
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・黒1のツケに気づけば立派。
・白2とサエギれば、黒3で白a(1, 十九、つまり黒3の左)と取っても、黒b(3, 十九、つまり黒3の右)ツギで、「眼あり眼なし」の格好。
【失敗図:コウ】
≪棋譜≫(222頁の失敗図)
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・同じツケでも、この黒1では失敗。
・白2のホウリ込みがうまい手筋で、白4とオサえて、コウになる。
(片岡聡『これだけできれば囲碁初段』成美堂出版、1993年、221頁~222頁)
一合マスの練習問題~片岡聡『これだけできれば囲碁初段』より
片岡聡『これだけできれば囲碁初段』(成美堂出版、1993年)の「2 中盤」の「基本となる死活」の「第24問 一合マスの基本形」として、次のような問題がある。
【第24問 一合マスの基本形】[黒先]
≪棋譜≫(349頁の問題図)
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<ヒント>
☆これは一合マスの基本形。
白が(2, 十八)に置いたところだが、黒はせめてコウにもち込んでほしい。
【正解図:一合マス~1の二の筋】
≪棋譜≫(350頁の正解図)
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・黒1(黒7でも同じ)が急所。
・もし白2、4と眼を取りにくれば、黒7でコウ。
※白6で白7なら、黒6でセキになる。
【失敗図:眼あり眼なし】
≪棋譜≫(350頁の失敗図)
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・黒1のマゲでは白6まで、「眼あり眼なし」で、黒は死に。
※途中黒5で6に置けば、白a(1, 十六)、黒5、白b(3, 十九)で、やはり死に。
(片岡聡『これだけできれば囲碁初段』成美堂出版、1993年、349頁~350頁)
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これだけできれば囲碁初段―初段・1・2級の問題
死活の練習問題~小林覚『はじめての基本死活』より
「第3章 上級の基本死活」の第43題
【第43題:四死六活もどき】<黒番>
≪棋譜≫(139頁)
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☆隅の死活の基本形として「四死六活」というのがある。
この形はちょっとちがう。
この状態では白死なのである。
どんな手順で仕留めるか。あとは腕しだい。
【第43題の失敗:セキ生きに持ち込まれる】
≪棋譜≫(140頁の1図)
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※こうした形は黒1のところが眼形の急所。
ただし、いま黒1と攻めるのは手順が悪い。
・白2、4とスペースを広げられ、セキ生きに持ち込まれる。
【第43題の正解:ハネ殺しの筋】
≪棋譜≫(140頁の2図)
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※まずは黒1とハネてスペースを狭めるのがよい手。
⇒いわゆる黒1は「ハネ殺しの筋」である。
【正解の続き】
≪棋譜≫(140頁の3図)
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・そして、白2と換わってから、黒3が好手順。
・黒5まで。
【変化図:欠け眼の筋】
≪棋譜≫(140頁の4図)黒4打ち欠く(2)
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・前図白4で、本図白1は、黒2、4が読み筋。
⇒欠け眼の筋である。
(小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書、2000年、139頁~140頁)
【小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書はこちらから】
はじめての基本死活 (棋苑囲碁基本双書)
「第3章 上級の基本死活」の第48題
【第48題:最善の攻防】<黒番>
≪棋譜≫(149頁)
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☆黒A(15, 十九)のサガリは、白を無条件で生かしてしまう。
では、どう攻めるところだろうか。
ここは、「敵の急所は我が急所」の格言にしたがう。
初手、急所攻めである。
そのあと、最善の攻防はどんな結末になるか。
【第48題の失敗Ⅰ:俗筋】
≪棋譜≫(150頁の1図)
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・黒1はろこつな俗筋。
・白2とハネられ、万事休す。もうどうにもならない形である。
【第48題の失敗Ⅱ:無策の攻め】
≪棋譜≫(150頁の2図)
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・また、黒1とスペースを狭めるのは、白2が見え見え。
⇒黒1は無策の攻め。
【第48題の正解:隅の急所、二の一】
≪棋譜≫(150頁の3図)
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※黒1でaのサガリ(15, 十九)は、白1が眼形の急所だった。
