空飛ぶ自由人・2

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小説『汝、星のごとく』

2023年02月24日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

瀬戸内の島で、17歳の高校生の男女が出会う。
井上暁海(あきみ)と青埜櫂(あおのかい)。
二人は、家に問題を抱えている共通点から接近する。

暁海の家は、父親が外に恋人を作り、帰って来ない。
母親は精神的に不安定になっている。
櫂の母親は、惚れやすい体質で、
男を追ってこの島に来、スナックを開いている。
男のことになると、母であることを忘れてしまう。

島には娯楽がなく、人の噂話が唯一の楽しみ。
誰がどこで何をしたか、全部知れ渡っている。
2人が付き合っていることも、
すぐに島中に広まった。
可哀想な2人が付き合ってるのは、
二人ともお母さんがおかしいからとの尾ひれがついて。

高校を卒業した櫂は、友人の尚人と組んで、
漫画家を目指して東京へ上京する。
暁海も一緒に行くはずだったが、
母親を捨てられず、島に残る

櫂の原作、尚人の作画のコンビは、
編集者の植木の目に止まり、
連載開始、単行本も出、
人気漫画家として、
想像できなかったような大金が入って来る。

暁海が東京を訪ねる形で遠距離恋愛は続くが、
次第に二人の間にが出来、
金銭感覚も違いが出て来る。
東京へ行き変わってしまった櫂。
島と母に縛られている暁海。
二人の溝はどんどん深くなり、
やがて破局がやって来る・・・。

暁海は、会社勤めをしながら、
父親の恋人の瞳子から指導を受け、
刺繍作家として一人立ちできる日を迎える。
一方、櫂の方は、
尚人が高校生男子と付き合っていたことが
週刊誌に暴露され、
連載も休止、単行本も廃盤となる。
櫂は酒に溺れ、病気になるが・・・

これらの話に、
父親の恋人の瞳子の話、
漫画編集者の植木の話、
文芸編集者の二階堂絵理の話、
高校の化学の教師である北原先生と家族の話がからむ。

この先は、読んでほしいが、
一組の若い男女の15年間の愛と別れを描いて、哀切
愛し合っていながら、
傷つけ、傷つけられて生きていく
繊細で複雑な人間たち。
その心の動きがいとしい。
最後のあたりは、不覚にも泣いてしまった。

さすが、「流浪の月」で本屋大賞を得た凪良ゆうらしい。
再び、本屋大賞にノミネートされている。

自立した女、瞳子のセリフ。

「わたしは仕事をしていて、それなりに蓄えもある。
もちろんお金で買えないものはある。
でもお金があるから自由でいられることもある。
たとえば誰かに依存しなくていい。
いやいや誰かに従わなくていい。
それはすごく大事なことだと思う」

暁海は、瞳子の後を追い、自立していく。

プロローグに不思議な描写があり、
物語の進行に従い、
この話が、あのプロローグにどうやってつながるのか、
と不審に思うが、
最後に見事につながる。

久しぶりに恋愛小説で心が震えた

 



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