[映画紹介]
フランス人火山学者、
モーリスとカティアのクラフト夫妻のドキュメンタリー。
2人の出会いから
世界中の火山を渡り歩き、
噴火活動の映像や写真を記録し、
雲仙普賢岳の火砕流で
夫婦共々命を落としてしまうまでを
驚異的な映像とともに綴る夫婦の愛の軌跡。
火山を捉えた圧巻の映像と、
それと重なるような二人の生き様を撮った奇跡のような作品。
噴き出し、溶け出す溶岩、
周辺を呑み込む火山灰、転がる火山弾、
間近で目撃する火山活動・・・
溶岩の赤が鮮烈でインパクトがある。
まさしく呑み込まれるような映像体験だ。
そして火山学者夫婦の姿がすごい。
噴火口の間近に行って観察したり、
吹き出す溶岩に恐れず近づいていき、
溶岩を団子のように丸めたりする。
酸性の湖に中古のボートで入っていく。
まさに、火山に取りつかれた狂気の学者の姿だ。
彼らは「平穏で長く生きるより、激しく生き急ぎたい」と言う。
本当に火山のように生きた二人だった。
その究極が普賢岳だった。
雲仙普賢岳の噴火を観察するために
予定を変更して来日。
これまで写真でしか火砕流を撮っていなかった夫妻は
普賢岳でカメラを回す。
そして1991年6月3日、
噴火を撮影している最中に、
火砕流に襲われ、
同行していたアメリカ地質調査所の学者や
マスコミ関係者、消防関係者ら41名とともに死亡した。
ご遺体は並んでいたという。
火山のためならいつ命を落としても構わないと言う
言葉通りの最後だった。
この火砕流の映像がすさまじい。
生涯で足を運び調査した火山の数は184にもなる。
彼らの活動は、多くの人を救った。
1988年にはインドネシアのマキアン島の
キシ・ベシ火山が噴火する可能性があることを警告し、
政府はその警告を受け入れて
18000人の全島民を避難させている。
5日後の7月17日、キシ・ベシ火山は噴火し、
10の村が火山灰に埋まったが犠牲者は出なかった。
クラフト夫妻が遺した研究資料は、遺族が委託したフランスの機関が管理している。
監督はセーラ・ドーサ。
作家で映画監督で女優のミランダ・ジュライのナレーションが絶妙。
今年1月のサンダンス映画祭でプレミア上映されると大きな話題となり、
ナショナル・ジオグラフィックが配信権を獲得。
ディズニープラスで11月11日から配信。
NHKがフランスと国際共同制作したドキュメンタリードラマ
「カティアとモーリス~雲仙・普賢岳に挑んだ夫婦」でも描かれている。
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