攻める場合もまた、黒1が急所である。
⇒格言が「隅の急所、二の一」と教えてくれる急所。
【正解の続き:コウ】
≪棋譜≫(150頁の4図)
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・白2に黒3が好手。
・白4、黒5までが双方の最善手順。
・コウになる。
(小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書、2000年、149頁~150頁)
「第4章 腕だめしの基本死活」の第64題
【第64題:辺の基本死活】<黒番>
≪棋譜≫(183頁)
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☆実戦によくできる辺の死活の基本型である。
この形は白から打っても生きることはできない。
では、白1と抵抗してきたときは、どう仕留めるのか。
(口で「死んでいるはず」といっても、証明しないかぎり、碁がたきは納得しない)
【第64題の失敗Ⅰ:内部の急所を攻める】
≪棋譜≫(184頁の1図)
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・内部の急所を攻める黒1は、白2とスペースを広げられて失敗。
【失敗Ⅰの続き:セキ生き】
≪棋譜≫(184頁の2図)
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・ついで、黒1と攻めるほかない。
・すると白2とさえぎってくる。
・黒3と三子にして、これはセキ生き。
【第64題の失敗Ⅱ:外側から】
≪棋譜≫(184頁の3図)
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・ここは、外側からスペースを狭めるハネ殺しの筋。
・とはいえ、黒1のハネは白2と受けられ、万事休す。
【第64題の正解:ハネ殺しの筋】
≪棋譜≫(184頁の4図)
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・黒1のほうからハネるのが正着。
・白2に黒3、5とトドメを刺す。
(また、白2で5は黒4)
※黒1が本物のハネ殺しの筋であった。
(小林覚『はじめての基本死活』棋苑図書、2000年、183頁~184頁)
隅の死活の実戦例~坂田栄男VS林海峰
最後に、プロの実戦例から、隅の死活について紹介しておこう。
林海峰『コウは怖くない』(日本棋院、2000年)の「第5章 実戦の中のコウ」において、「5 コウでハジく好手」を取り上げている。
実戦例は、坂田栄男(黒)VS林海峰(白)の第25期本因坊戦の第1局(昭和45年)である。
(当時は持時間10時間、コミ4目半)
【坂田栄男(黒)VS林海峰(白)の対局】
≪棋譜≫(112頁の1図と113頁の3図)白7コウ取る(4の上)、黒10コウ取る、白13コウ取る
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・白1と切って、白3とコウにハジくのが、用意の一手。
・右下隅をコウ材に使って、黒18まで白の成功といえる。
※先手が回った白は、つづいて、右下隅の生きを図る。
【対局の続き:右下も生きる】
≪棋譜≫(113頁の4図)
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・白1、3に対して、黒a(19, 十五)なら白b(19, 十六)のコウである。
⇒これは黒も戦えないので、黒4
・以下、白は7まで生きて、優勢を確立した。
第25期本因坊戦の第1局で、林海峰氏はこのあと三連勝して連続三期目の本因坊を防衛した思い出の碁となったという。
(林海峰『コウは怖くない』日本棋院、2000年、112頁~113頁)
【林海峰『コウは怖くない』日本棋院はこちらから】
コウは怖くない―一子の取り合い (有段者への近道)
隅の死活問題~第22期本因坊戦より
「第22期本因坊戦 挑戦手合第3局」から、隅の死活に関わる問題を示しておく。
ちなみにこの時の本因坊戦は、2年連続して本因坊の坂田栄男氏に、名人の林海峰氏が挑戦したものであった。
第3局で坂田栄男氏が挑戦手合17連勝を記録し、第5局も坂田氏が勝って、本因坊7連覇を達成した。
第3局は中盤戦で、林海峰氏が右下隅の死活を見損じたことで有名になったそうだ。
【隅の死活の見損じ:黒のオキが大失着】
≪棋譜≫(55頁の16図)
棋譜再生
☆右下隅の死活の見損じ
・白1のグズミに、黒2のオキが大失着。
・こう打ったので、辺に白a(19, 十七)が利き、白b(16, 十九、つまり黒2の左)、黒c
(18, 十九、つまり黒2の右)、白d(19, 十九)の押しつぶしの生きの形になっている。
【最善の打ち方:コウ】
≪棋譜≫(55頁の17図)
棋譜再生
・辺に白(19, 十七)のサガリが利く形である。
・従って、黒1、白2のコウになるのが、最善の打ち方。
この戦いのそもそもの発端は、右上隅の「小目・ケイマのカカリ」定石であった。
【小目・ケイマのカカリ:坂田流大ぬり】
≪棋譜≫(46頁のテーマ図)
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(林海峰『昇段編 差をつける定石探究』日本棋院、1987年、46頁、50頁、55頁)
【林海峰『昇段編 差をつける定石探究』はこちらから】
差をつける定石探究 (日本棋院新書 昇段編)
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