[映画紹介]
スティーヴン・スピルバーグの自伝的映画。
1946年生まれだから、
私とほぼ同世代なので、
出て来る映画が重なって嬉しい。
(なお、長年1947年生まれと偽っていたが、
1946年生まれが正しいのだという。
満年齢、数え年齢のあった日本では、
12月生まれを翌年の1月生まれ、などと偽ることはあったが、
なぜ生まれ年を偽ったのだろう。
誰か知っている人がいたら、教えて下さい。)
オハイオ州シンシナティでウクライナ系ユダヤ人の家庭に生まれ、
その後、アリゾナに移転して育つ。
Spielberg (シュピールベルク)というドイツ語の姓は
直訳すると「芝居山」という意味。
本映画の主人公、
サミー・フェイブルマン“Fabelman”の
“fable ”には「作り話」の意味があるから、通ずる。
父は電気技師、母はピアニストで、
芸術と科学の両方の影響を受けて育った。
両親が離婚するのは、映画のとおり。
ディスレクシア(失読症もしくは難読症、学習障害の一種)のために
同級生より読み書きを修得する速度が遅く、
このためいじめも受けたこともあったが、
その点は本作では触れられていない。
生まれて初めて観た映画は
5歳の時の「地上最大のショウ」。
映画館の暗いところに行くのはいやだと駄々をこねるが、
映画の中の機関車と自動車が衝突して脱線事故を起こす場面に
異様に惹きつけられ、
父が買い与えた鉄道模型を8ミリカメラで撮ったのが、
映画制作の始まり。
本作はアメリカ映画の基本形の「3幕もの」に分かれる。
1.映画を初めて観ての子ども時代の映画制作。
2.アリゾナに移ってからの、家庭環境と、映画制作。
3.ロサンゼルスに移ってからの学園生活と映画制作。
西部劇や戦争ものなど、
なかなかのスケールの8ミリ映画を撮っており、
後の大監督の片鱗を見せる。
8ミリフィルムを編集機にかけ、
スプライシング器でつなげるあたりなど、
胸がざわつく。
上映会では、音楽をかけており、
「荒野の七人」(1960)や「西部開拓史」(1962)の音楽が流れる。
家族のキャンプ旅行の様子を撮って、
編集しながら、
母と父の友人のただならぬ関係に気づいたりする。
1.と2.は、
スピルバーグと映画の関係を描いて、
ワクワクする。
しかし、3.になると、
高校でのユダヤ人としてのいじめ経験や恋愛模様など、
ありきたりで、ごくつまらなくなる。
映画制作は、学園行事の記録映画で、平凡。
最後に映像制作会社で
ある大監督に出会う。(これは実話。ただし、16歳の時)
この監督から天啓のようなものを与えられて、
撮影所を足どり軽く行くところで終わる。
17歳の時、ユニバーサル・スタジオをバスで回るツアーに参加した時、
トイレに隠れてスタジオ内を探索し、
スタッフと仲良くなって、
スタジオに顔パスで入れるようになったり、
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校にて映画を専攻、
ユニバーサルスタジオに入り浸りになり、
空き部屋だった掃除小屋を自分のオフィスとして使用して
ハリウッドの映画界を出入りするようになる、
という、スピルバーグを知る上で重要な挿話は省略。
21歳の時に、映像関係の会社の経営者に資金を提供してもらって、
26分の短編「アンブリン」を完成させ、
アトランタ映画祭で最優秀短編映画賞を受賞したことで、
ユニバーサルテレビ部門の責任者の目に止まり、
ユニバーサルと7年契約することとなる。
そして、「激突!」で注目され・・・
という、ところまでは描かない。
パート2でも作るつもりなのか?
つまり、3.の学園生活のつまらない描写は
全く不要で、「アンブリン」までを描いてほしかった、
というのが、私の願い。
父母の離婚も、あまりにも唐突だし、
理由が納得いかない。
母親をミシェル・ウィリアムス、
父親をポール・ダノが演じて、いずれも好演。
大監督をデイヴィッド・リンチ監督が演ずる。
「スピルバーグの半生を描く」という、うたい文句に誘われて観に行き、
愛と夢と希望に満ちた感動作品、
を期待すると、
ちょっと裏切られた印象になるから、注意。
カット割、カメラワークは、やはり秀逸で、
日本の映画監督は見習ってほしい。
最近の映画、たとえば「ちひろさん」などを観ると、
引きで固定の映像の長回しなどが、
今だにされているが、
演技している俳優の表情を何故描写しないのか、不思議。
その点、スピルバーグの映画は、
俳優の演技をしっかり見せていて、心地よい。
5段階評価の「3.5」。
拡大上映中。
なお、私も子ども時代に映画に触れてから、
映画に夢中になり、
8ミリ映画を作ったり、
シナリオの学校に通ったりしたが、
スピルバーグのような「才能あり」ではなく、
「凡人」どころか「才能ナシ」だったので、
今では、観る側に回っている。
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