近所の奥さんが白い着物に黒の袴を着ていたので、何をしているのか訊ねたら弓道をしているとのことだった。
私の父も生前弓道をしていたけれど、他界して以来父の弓矢は我が家の床の間に鎮座したままになっていた。この弓矢は勿論父の形見だけれど、いつまでもこのままおいていて良いものだろうかと、いつも気になっていた。出来ればそろそろ学校か何処かの弓道場で使ってもらえないかと思っていたところだった。
良かったら使ってもらえないかと聞いてみたら、「是非、お願いします!」と即答し、後日我が家に貰いに来られた。
「まだ初心者だからグラスファイバーの弓とアルミの矢なんです、竹の弓矢だなんて感激です。こんな立派なものをいただいただけるなんて、大切にします!」と、とても喜んでもらった。
ああ、こんな人に使って貰えたら、手放す寂しさはあっても、父もキット喜んでくれると思うと気が楽になった。